第7話 第5部 接触編 3
ここまでのあらすじ
彩斗達は一刻の猶予も出来ず廃ボーリング場に急襲を掛ける事になった。
四郎と明石が悪鬼の集団に飛び込み、暴れ殺しまわる間に彩斗達は地下に監禁されている12人の人間を保護するが、その中の妊娠していた女性が既に破水していて喜朗おじと真鈴がハイエースに連れて行く事になった。
明石と四郎が悪鬼の集団と死闘を続ける中、はなちゃんが新たに殺気に満ちた集団が近づいて来る事を告げる。
グリフォンに変化した喜朗おじが真鈴を背に乗せ妊娠した女性を前足で抱きかかえるとハイエースまで飛んで行く。
残った彩斗と加奈は四郎と明石に加勢するべく廃ボーリング場の戦闘に飛び込んだ。
以下本文
俺はルージュの槍を構えながら男の腕を掴んで広間の端へ引きずって行った。
その間に加奈は襲い掛かって来た1匹の悪鬼を即死させもう1匹の片足を膝から斬り飛ばした。
足を切断されて唸り声を上げる悪鬼の右目にはいつの間に放ったのか加奈の腕のバンドに止めていた小振りな投げナイフが根元まで刺さっていた。
狭まりつつあった雑魚の悪鬼の包囲網が少し広がった。
「きゃはは!
おいでよ~!
遊んであげるからさ~!」
返り血を浴びて凄惨な顔になった加奈がダガーナイフを持つ手をくねらせながら悪鬼達を挑発した。
一方、広場中央では四郎と明石がもう一匹、大柄な取り巻き悪鬼の首を切断して殺すことに成功した。
親玉と思える2匹の悪鬼は明らかに動揺していた。
そして、1匹の親玉が事も有ろうに手近にいた残った1匹の取り巻きの大柄な悪鬼を掴むと四郎と明石の方に投げつけ、明石がその下敷きになった。
そして親玉悪鬼は広場から玄関に向かって駆け出した。
親玉悪鬼の逃亡に雑魚の悪鬼達も動揺した。
悪鬼達は一瞬顔を見合わせた後、悲鳴を上げて一斉に親玉の悪鬼を追って駆け出した。
「景行!
まだ動けるか!
あの親玉は逃がす訳にはいかんぞ!」
「そうだな!
あいつらはまた新しい群れを作るぞ!
ここで始末しないと!」
明石は親玉に投げ飛ばされて来た大柄な悪鬼の下敷きになっていたが下から悪鬼の腹を切り裂いて出てくると手槍で悪鬼の頭を貫いて止めを刺した。
「彩斗!私達も追うよ!
親玉はともかく雑魚の悪鬼を減らすんだよ!」
加奈が俺に叫ぶと逃げる悪鬼の群れを追って走り出した。
一番遅れて走る太った悪鬼に加奈がククリナイフで思い切り深く肩を切り裂いた。
さっき加奈のマチェットを腹に刺したままの悪鬼だった。
ほぼ半分に切断された頭もほぼ繋がりそうになっている。
悪鬼の回復力も個人差によってかなり違うようだ。
俺は後ろからルージュの槍をそいつに背骨に深く刺した。
その悪鬼は下半身のコントロールが効かなくなって床に倒れた。
俺は馬乗りになってそいつの再生しつつある頭にもう一本のルージュの槍を突き刺した。
その太った悪鬼はやがて動かなくなり早くも酸っぱい腐敗臭を撒き散らし始めた。
俺はその腐乱死体から体を遠ざけながら、腹に刺さっていた喜朗おじのマチェットを引き抜いて加奈の後を追った。
親玉の悪鬼に付いていった雑魚の悪鬼達は加奈の攻撃で数を減らしながらも親玉に追いつき、玄関まで辿り着いた。
四郎と明石も親玉を追って玄関まで追いついた。
2匹の親玉の悪鬼は俺達に向かって大きな咆哮を上げると手近な雑魚悪鬼を数匹掴んで投げつけて玄関から外に飛び出した。
「くそ!自分が残れば良いとしか思って無いな!」
飛ばされて来た雑魚の悪鬼をサーベルで二つに切り裂いた四郎が悪鬼のあとを追って玄関から飛び出た。
悪鬼達は駐車場の方に走っていたが、急に歩みを止めた。
悪鬼達の進行方向から数本の光りの帯が現れて悪鬼達を照らしている。
目を凝らすとライトの下に黒ずくめの影が幾つもうごめいている。
「あれが新手か?
殺気がびりびり伝わって来るぞ。」
「確かに強そうな奴らだな。
くそ、左文字の脂を少しでも落とせればな…」
「彩斗、始まったら私の後ろに。
私が倒れたらとにかく逃げるんだよ。
地下に行けばはなちゃんが守ってくれるよ。」
新たな集団が目に止まった悪鬼達に何かを問いかけているようだが距離が遠くて何を言っているか判らなかった。
その時悪鬼達を照らすライトの前に一人の影が立ち、何か長い物を悪鬼の親玉に向けた。
「くそ!あれはヤバいぞ!
四郎、加奈、彩斗、物陰に身を隠せ!
あれは流れ弾でも充分危険だぞ!」
明石が言い終わる前に物凄い轟音が鳴り響き、親玉の悪鬼の一人の頭が半分消し飛んだ。
もう一度轟音が聞こえて、苦痛の唸り声を上げながら頭の傷に手を伸ばした親玉の手と共に残った頭の部分も消し飛んだ。
一瞬呆気にとられた雑魚の悪鬼達は雲の子を散らすように闇に向かって走ったが次々と矢や槍、銃弾などでなぎ倒されて走り寄って来た黒ずくめの者達によって次々と止めを刺された。
1匹残った親玉にも矢や槍が飛んできたが、倒すまでには行かなった。
そして再度あの轟音が響き、今度は親玉に口から銃弾が入り、頭蓋骨中で物凄い圧力がかかり悪鬼の両目玉が飛び出して耳や鼻から脳髄を吹き出してゆっくり倒れた。
「エレファントガンの600ニトロのアクションエクスプレス弾だ、象撃ち用の最強の弾だ。
撃った奴も悪鬼だろうが、ダブルバレルのライフルだが、あんな華奢な体で連射できるとは恐れ入るな…」
「さて…どうなる?
俺達も同じ運命か?」
「様子を見よう。
みんな気を抜くなよ!
ヤバそうなら地下に籠るぞ!
一か八かはなちゃんに頼るぞ!」
俺達は建物の壁に隠れて外を窺った。
四郎がバラクラバを脱いでサーベルの血を拭いながら顔の血を拭いた。
悪鬼達はほぼ全滅したようで止めを刺しに来た者達が倒れた悪鬼の間を歩いている。
そしてまだ息がある悪鬼のうちの1匹を拘束して連れて行き、残りの悪鬼の止めを刺していた。
「捕虜?」
「なんらかの情報収集かな?」
俺達が見ていると先ほど親玉悪鬼を倒した華奢な姿の者が隣の者にライフルを手渡して、代わりにスピーカーを受け取ると1人でボーリング場に向かって歩いてきた。
スピーカーから聞こえたのは女の声だった。
「ワイバーン!君達は第5騎兵隊のワイバーンか?
われらはスコルピオ!第3騎兵隊スコルピオの者だ。
探すのに苦労して遅れたな。すまん。」
俺たちは一様に体の力が抜けた。
「…やれやれ、俺は西部劇の映画をよく見たが奴らは確かに出番が遅すぎるぞ。
救出の騎兵隊ってのはもっとこう…まぁ、文句は言うまい。」
明石は苦笑いを浮かべて頭を振った。
四郎も苦笑いを浮かべて頷いた。
「さて、一応ご挨拶に行くか。
まぁ、われらの符牒を知っているからな。
友軍に間違い無いだろう。
撃つな!
われらはワイバーン!第5騎兵隊ワイバーンだ!
今、出て行くぞ!」
四郎がそう叫んでゆっくりとボーリング場から出て行き俺達も後に続いた。
スコルピオ、サソリの名を名乗った者達が一斉に武器を俺達に向けて警戒している。
スピーカーを持った女が俺達を見ていたが、スピーカーを捨てて何やら声を上げて四郎に駆け寄った。
駆け寄りながら女はバラクラバを顔から剥ぎ取り『マイケル!』と叫んだ。
一瞬女を見つめた四郎が両手を広げて叫んだ。
「リリー!ルージュリリー!」
女は歓声を上げて四郎に抱き着き、四郎も女を抱き返して固く抱擁を交わしながら何と、チチチ、チューをしやがった。
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