第10話
「……あれこれ、私書き間違えてます……? み、見てもらった方が早い……?」
「そ、そうだね? でもこんなところで開示するのはどうかと思うし、お家帰ってからやろうか」
「そう、です……ね?」
「とりあえず0じゃないことは分かったから、よしとしよう! あ、0じゃないことを確認したかったのは、追加機能を入れるのにそれなりに魔力がないと使えないのがあるからなんだよ。取りあえず問題なさそうだし、『コネクション』『リファレンス』『アーカイブ』は追加しとこうか」
簡単に説明を聞く。
『コネクション』は所謂通信機能だった。通話機能……通話? というよりは音声メールみたいなものらしい。
『コネクション』機能が追加されていてお互いに承認しあってるリング同士のみで使える機能だ。30秒くらいの音声を相手に送れるけど、受け取るのは相手の任意のタイミングになる。忙しい場合は後回し可能って感じだろうか。リアルタイム通話よりはちょっとのんびりな感じ。
その場でやりとりすれば電話っぽく通話みたいなことも出来るらしい。
承認はお互いのリングを合わせる必要があるから、面識があることが前提。誰からの通信かを偽ることは出来ないし、例えその場に居てもリングの持ち主以外の声は送れない。
『リファレンス』は亜空間国有図書庫へのアクセス権………………えっと? ネットに繋げるよみたいな感じなんだろうか? 電子図書館で自由に本が読めるよ、みたいな? これからの勉強であった方が良いと思うんだ、と言われた。なるほど?
『アーカイブ』は『リファレンス』で見つけた情報を自分のリングに保管していつでも見れる様にする機能……らしい。よく分からない。使ってる内に分かるようになるよと言われた。
基本的には、『コネクション』『ストレージ』『トランスポート』『スケッチ』を取る人が多いんですよ、とは、役所の女性の言。
聞けば、『ストレージ』はお話にもよく登場するアイテムボックスみたいな感じだった。亜空間物品収納庫! ちょっとだけ憧れるな……!?
ただ、維持には毎月いくらという感じで、維持費が掛かるらしい。
……自分で稼げるようになってから、かなぁ。
と思っていたら、『ストレージ』も追加して貰えた。最小サイズの10立方
手続きが終わると、その後は買い物に行こうと街へ連れ出された。
「このまま南区に行くよ。ツムギの服や靴や文具や――買わないといけないものが色々あるからね」
「あ、あの、でも、お金、ないので。色々頂いちゃって、ますし」
「大丈夫。支度金が出ているよ。ツムギの振り込まれているから見てご覧」
見方を教えて貰った。左手の甲を上にしてリングに右手で軽く触れる。それだけで枠が立ち上がって、それに触れて操作していくと金融履歴が観れるんだそうだ。
今は文字が読めないから分からないけど、言われた場所に文字が入っているのは分かった。つまり、ゼロじゃない。
「ツムギはどんな服が好き?」
「服? 好き? ……ですか?」
どんな服が、好きか。
私の好きな服。……好きな、服、か。
例えば、ジーンズ。オーバーオール。つなぎとか、作業着みたいなシンプルでポケットがたくさんついてて機能的な服。
父さんが着てたみたいな服。
母さんが、絶対買うのを許してくれなかった、そんな服。
「いいねぇ、ポケット。私も好きだよ。それじゃ、たくさんポケット付いた服にしよう。ベストとかジャケットとか。私はねぇ、服の前身頃の裏側にポケットがいくつもあると興奮しちゃうね。隠しポケット最高!」
「わ、わかります! あと、背中も、良いな、って。ポケットの中にポケット、とかも!」
「あっはっは、そこまで使わないのにね、ポケット。あると安心出来るんだよね」
立ち寄った服屋は中古の服を安く買えるお店だった。アヴァロンの人は着なくなった服は中古として売って、また中古の服を買うんだそうだ。国内で布――糸の製造があまり多くないから、布が貴重なんだって。その分魔物素材を混ぜて織られているから、流通している布地は耐久性が高くて、長持ちするんだそうだ。
ポケットがたくさんついたズボンを3本、シャツやジャケットも何枚か。
買ったものはさっきつけて貰ったリングの『ストレージ』に収納した。ルカさんには私がやるよ? と言われたけど、自分でやらせてもらった。
使い方は簡単。収納したいものにリングで触れて『ストレージ:収納』って唱えるだけ。
「大丈夫? 魔力、使って見て変な感じはしない?」
「は、い。だいじょぶ、みたいです。ぜんぜん元気です」
魔力は、使うたびにちょっとずつ疲れていくらしい。気が抜けていく、みたいな?
お金は払おうとしたらルカさんが支払ってくれていた。えっ、でもこれ、私のものなのに……?
保護者だから良いんだそうだ。
「子供もとっくの昔に独り立ちしちゃったし、奥さんとも死別してるしね。ひたすら何十年も働いて来たから、貯金はたくさんあるんだよ。子供が気にしなくて大丈夫」
「えっ、ルカさん結婚していた!? お、お子さん、……成人!? あ、あの、ルカさん、おおお、おいくつか、って聞いちゃっても大丈夫、ですか?」
「うん? そう言えば年齢は言ってなかったね。私、今年で90歳だよ」
「90!?」
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