魔法に夢を持つのは間違ってますか?


「なんつーか…もうちょっとこう…ファンタジーなもんだと思ってた。」


「なによー!十分ファンタジーな光景でしょー!?」


「ファンタジー…ってか悪夢の時に見る内容じゃね?」


 未だに白い雨が降る中、男と魔法少女はのんびりと話をしている。こんなことなら、リスポーンポイントには屋根を作るべきでは無かったな。

 ある程度トリモチで捕まえるまで、ここで会話を続けるらしい。…いつまで降り続くことになるのやら。



 「それにしても魔法ってデタラメだな…どうなってんだ?トリモチの雨を降らせるとか。」


「あー、えーっとね?どうやってるのかと言うと…」


「言うと?」


「こう…こねこねして、ドーン!!みたいな!いや、ねりねりして、バーンが近いかも?」


「全く参考にならないことはわかった。」


 …感覚的で抽象的過ぎるな…彼女が選ぶのだ。相当にぶっ飛んだ人材なのだろうとは思ったが…大丈夫なのだろうか?

 まぁ、感覚的に行使出来ているのだから問題無いのだろう。…無いよな?


「ま、どうでもいいや。助かったよ。これで今日のオユウギは早く終わらせられる。」


「…はっ!そうだよ!ここは何?なんか結界に覆われてたし!」


「あー…あれだ。町長のイベントだよ。町おこしなんだ。」


「過激過ぎるよ!!撃たれたよ!?壁壊れてたよ!!?」


「リアル志向なんだよ。わーすげーリアルー」


「棒読みすぎるよ!!?棒読みちゃんだよ!!」



 気が抜けているな。達成が目前であるから仕方がないだろうが…このままクリアされてもなんの面白みもないな?

 しょうがない。あまり手を加えたくは無かったのだが…兵種を追加するか。マップ中央に。


 魔法少女よ。壊れてくれるなよ?


「もうそこは気にしないでくれ、お前に関係は

――ッダーーー…ン


「…え…?」


 少女の目の前で男が倒れ込む。側頭部を撃ち抜かれていた。やはり従軍経験がある者は違うな、ここぞという所できちんと当てる。

 男の頭からは血が流れている。赤黒いな。綺麗だ。命を感じる。体温が下がっていくのが手に取るように分かる。


「い…ぃやぁぁぁああ!!!」


 おっと。少女のことをすっかりと忘れてしまっていたな。あの取り乱し様は今まで死体を見たことは無かったか。キャンキャンと高い声は頭に響くのだが…

 気にするな少女よ。いくらでもやり直せるのだから。


 少女の前で男の体が溶けていく。流れ出る血に溶け込むように。ふむ。こうして見るとあまり…凄惨さに欠けるな。きちんと内臓やら何やらが一度露出した方が見映えがしそうだが…

 ともあれ、男が居た場所には血溜まりがあるのみとなった。そして…


「あ…あぁ…」


 血溜まりから手が伸びる。赤黒い手だ。助けを求めるように。地面を掴む。手が力を込めると、血溜まりから体が引き摺り出される。ズルズルと。

 胸までが血溜まりから出た。まだ体が安定していないようで、その体からは時折飛沫が舞う。今もそう。下半身を出すため、なるだけ遠い地面を掴もうと言うのだろう。腕を振る。前へ。飛沫が飛ぶ。少女の体へ。

 おやおや、少女は気絶しているらしい。何の反応もしない。ここからがショーとして面白い所なのに。


 さぁ、もう一度遊ぼうじゃないか。


「ぐっ…ぐあぁああ!!!」


 ニンゲンとして遊べるかは君次第だが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る