第10話 衝撃、再び

 食事もスキンケアも済ませ、さあ後は寝るだけだという状態で花蓮はベッドにもぐり込んだ。

 あれから三人で必死に終わらせた甲斐もあり、花蓮は無事に配信時間に間に合うことができた。家に着いてすぐに美茜からメッセージが入っていて、どうやら彼女も配信準備をする時間はたっぷり取れたらしかった。


「あ~、間に合ってまじでよかった……」


 見慣れたアプリを開いて、配信を開く。

 夜空色の髪がふわりと揺れて、金色の瞳がぱちりと瞬く。可愛らしい少女は、楽し気に瞳を細めて言葉を発した。


『はぁい、こんばんはお前ら。今日どうだった?』

〈こんばんは!〉〈わこシュリです!〉〈頑張ったよ~〉

『ん、こんばんは~。頑張った? おー、えらいじゃん』


 コメントのそのひとつひとつに目を通して朱璃は話を進めていく。


『そうそう、今日コラボじゃん? 皆いろいろ予想してたみたいだけど、どう? 相手誰だかわかった?』

「わかんなかったなぁ」


 発表されてかた隙間時間にちょこちょこ調べていたが、結局これといった答えは出なかった。コメント欄も数名の配信者の名前が挙がったが、朱璃の反応を見るにあまり芳しくないようだ。


『んー、ざぁんねん、外れ。ま、配信系統も違うしね、仕方ないか』

〈雑談系じゃないってこと?〉〈誰だろ……〉〈難問すぎる〉

『あんま焦らしてもしょうがないしね、入ってきていいよ』


 ざわざわするコメントに軽く笑って、朱璃がそう許可を出す。すぐに入ってきた声の主に、コメント欄で悲鳴が響いた。

『あ、お邪魔しまぁす。ふふ、イラストレーター兼Vtuberの水絵睡蓮です』

〈睡蓮さん⁉〉〈うわぁまじか〉〈人脈広!〉〈本物だぁ……〉

『おー、大反響じゃん』

『いや本当に……嬉しい限りで』


 高速で流れるコメントに楽し気に目を通す二人。SNSでも物凄い勢いで拡散され続けている。

 しかし私はといえば、そんなリスナーの波に乗ることもできず茫然としていた。

 聞き覚えのありすぎる声、再び。

 脳裏に思い浮かぶ、頼もしすぎる同僚の笑顔。


「水無瀬くんんんん⁉」





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