第2話 選択

「近達郁夫さん」


突然の声に郁夫は反応できなかった。


「近達郁夫さん」

ともう一度呼ばれたときにやっと反応が出来た。


「はい!」


「よかった。聞こえてましたね」

声を出している感覚はなかったが答えられていたようだ。



「ここはどこなんでしょうか。これは夢ですか?」


「ここは思念体のみが来れる空間です。」


「あ、だから体が無いのか」

思考が早いせいか妙に納得をした。


「それで僕はこれからどおなりますか?」


「あまり驚かれないのですね」


「はい、たぶんあのヨーグルトがトリガーになったんだなと」

郁夫は最後に食べたヨーグルトの味を思い出していた。


「その通りです。

私の名をまだお伝えしておりませんでしたね。

私は食材・料理の神です。あなたの学校で祀って頂いていたといった方がわかりやすいかもしれないですね。

あのヨーグルトは私のおやつに取っておいたヨーグルトだったのです。


「なるほど神の造りしヨーグルトだったわけなんですね」


「はい、それで人間が神の造った食べ物を食べてしまうと

もといた人間界にはとどめておくことが出来ないのです。

私の不注意で巻き込んでしまって申し訳ありません。」


「ということは死んだってことですか?」


「いえ、重ね重ね申し訳ないのですが私の隣の祠で祀られています。」


「・・・?」


「郁夫さんの存在は神の存在と同列に扱われております。」


「・・・??それって僕は神になったという事?」


「厳密には神ではないのですが、神の使者のようなものとなります。

そして矛盾が生じないよう郁夫さんがいた形跡は全てなくなってしまっています。」


「そっか・・・それはさみしいですね、

でも、僕が死んで悲しむ人がいないのは少しほっとしました。

父さん、母さん、じいちゃん、ばあちゃんより先に死んだら

みんな悲しんじゃうと思うし・・・」


「本当に申し訳ございません。」


「いえ、もとは僕が学校のルールを無視してヨーグルトを食べたのがいけなかったんだし!

それで僕はこれからどうなるんですか?」



「はい、郁夫さんには選択肢が3つございます。

1つ目は私たち神の世界でこれからを過ごし、神となる事を目指し修行を積むこと

2つ目は記憶を完全に消去し元居た世界で生まれかわる事

3つ目は元居た世界とは異なる世界で、

神の使者としてあなたの知識や技術でその世界を発展させる任務を務める事

この3つから選んでいただきたいです。」


「もっと食品の事を学びたかったので3にします。

異世界の食文化というのもきになるし、

神様になるっていうのも柄じゃないですしね ハハハ」


「わかりました。それでは異世界での食の発展をお願いいたします。

その為の私からのギフトでスキルをお渡しいたします。

1つは特殊な空間魔法の使える時空魔法、

2つ目は攻撃系の魔法を一通り使える 全系統魔法適正

3つ目は錬金(発酵)となります。

3つ目のスキルは発酵という概念が無いので錬金としておりますが

錬金のスキルと発酵の両方を使うことが出来ます。

ですが、いずれもスキルのレベルは1からのスタートとなりますので

その点ご注意ください。」


魔法があるのか・・・

さすが異世界だ。うまくやれるかな。

でもすごそうなサービスもいっぱいもらってるし何とかなるかな。


そんな事を考えていると

話は進んでおり


「また、最初にいて頂く場所は人のあまり多くない街から

少し離れた森に移動していただきます。

そこはあまり強い魔物はいませんのでご安心ください。」


魔物・・・やっぱりいるよね

運動が苦手な僕は死なないように気を付けないと。


「街に入るのに身分証が必要となります。

この身分証は最初の街から数万キロ離れた場所で発行したものになりますので

街に入ってしばらくしたら拠点を変更することをお勧めします。

また、服装も身分証を発行した地域特有の服になりますので

少しの間我慢していただければと思います。」


「わかりました。ありがとうございます。」


「これで最初にお伝えしておくことは一通りお伝え出来たと思いますが

わからないことがありましたらバッグにマニュアルの本を入れておきますので

ご確認下さい。

また、このネックレスもお渡しいたします。

このネックレスを握って私に話しかけて頂ければお話が出来ます。」


「よかった、神様にはもう会えないのかと思ってました。

神様は僕の事を唯一知ってくださっている方なので・・・

神様の使者として発展させられるよう頑張ります。」


「ありがとうございます。本当にこんなことになってしまってすみませんでした。

無理せず気長にやっていただいて大丈夫なので楽しんでいただけたらと思います。」


「気にしないでください!次の世界で今まで以上に食の事を学んでみます!」


「ありがとうございます。それでは楽しんできてください!」


あたりが暗転した

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