第1話 わたくし、何か間違えまして?
マシューに連れられ、執務室までたどり着いたわたくし達は、促されるまま椅子に腰を下ろし、マシューが紅茶を入れてくれるのを待った。
「・・・・あなたも当事者でしてよ?どうして、わたくしの斜め後ろにお立ちになっていますの?」
「はっはっはっ!お嬢と同じ椅子になんて、座れる訳ありませんよ!俺をキュン死させるつもりですか?」
何を言ってるのか分からないが、とりあえず座る気は無いそうなので、無視をすることに決めた。
(噂に名高い大陸最強が、ここまで理解不能な方なんて、思いもしませんでしたわ。)
密かに大陸最強の御仁とは、どんな方なのかと夢想していたわたくしは、僅かではあるが肩透かしのような気分を味わいなが、いつの間にかティーカップを置いて、正面に座っていたマシューを認識して、気を取り直した。
「それでは、ご説明させていただきます。
ルナお嬢様、フルーツェル殿、よろしいですか?」
わたくしは静かに頷き、背後からもガチャッと鎧が擦れる音がしたので、きっと頷いたのだろう。
すると、マシューは実に分かりやすく説明してくれた。
説明された内容には、細かい部分が沢山あったが、要約すると
1、わたくしの護衛のために、フルーツェルを雇う
2、彼は、雇われている間は、害あるものを切り捨てる役割を有している
3、優先順位は、わたくし、お父様、私の家族、自らの命
4、以上の条件を、フルーツェルの所属している騎士団にも適応する。
5、契約は、半永久であり、家が無くなるか、騎士団含むフルーツェルの死亡により解除される。
以上の5項目によって成り立っているようだ。
・・・これかなり、いや
こちらにメリットしかない
むしろ、フルーツェルと騎士団がこの条件を呑む意味がわからない。
いうなればこの契約、うちのお抱えの騎士団になれ、という条件である。
いままでフリーで活動しているはずの騎士団が、ひとつの家に肩入れしろと言っているのだ。
しかもこれは、半永久の契約
解除条件も、かなり厳しい。
(こんな条件、いくらお金を積まれた所で、快諾するわけ───)
「以上で説明を終わりますが・・・」
「ああ!、こちらが提示した条件通りで間違いない!、俺はこれで問題ない」
「・・・・はぁ?!」
フルーツェルのあまりの一言に、わたくしは思わず声を上げてしまった。
こ、ここ、この破格の条件をフルーツェル側からの条件?!
な、なんですって?!
わたくしは、思わずティーカップを乱暴に机に置き、立ち上がってフルーツェルに詰め寄った。
「あ、あなた!!今なんておっしゃいまして?!自らこの条件を?!頭が湧いて湧いてまして?!」
「おー、いい育ちのお嬢様も、そういった言葉使うんだなぁー?」
「お話をすげ替えないでくださいまし?!
一体何が目的でして?!」
わたくしがそう叫ぶと、フルーツェルは真剣な顔でこちらを見据え、1歩前に出てきた。
突然のひりついた空気に、わたくしは少し気圧されて、後ろに少し仰け反ってしまったが、負けじとキッと大男を見つめ返す。
すると、にんやりと笑った彼は、無骨で大きな手こちらに伸ばしてきた。
突然の行動に、わたくしは反射的にその手を払い除けた。
「無礼者!!!気安くわたくしに触れるな!!」
「はっはっはっ!いいえ、触れられます。
なにせ俺は、あなたの護衛ですから」
訳の分からない反論に、わたくしはマシューを見た。
すると、彼は、少しも表情を崩すことなく、淡々と告げてきた。
「お嬢様、護衛があなたに触れることが出来なければ、あなたをお守りすることが出来ません、つまり、契約に則るのであれば、彼の言い分は別に間違えておりません。」
「な、なな、なんですって?!」
マシューの言葉に、驚愕していると、先程振り払った手がわたくしの両肩を捉えた。
ビクッ!と身を震わせて静かに首だけ振り返れば、大男が豪快な笑みを浮かべながらこちらを見下ろしていた。
「まあ!そう言う事だ!別に取って食ったりしないから、安心してくれ!
あなたと部下の前以外では、しっかり敬語も使うしちゃんとしよう。
むしろ、それで大陸最強が手に入ると考えたら、かなりいい話じゃあないですかねぇー??
お・じょ・う・さ・ま???」
フルーツェルの言葉で、わたくしはようやく置かれている状況に気がついた。
そう、これは決して逃してはならないチャンス。
本来であれば、資材をなげうってでも手に入れたい大陸最強、さらにそれが所属する騎士団、もはや、この大陸の戦力のナンバーワンとナンバーツーを同時に手に入れるまたとない機会!
真意は理解できないが、わたくしが少し我慢すれば、この家は安泰であり、死別するまでは恐らくどこまでも使うことの出来る、最強の戦力を手に入れることが出来る。
でも、でも─────
「お嬢様、なにとぞ懸命な判断を」
「お嬢様、なにとぞ、懸命な判断を?」
肩にのせている無骨な手が、揉み揉みと僅かに動いていることに激しい嫌悪感を感じ、ぐぬぬと唸り声を上げてしまう。
断る理由は、お家的にはありませんわ!。
でも、でもこの変人を、屋敷に住まわせることになるってことでもありますのよね?!
悩みに悩んだ末、わたくしはついに、答えを決めた。
「───わかりましたわ。今回の話、わたくしの方からもお願い致しますわ」
わたくしの答えをきいて、フルーツェルは肩から手を離し、まるでこの世の春かと言わんばかりの喜びようで雄叫びを上げていた。
マシューも、ホッとした様子で両目を閉じていたが、同時に胸のポケットからハンカチーフを取り出し、目元を拭っていた。
どうやら、同情はしてくれているようだ。
「それじゃあ!今日からよろしくお願いするぜ!!ルナ嬢!!!」
「ええ、よろしくお願い致しますわ?
───ただし」
満面の笑みを浮かべながら頭を下げたわたくしは、そこから一気に声のトーンを落とし、喜びいさんでいるフルーツェルを見た。
その瞬間、フルーツェルはキョトンとした表情で
固まった。
「わたくし、自己防衛はしっかり自分で致しますわ。
あまりに不躾で無礼な方は、切り伏せますわよ?
・・・よろしくて??」
スッと意識して眼を細め、淡々とそう伝えると、フルーツェルは固まったままガタガタと震えだし、何事かと思うと、突然喜色満面で直立不動になった。
「い、いい、イエスマイマスター!!」
「・・・なぜ、喜んでいるか分かりませんが、よろしい。」
わたくしがそう言うと、フルーツェルは数歩こちらに近ずいてきて、わたくしの前で片膝を着く騎士の礼をとった。
「今ここに、契約はなされました。
大陸最強、"フルーツェル=シュメル"の名にかけて、ここに誓います。
この身この命尽きるその時まで、青海璃ルナ様をお守り致します。」
凛とした声、凛とした所作での一連の言葉に、わたくしは呆気にとられて、思わずほうけそうになったが、すぐに気を取り直して、礼をとるフルーツェルの肩に触れ、言葉を続けた。
「わたくしは、あなたを騎士と認め、遣えることを認めますわ。
・・・期待していますわ」
わたくしがそう言うと、突然ガバッと顔を上げたフルーツェルに、思わず小さな声を上げてしまった。
そんなわたくしを見て、フルーツェルはキラキラした顔で笑顔を浮かべた。
「こんなに美しくて可愛らしい主を迎えられるなんて!!俺は幸せ者だ!!!これからよろしく頼むぜ!お嬢!!」
嬉しそうにそう言って、突然立ち上がったフルーツェルは、わたくしの両手を掴み、ブンブンと振り回した。
あまりの出来事で、反応できなかったわたくしの落ち度ではあるけれども、この豹変ぶりは何なのかしら?!
自分で自分を守ると言った手前、周りに助けを求める訳にも行かず、わたくしは何とか両手を解放してもらい、ぜぇはぁしながらフルーツェルに向き直った。
「そ、それでは、わたくしの騎士になったんですもの、最初の命令をしますわ。」
「おう!なーんでも言ってくれ、ルナ嬢!!」
「───その、ルナ嬢という馴れ馴れしい呼び方はやめなさい!!!」
わたくしの一喝と共に、鎧がひしゃげる音と、男の野太い悲鳴が執務室から鳴り響いたのは、もはや語る必要もないだろう。
=====契約より数日後=====
あれから、フルーツェルは本当によくやってくれている。
契約を結んだ次の日
中庭に大量の黒い服を来た輩の山ができており、何事かとその場に居た使用人に問いかけると
「フルーツェル様が、昨夜見つけ出して始末した賊達でございます」と、返事が帰ってきた。
その事実に、わたくしは驚愕した。
こ、これほどの人数の賊が、たったの一夜で?!
あ、有り得ますの?!そんなこと!!
すると、使用人と入れ違えになる形で、中庭にフルーツェルが大きな欠伸をしながらやってきた。
「ふぁ〜、おはようございます、お嬢。
どうかなさいましたか?」
あまりに気の抜けた対応に、わたくしはキッと彼を睨みつける。
すると、両手の平をこちらにかざしながらワタワタと両手を振り回した。
「ま、まさかまた何かやりました俺?!
今回はなんのことで怒ってんです?!
心当たりしか無くて、毎回どれかわかんねーですよ!!」
「自覚があるなら、身の振り方を改めなさい!!むしろ何をしでかしてますの?!
そんなことより、わたくしがあなたを睨んだのはこれのことですわ!!」
地団駄を踏みそうになるのを堪えながら、山になっている賊を指さした。
すると、フルーツェルは興味無さそうに欠伸をしながら返事をしてきた。
「あー、これですか?
うろちょろコソコソうるさいし目障りなのがいたんで、全員シバいてここに固めといたんですよ〜。
事前に聞いてた隠密かとも思ってたんですけど、お話したら全員賊だったんで〜」
「こ、こんなにいましたの?昨夜だけで?」
わたくしの言葉に、フルーツェルは首を横に振って否定した。
「いやぁ、長いこと潜伏してる奴もいましたよ?
ほら、こいつなんて見覚えあるでしょ?」
そういって、山の中をに腕を突っ込んで、無理やり引っ張り出した人物は、最近雇ったと聞かされていた庭師だった。
「こいつなんてかなり大胆でしたよ??
枝切り用のノコギリを使って、窓から切りつけようとしてたんですから。
どんだけ時間かかる殺し方しようとしたんですかね?」
「う、ううっ、ご、誤解だァー、お、オラ枝切れないから上から切ろうとしてぇー」
「なーーんで柄の長いノコギリわわざわざ使うんだよ。
あんだろ短いのが、ほらここに」
ボロボロで虫の息の庭師の言葉に、フルーツェルはどこからかノコギリを取り出し、庭師の喉にそのノコギリをかざした。
すると、青ざめながら洗いざらい話し始めた庭師に、興味無さそうにノコギリを放り投げ、代わりに庭師の背中を踏みつけた。
「あ、あなた・・・結構優秀なのね?」
「はっはっはっ!俺の部下が優秀なのがほとんどですよ!
俺は、荒事専門!!
ほとんどこいつが見つけたし、情報吐かせてますからね?」
そう言うと、フルーツェルは再び賊の山に腕を突っ込み、ゴソゴソと何かをまさぐり始めた。
まさか、まだ先程の庭師の仲間がそこにいるのだろうか?
しばらくすると、おっ!という声とともに、フルーツェルは腕を引き抜くと、出てきたのは、小さな男の子が表れた。
歳は、10に満たないだろうか?
身軽そうな格好をしており、太ももの中ほどまでの丈の半ズボンに、ぶかっとした赤地のTシャツ
着ていた。
両目がくりりとしており、口元は小さく開かれている。
「そういえば、昨日紹介してなかったですね?
こいつは俺の騎士団員のひとりで、[ワァ]だ!。
覚えてやってくれると助かります!」
眼をぱちくりさせながら、ブラブラと持たれている彼に、わたくしは一瞬固まってしまったが、すぐに気を取り直して、自己紹介をした。
「んんっ、初めまして。わたくし、あなた方の護衛対象になる、青海璃ルナですわ。よろしくお願い致しますわ。」
「・・・(っ’ヮ’c)ワア」
「・・・え?」
「(っ’ヮ’c)ワア、(っ’ヮ’c)ワア!!」
ワァと紹介された男の子は、両手を頬に当てて、何度もワァと繰り返すのみで、それ以外話そうとしなかった。
・・・これは、どう反応したらいいのかしら??
困り果てたわたくしは、フルーツェルの方を見ると、彼は豪快に笑った。
「こいつはこれしか喋りませんから!
だから誰も名前も知らないし、感情も滅多に出さないんですよ!
でも、悪意や悪気は一切ないので、安心してください!それじゃあ、ワァ!!引き続き頼むぜ?」
「わぁー!!(っ’ヮ’)っ」
フルーツェルが地面に下ろすと、ワァはトテトテと駆け出し、どこかへ行ってしまった。
「・・・意思疎通は、はかれますの??彼」
「ええ、唯一翻訳出来るやつが1人だけ、団員にいますので、割と何とかなってます。」
「あ、あなたも言ってること分かってなかったんですの?!」
わたくしの反応に、はっはっはっと声を上げて笑い出したフルーツェルは、何かを思い立ったかのように手を叩いた。
「そうだ!!せっかくなんで、うちの騎士団員と顔合わせしましょうか!!
別件で顔を出せないやつもいますけど、来れるやつは呼んでくるんで!!!」
「・・・あなたの、団員」
先程の男の子を思い出しながら、大丈夫か不安を感じつつ、あとから驚くくらいなら、早いうちに、会っておいた方がいいと思い直し、その話を快諾した。
すると、フルーツェルは「すぐ呼んできます!」
と言って、どこかへ行ってしまったので、わたくしはゆっくり待つことにした。
そして、すぐに「賊の山の前で、待ってないといけませんの?」と気が付き、使用人を呼んで、片付けと執務室へ来るように伝言を伝え、わたくしは執務室へ移動した。
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執務室で、用意してもらった紅茶を飲みながら、優雅に待っていると、静かに扉をノックする音が聞こえてきた。
入室の許可をすると、見知らぬ女性が部屋に入ってきた。
「失礼致します。
お初にお目にかかります。
わたしは、フルーツェルの招集で馳せ参じました、名を"ビルーエン"と申します。
騎士団の副団長を務めています。
以後、お見知り置きを」
優雅な礼をした彼女は、スラリとした綺麗な見た目をしており、金色に煌めくセミロングから覗くエメラルドグリーンの瞳に、同性とはいえ少しだけドキリとした。
「あ、あなたが、フルーツェルが言っていた団員の方ですの?
わたくしは、あなた方の護衛対象の青海璃ルナですわ。よろしくお願い致しますわ。」
わたくしは、静かに立ち上がり頭を下げた。
すると、ビルーエンは突然うっ!と苦しげな声を出し、その場に片膝を着いた。
何事かと駆け寄ろうとしたら、片手でせいされてしまい、その顔は苦しげに歪まれていた。
「ど、どうしましたの?!突然!!」
すると、扉の隙間から先程どこかへ行ってしまったワァがひょこっと顔を覗かせた。
「( ・∇・)わぁ!、わぁわぁ( 'ヮ' )
わぁー(っ’ヮ’c)」
「・・・・えーっと??」
「〖いつもの事だから気にしないでください、きっとお嬢様の可愛さにやられてしまっただけですから〗って、そそ、そんな!!わたしは、確かにお美しい方ではあるが、こんなに破壊力があると予測できてなかっただけで!!!」
つんつんと背中をワァ君につつかれながら、ビルーエンは顔を真っ赤にさせながら弁明していた。
すると、扉を開けてもう1人、中に入ってきた。
「副団長、仮にも雇い主でありこれから主になる方の前ですよ?
もっとしっかりしないとダメです。」
入ってきたのは、これまた女性で、この方はローブのようなものを身につけており、水色の長髪をなびかせて、手にはなにかの本を持っていた。
首には、ロザリオのようなものを下げてもいるので、恐らく神官のような役職を担っているのだろう。
すると、今度はその女性がぺこりと頭を下げた。
「副団長が失礼しました。
私は、団内で神官を務めています"ハル"と言います。
主に、精神面での治療や四騎士様への祈りを捧げることを役割にしております。
以後、お見知り置きを」
「ええ、よろしくお願い致しますわ。わたくしが、護衛対象の青海璃ルナですわ。」
わたくしがそう言うと、ハルさんもまた、ビルーエンのようにビクリと身を震わせ、何故か少しだけ眼を細めた。
「・・・ああ、そうなのですね。
─────あなたが、あなたさまが!!!」
突然、数歩こちらに近づいて来たかと思えば、急に感極まったかのようにその場で崩れ落ち、天を仰ぎ始めた。
「ついに、ついに巡り会うことが出来たのね!!!
四騎士様のおひとり!青の騎士様に!!
ああ、この瞬間をどれほど思い描き、夢に見てきたか!!!
ああ、感謝致します!!わたしは!ここに!!念願叶いましたぁー!!!!」
私の前で跪きながら何度も頭を下げ、涙をポロポロと流して叫び続ける彼女に、わたくしは冷静にドン引きして、距離を置いた。
な、なな、なんなんですの?この方達??
まともな方が、まともな方が1人もいませんわ!!!
「あー、やっぱりやらかしてたかぁー。
無事ですか?ルナ嬢」
混沌とした室内へ入ってきたのは、彼らのリーダーであるフルーツェルである。
わたくしは、この瞬間ばかりは天の助けだと思った。
「ふ、フルーツェル!!なんなんですのこの方達?!、収集がつきませんの!!!」
「あー、まだ血が流れてないから、まともですね?
おーい、毎回初めて会う人には繕えって言ってるだろー?」
フルーツェルが両手を腰に当ててそう言うと、ビルーエンとハルが、同時に彼の方を見て、射殺さんばかりに睨みつけた。
「おやおや、団長様ともあろうものが遅刻とは、これはいよいよわたしに席を譲る時が来たんでは無いですかね??」
「穢れきった男風情が、わたしに叱責を??ちょっと理解できないんですけど、この空間が汚れるから喋らないで貰ってもいい?」
「2人ともフルスロットルじゃねーか!!どういうことだよワァ!」
「・・・( 'ヮ' )??」
4人の反応を見て、大体の力関係を理解したわたくしは、大きなため息をひとつついて、手を打ち鳴らした。
全員の視線が、一気にわたくしに集まり、やっと話を聞ける体勢になったので、再び椅子に座り直した。
「それで、これで全員ですの??フルーツェル」
「まだまだいるんだが、今日紹介できるのはこの3人だな」
「よろしい」
わたくしは、フルーツェルに確認を済ませて、3人の顔を順番に見た。
1度、3人のことを整理してみよう。
ワァくんは、相変わらず愛らしい顔のままこちらを見ているが、先程の中庭での1幕から、かなりの実力者であることは分かっている。
戦闘面では問題ないのだろう。
ハルさんは、初めこそ礼儀正しい雰囲気ではあったが、わたくしが礼をした後からのあの変貌。
発言内容や役職、行動から、かなり信心深いと捉えて良いだろう。
あと、団長・・・と言うか、男にかなりの嫌悪を抱いている可能性がある。
確かに、神官職の戒律に男禁という、完全に男を、断つような戒律があったような??
この辺りはしっかり調べておくことにしよう。
そして、最後の一人、ビルーエン
彼女は、終始礼儀正しい雰囲気で、ハルさんの第一印象と大差がない。
でも、何故かわたくしを見て苦しみ、これまた団長をみて、とてつもない嫌悪を示した。
彼女も男嫌いなのか??
あと、団員唯一ワァ君の言葉が分かるものと言うのが、この副団長なのだろう。
先程、自己翻訳して、1人で言い訳を言い連ねていた。
・・・こうやって整理してみても、変な方ばかりでは??
何?男が嫌いすぎてあの態度って??
ワァしか喋れないって、呪いですの?
あと、なんで団長嫌いが副団長に??
・・・整理したせいで、逆に訳が分からなくなった気がしますわ。
頭が痛くなりそうになり、思わず眉間を抑えて俯いてしまう。
すると、正面から3つ、不躾な視線を感じでばっ!と顔を上げる。
すると、そこには、だらしない顔をしたものが2人、浸水したように恍惚とした表情をした者が一人、あと、どこを見ているのか分からないワァが1人!!!
(た、大変ですわ!!もしかして、わたくし昨日、とんでもない間違いを犯してしまったのではなくて?!)
こんな一癖二癖もある団体を、雇ってしまったことに後悔しながらも、ひとまずは解散してもらい、騎士団の顔合わせについては無事に幕を閉じたのだった。
執務室を出る際、ワァ君の姿がなく、どこに行ったかフルーツェルに確認すると
「ああ、任務に戻ったんですよ。
あいつ、隠密なんで。あと、ビルーエンのやつも翻訳できるってことでよくペアで行動させてますよ?
あと、今はそこにいますね。」
そういってフルーツェルは、わたくしの頭の上を指さしたので、視線でおってみると、そこには、あのくりくりした眼と少しいやらしさがまじった緑の瞳が、こちらを見下ろしていた。
・・・本当に大丈夫かしら
おもに、わたくしの精神面的に
わたくしは、この日から巻き起こるであろう波乱の日々に、深いため息をついた。
そして、それを見ていた騎士団の面々とフルーツェルが、湧いた。
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