第7話 救う命

村へ入りエイリンの家へと入ると


シーラはベッドに横たわり、呼吸が荒く、顔は真っ赤で激しい咳を繰り返していた。郁夫は彼女の症状を確認すると、


「シーラさん、少しだけ時間をください。すぐに薬を作ってきます!」


郁夫は神様が言いていた青カビを探しに森へと向かった。


森の湿気が多い場所で青カビを発見することができた。


郁夫は慎重に青カビを集め、村に戻って発酵プロセスを開始した。通常であれば、ペニシリンの抽出には時間がかかるが、郁夫は自分の「錬金(発酵)」と「時空魔法」スキルを使って、そのプロセスを短縮することにした。


「さあ、発酵の力を使って、ペニシリンを抽出しよう……」


彼は集中し、スキルを使い、青カビからペニシリンを分離・精製する作業を行った。錬金の力を駆使することで、ペニシリンの有効成分を短時間で抽出することができた。


「これでできた……これがペニシリンだ。これならシーラさんの細菌感染を抑えられるはず!」


郁夫は精製したペニシリンを液状にし、エイリンにシーラへ飲ませるように指示した。


エイリンは震える手でペニシリンをシーラに与えた。

しばらくして、シーラの苦しそうだった呼吸が少しずつ落ち着いていった。咳も次第に弱まり、熱も徐々に下がっていく。


「シーラ……よかった……」

エイリンは涙を浮かべ、安堵の表情で郁夫に感謝の言葉を述べた。


「本当に、ありがとう、郁夫さん。あなたのおかげです」


「まだ油断はできないけど、薬が効いているみたいですね。このまま体を休めさせて、何度か薬を飲ませれば、きっと元気を取り戻せると思います。」


郁夫は村の人々から集めた材料でさらにペニシリンを錬金し、シーラに定期的に投与するようエイリンに教えた。シーラの体調は日に日に改善していき、数日後には完全に回復した。

それから2週間程がたち

「お兄ちゃん、ありがとう!」

シーラが元気に走り回る姿を見て、郁夫は心から安心した。


「よかった、本当に元気になって……」

エイリンも笑顔で郁夫に感謝を伝えた。

「あなたがいなかったら、シーラは……本当に、心の底から感謝しているわ。命の恩人です。」


郁夫は照れくさそうに笑いながら答えた。

「僕ができることをしただけです。でも、これも発酵技術のおかげです。発酵には食材を美味しくするだけじゃなくて、命を救う力があるんだって、改めて実感しました。」


郁夫はこの経験を通じて、発酵技術が食文化だけでなく医療の分野にも役立つことを確信した。彼の持つ錬金(発酵)スキルは、異世界においてまだまだ無限の可能性を秘めている。これからも多くの人を救い、発酵技術を広めていくという使命感が、彼の中でさらに強くなっていった。


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