そして舞台の幕が上がる

日常は呆気なく



―――今回は君が普段遊んでいるモノに近づけてみた。よくできたものだと自画自賛しているよ。遊んでみて感想を聞かせてくれたまえ。

 あぁ、ご褒美が貰えるかは君達次第だ―――




 夜の街を青年が一人練り歩く。月明かりの中。ふむ、中々どうして様になる。写真機がここにあれば1枚残しておきたい程だ。彼は嫌がるだろうが。



「おい、マスター。今日は俺一人なのかよ。」



 ふむ、何時もの通りであれば、そろそろ合流するはずだからな。気にもなるか。

 青年の前に黒い灰を動かす。街灯の明かるさも程々だが、まぁ見えないことは無いだろう。



「ちっ、今日はニ人なのかよ…」



 思惑通りこちらの意図が伝わったようで何より。そろそろ青年にも行先を伝えねば。先行させている灰を動かす。



「あん?今日はいつもの館じゃねーのか?」



 今日は野外である。この為に特設会場を準備したのだ。わざわざ野山から木材を切り出し、基礎工事から棟上げ、ニス塗りなど。手間暇をかけた逸品なのだ。是非とも楽しんで貰いたい。

 我は先行させている灰とは別に、新たな灰を動かした。青年の手元に集めるように。



「!…なんだ、これ…地図?…っておい…おいおいおい!まさかこれって…!」



 気付いたようで何より。青年が鈍くないようで助かる。気づいてもらえねば、さぷらいず、とやらにはならぬのでな。

 そろそろ会場に到着だ。ふむ。こちらからの見栄えも大変結構。



「いつもやるFPSゲームの残敵掃討マップじゃねーか!!!」



 良き反応である。




 

 

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