第4話 新たな世界での第一歩

異世界に降り立った郁夫は、自分のステータスを確認し、魔法の基礎を試し終えると、少しずつ新しい環境に馴染み始めた。とはいえ、初めての異世界の森で、目立った行動をするのはまだ不安だ。郁夫は慎重に周囲を観察しながら、次の行動を考えることにした。


「まずは町に行って、状況を整えないといけないよな……」と独り言を呟きながら、森を歩き始める。彼の目の前には自然が広がっているが、どこか見覚えのない植物が生い茂っているのが気にかかる。


「ここは、食文化を発展させるために来たんだし、まずはこの森で食材になりそうなものを探してみようか。」

郁夫は、以前の農業高校で学んだ知識を活かし、手近な植物やキノコを確認しながら進むことにした。手に取った葉や実を一つ一つ観察し、その匂い、形、手触りを確認する。これらが食材として使えるかどうか、自然に頭の中で判断していく。


「この葉っぱ、何かに似ているな……」

郁夫が手に取ったのは、淡い緑色をした大きな葉だった。形や匂いはどこかバジルに似ていたが、異世界の植物であるため、油断は禁物だ。慎重に舐めてみると、かすかに辛味とスパイシーな香りが広がった。

「これ、意外と使えるかもしれない。」


次に見つけたのは、青紫色の実をつけた低木の茂みだった。見た目はブルーベリーのようだが、その光沢と大きさは明らかに異なっている。郁夫はさっそく一粒を指で潰し、その汁を慎重に舐めてみた。酸味と甘味がバランスよく混ざり合い、非常に美味しい。

「この実は、ジャムやソースに使えそうだな。」と、郁夫は内心で興奮を抑えきれなかった。


森をさらに進んでいくと、小さな川が現れた。川の流れは穏やかで、その周囲には魚影がちらほらと見える。郁夫は、手持ちのスキルを思い出し、川に向かって「ウォーター」を唱えた。すると、水の流れがわずかに変化し、目の前の魚が浮かび上がった。彼は嬉しそうに微笑み、その魚を手に取った。


「よし、これで食材が揃ったぞ。何か簡単な料理を作ってみよう。」

郁夫はその場に腰を下ろし、川辺の石を使って即席のコンロを作ると、魚を焼く準備を始めた。


手に入れた葉っぱを魚に巻きつけ、採取した実を添えて、異世界初の料理が完成する。その香ばしい匂いが広がると、郁夫はその場で感動を覚えた。

「これなら、この世界でも新しい料理を生み出せるかもしれない。」


魚を口に運ぶと、その絶妙な塩味とスパイシーな香りが広がり、異世界ならではの豊かな風味が彼の舌を楽しませた。


「これからが本番だな。もっといろんな食材を見つけて、いろんな料理を試してみよう。」


郁夫は立ち上がり、今後の展望に胸を膨らませながら、次の町を目指して歩みを再開した。

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