第10話 第6部 狩猟シーズン編 3
ここまでのあらすじ
彩斗達はジンコに全てありのままに説明をして理解をしてもらい、秘密を守ってもらうために色々と説明などを続けながら自分達のトレーニングを進めていた。
圭子の遠距離射撃のスゴ腕も見、南部小型拳銃での射撃練習にも参加したジンコ、そして、はなちゃんのちょっとした地震をも引き起こす強力な念動力の制御を訓練する方法をジンコが思いついた。
以下本文
「あ!そうそう!
私、はなちゃんに魔法の杖にピッタリな枝を見つけたんだよ!」
ジンコがベルトに差していた20センチほどの木の棒を取り出した。
「おお!ハリーポッターだな!」
「ハリーポッターじゃの!」
四郎とはなちゃんが食いついてきた。
「ここならあまり周りの心配はしなくとも良いな!
はなちゃん、やってみるか!」
「そうじゃの!わらわも練習せねばぁ!」
「え?
ハリーポッター?」
「ハリーポッター知ってるよ!」
司と忍が叫んだ。
明石達も何の事だとジンコに顔を向けた。
「いや、この前はなちゃんがハリーポッターのように棒を持って…あの時はスプーンだったがね。
どうやら練習次第で念動力をもっと細かくコントロール出来るようになるかも知れんと言う事だ。」
四郎が言うと明石が深く頷いた。
「それは頼もしいな!
敵味方無差別に吹き飛ばす事が無ければますますはなちゃんは頼りになるぞ!」
「はなちゃん、ちょっとやってみるか?」
「もちろんじゃの!」
はなちゃんが棒を手に取った。
「最初の標的はどれにするじゃの?」
「よし、まだ標的が残っているからさっきの木の枝に結ぼう。」
「はなちゃん、呪文呪文!呪文を言うの忘れないでね!」
「そうよそうよハリーでも言ってたよ!」
「あれかっこ良いよね!」
ジンコと司、忍が口々にはなちゃんに言った。
「なるほど、呪文じゃの。
はて、何と言えばかっこ良いかの?」
「そうね~なんかかっこ良い言葉が良いわね~、ラテン語で破壊ってデーストルークティオーとかギリシャ語ではカタストロフィ…う~んスペイン語ではデストルクシオンとか…爆破って言う言葉だとラテン語でエールプティオーか…フラルゴとか…ギリシャ語でエクリクシイ…スペイン語でエクスプロシオン…そうそうロシア語ではウズルィーフとも言うけど…英語だとデストロイとかエクスポロ―ジョンとかだけどちょっと軽い感じが…ねぇ…」
「…ふわぁ!
ジンコ、物知りですぅ!」
「加奈、ジンコは英語以外に何か国語か話せるんだよ。
独学で勉強してるのよ、凄いわよね。」
「どれもかっこ良さげじゃの!
でもなるべく言いやすいのが良いじゃの!」
俺はジンコのこだわりと多才ぶりに少しびっくりしたが四郎までがどの言葉が良いか考えて始めていて、違う違う!肝はそこじゃ無いよ!呪文じゃなくて力の制御と方向の絞り込みだよ!とは言えなくなってしまった。
「う~ん、とりあえずギリシャ語にしようか、カタストロフィってはなちゃん言える?」
「カタストロヒー。」
「はなちゃん、ヒーじゃなくてフィー。」
「フィー。」
「そうそう、じゃあ言ってみて。」
「カタストロヒー。」
「だからヒーじゃなくて…まぁいいか、はなちゃんやってみようよ。」
「よし、あの標的に向ければ良いのじゃの。」
「はなちゃん、あまり大きな力は要らないからな。」
四郎がはなちゃんに言うと、みんなに伏せる様に言った。
「まぁ、一応用心でな。」
司や忍がくすくす笑いながら伏せているのを見て四郎が苦笑いを浮かべた。
確かにはなちゃんが不用意に全力を出すと俺たち全員吹き飛ぶかもしれないのだ。
俺は少し緊張して伏せた状態で双眼鏡を目に当てて標的を見た。
「それじゃやるじゃの!
スカトロヒー!」
はなちゃんは間違って覚えた少し危ない響きの言葉を叫んで棒を標的に向けた。
ポフッ!と軽い音がして木の標的のほぼ真ん中に小さい穴が開いた。
やや緊張して双眼鏡を覗き込んでいた俺達は少し黙り込んでから笑いが込み上げて来た。
そして皆が腹を抱えて笑った。
恐らく緊張が解けた反動だろう。
「何あれ可愛い~!」
「はなちゃん力抜き過ぎ~!」
「はなちゃん、スカトロじゃ無いよカタストロフィーだよ~!」
「はなちゃん、スカトロヒーだとうんこぶつける感じになっちゃうよ~!」
「あはは!うんこうんこ!」
「判ったじゃの!判ったじゃの!
もう少し力を出してやってみるじゃの!」
はなちゃんがもう一度トライする事になり、ジンコがはなちゃんの口角を引っ張りながらカタストロフィーと発音の練習をさせた。
「じゃあもう一度やってみるわよ。
はなちゃん、カタストロフィーと!」
「わかったじゃの!」
一応俺達は伏せてまた双眼鏡を覗き込んだ。
「よし、もう笑わせないじゃの!
カタストロヒー!」
こんどは野太い衝撃音がして…木の標的が粉々に消し飛び、標的を下げていた木の枝も消え去った。
数瞬間遅れて俺達に爆風のようなものがやって来た。
「おお!凄い!」
「われのマグナムリボルバー並みかも知れんな!」
「四郎、エレファントガン並みかもよ。」
「これだけの威力で音も大して出なかったな。」
「使いようによってははなちゃん最強かもしれないぞ。」
俺達は立ち上がり標的のそばまで行ってみた。
良く見ると木の標的より3割増し直径50センチくらいの空間の物が消えうせて木立にぽっかり穴が開いたようになっていて、粉々に粉砕された標的の破片がそこいら辺に突き刺さっていた。
「ねえ、はなちゃん、今はどれくらいの力を出したの?」
真鈴が恐る恐るはなちゃんに尋ねた。
「真鈴、最初は軽いデコピン程度、次は軽くひっぱたく感じじゃの。」
「うむ、この距離ではわれ達も危ないな。」
「もっと標的を離すとするか。」
明石がまだ使っていない標的を持って走って行き、先ほど圭子さんが射撃した辺りの木の根元に置いて戻って来た。
「大体500メートルちょっとと言う感じだな。
はなちゃん、もっと力を出しても良いぜ。」
「おお!任せとけ!」
俺達は用心に目の前の視界を遮る草を倒して再び伏せて双眼鏡を覗き込んだ。
「今度は少し遠慮を外してやるじゃの!
みんな用意は良いか?」
「大丈夫だよはなちゃん。」
「よし!
見ておれ!
カタストロヒー!」
はなちゃんが遥か彼方の標的に向けて木の棒を振った。
双眼鏡を覗いていた俺達はものすごい閃光で思わず目を閉じた。
そして重々しい轟音が鳴り響き、軽い揺れと、数舜遅れて爆風が俺達を襲った。
「きゃあああ!」
「なななななんだこれはぁ!」
「司!忍!私に掴まってて!」
しかし爆風に忍の体が浮きあがり後方に飛んで行きそうになった所を危うく喜朗おじの手が忍の体を捕まえて自分の体の下に押し込んだ。
ズズズズズと不気味な重低音と共に標的のあった場所からきのこ雲が立ち上り、爆発でなぎ倒されたり消滅したエリアがどんどん広がって俺達に向かって来た。
「きゃああああ!
はなちゃん!とめてとめて!
あの爆発を抑え込んでぇ!」
「ジンコ!呪文は?
呪文はどうするじゃの!」
「呪文どうでも良いからあれを抑え込んでぇえええええ!」
「早く早く!みんな死んじゃうからぁああああ!」
「判ったじゃの!
ぬええええい!」
はなちゃんが迫り来る破滅の波に向けて木の棒を振った。
暫く破壊の波とはなちゃんの力がせめぎ合った感じがしてから、はなちゃんの力が勝ち、破滅の波と湧き上がるきのこ雲は中心部に押し込まれていき、やがて消滅した。
俺達はやっとの事で身を起しはなちゃんの力を向けた方向を見た。
木の標的があった場所を中心に直径100メートル程のクレータが出来ていた。
俺達は茫然としてクレータを見つめた。
「やれやれ…もちっと…練習が…」
はなちゃんはぱたりと倒れた。
「はなちゃん!」
俺達が駆け寄るとはなちゃんは白目を剥いて顔をかくかくさせていた。
「大丈夫だ、気絶しているだけだろう。
…ふぅ、死ぬかと思った。」
明石が呟き、俺達は無言で頷いた。
ふと後ろを見ると、ピクニックのシートやバスケット、水筒などが遥か後ろに飛ばされてて散らかっていた。
始めて実際の原子爆弾を爆発させた時の科学者の感じた衝撃はこんな感じだったのかな?
と思いながら俺達は散らばった物を拾い集めた。
「やれやれ、気軽にはなちゃんに悪鬼どもを吹き飛ばせと頼めないな…」
「こんな調子で練習されたらこの敷地はクレーターだらけになるよ…」
「はなちゃんもあまり力を使いすぎると気絶しちゃうしね…」
「まぁ、はなちゃんの身体がどこも壊れてなかったから良かった…」
「あたし、吹き飛ばされた時面白かったよ!」
「忍、良いなぁ~!
あたしも飛びたかったな~!」
「司と忍は呑気な事言って~!」
俺達は荷物をまとめ、まだ気絶しているはなちゃんを抱いて屋敷に戻った。
屋敷に戻ってしばらくしてからはなちゃんは気が付き、再び司と忍と遊び始めた。
喜朗と圭子さんは夕食の仕込みにとりかかり、俺達は外の大テーブルでコーヒーを飲んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます