第6話 村を出て、新たな地へ
セントリ村で発酵の技術を導入してから、村の人々は大いに盛り上がっていた。発酵によって深みを増したスムージークレイは、村の新たな名物として定着し、郁夫は村の人々から感謝の言葉をたくさん受けた。
「郁夫さん、本当にありがとう。あなたのおかげで、うちの村の名産品が一段と魅力的になったわ!」
村長も満面の笑みで郁夫にお礼を言い、村の住人たちもまた、郁夫を「村の恩人」として歓迎してくれた。
しかし、郁夫には新しい目標があった。彼は発酵の技術をこの村だけでなく、もっと広くこの世界に伝えたいと思っていた。神様から与えられた使命――異世界の食文化を発展させる――その言葉が、彼の心に強く残っていた。
「村長さん、ありがとうございます。けれど、僕はもっといろんな場所で、この発酵技術を広めてみたいんです。この村に滞在した期間はとても楽しかったけれど、次の町に向かおうと思います。」
村長は少し寂しそうな顔をしたが、すぐに理解し、うなずいた。
「そうか……郁夫さんのような才能を持った人が、この村だけに留まっているのはもったいないな。あなたの旅が成功するよう、心から祈っているよ。もしまたこの村に来ることがあったら、いつでも歓迎するからね。」
「ありがとうございます!」
郁夫は村人たちに別れを告げ、少し名残惜しさを感じつつも、再び旅路に立った。
次に目指す場所は、この地域の中心地である「リグラント」という大きな町だ。
スムージクレイの店主からリグラントは商業と農業が盛んな町で、郁夫にとっては新しい技術や食材を学ぶ絶好の場所だと聞いていたからである。
「リグラントでは、きっともっと多くの食材や料理が見つかるはずだ。それに、リグラントなら発酵食品を広める大きなチャンスがあるかもしれない。」
郁夫は心を踊らせながら、歩みを進めた。
しばらく道を進むとその途中で、馬車とばして村に戻るエイリンの姿が目に入った。
「おーいエイリンさん!何があったんですか?」
郁夫の声に気づいたエイリンは驚き、そしてすぐに悲しげな表情に変わった。
「郁夫さん……妹が……シーラが急に高熱を出して、息が苦しそうなの。となりの村の医者に見てもらったんだけど、治療法がないって言われて……。」
彼女の妹、シーラが重い肺炎を患っているという話を聞いて、郁夫はすぐに思案にふけった。この異世界では、病気に対する医療技術がまだ発展しておらず、特に肺炎のような感染症に対して効果的な治療法がないのかもしれない。
何か手はないかと考えていたとき
神様と話が出来るネックレスの事を思い出した。
『神様・・・青カビはこの世界にもありますか?』
『郁夫さんですね!全然話してこないからわすれちゃったかとおもってましたよ
ペニシリンですね?さすがです。 ありますよ青カビ!
郁夫さんが最初に居た森の中にも生息しています!』
『神様!ありがとうございます』
郁夫は発酵や錬金の技術を使えば、何とかできるかもしれないと考えた。
「エイリンさん、すぐに村に戻ってシーラさんの様子を見せてください。僕が何とか手を打ってみます。」
エイリンは涙を拭いながら頷き、郁夫とともに急いでセントリ村へと戻った。
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