第14話[生きていた証明]

〜現在地:アジト・医務室〜

〜零夜視点〜


魅零を医務室に連れて行きベッドで寝かせる

直ぐに寝息を立て寝付く姿に俺と白夜は安堵し、すぐ側にあったソファに腰を下ろす

だが、焦りにより出た汗は止まらず、俺の額から離れずにいた


白夜「……魅零さん、どうしたんですかね」


白夜がベッドで寝ている魅零を見ながら、独り言を呟くように言う


零夜「……分かんねぇ」

白夜「……虎狼潜入の、ストレスとか……かもしれませんね」


虎狼のストレス……確かに、彼女どころか、零夜組存続に関わる重大任務だ、彼女にのしかかる負荷は、計り知れないだろう

俺はソファから立ち上がり、魅零が寝ているベッドへ向かい、そのまま頭を撫でる

寝息をスースーと立てているだけで、返事は無い、深い眠りについているようだ

撫でている手を離し、魅零の手を握りしめ屈み、寝ている魅零に話しかける


零夜「ありがとな、魅零」


零夜「お前の虎狼に行くって一言、俺、それで救われたんだよ」


零夜「怖いはずなのに、よく勇気出して、言ってくれたな」


零夜「無理、しないでくれよ」


零夜「おやすみ、また話そうな」


俺は魅零の手を離す


???「……どうされたんですか?」


すると、後ろから声が聞こえ、俺と白夜は後ろを振り返る、そこに居たのは、零夜組医療班の天華てんかが、そこに立っていた


零夜「あぁ、天華……今深夜3時だぞ?いつもならみこと達と寝ている時間じゃなかったか?」

天華「いえ……医務室や廊下から、どうも物音がして、起きてしまって……」


どうやら俺達がドタバタしたせいで起こしてしまったようだ、そのことに対し少し申し訳なさを感じ、それでも今さっきあった出来事を天華に事細かに話す、魅零の発狂、そのまま意識を失い、白夜と共に医務室に連れてきたことを話すと、天華は頷きながら俺の話を静かに聞く


零夜「……まぁ、そんな感じ」

天華「……なるほど」


俺の話が一区切り着くと、天華は閉じていた目を開け、魅零の傍に近寄っていく


天華「……多分、PTSD……ですね……」

零夜「……PTSD」

白夜「それって……確か……トラウマと似通ったヤツ……ですよね?」


天華から発せられた言葉は、過去のトラウマから発現する、PTSDと言う病名だった


……魅零の過去には、まだ不明点が多い

俺が分かっていることとすれば、それは、



───唯一のが、臓器売買により




──




唯一の心の支えが両親に奪われ

そのまま裸足で逃げ出した


秘密裏に姉と撮った写真とペンダントだけが

魅零の姉が生きていた証明品となった


天華「……取り敢えず、少し、様子見してみましょう」


天華が魅零の布団を掛け直し、俺達にそう告げる、俺達はそれに頷く事しか出来ず、静かに首を縦に振った


時間も遅いという事で今日は解散、と言う事になり、俺と白夜は医務室の扉を開け、そのまま自室へ向かうため別れた


消灯された廊下を渡り、コツンコツンと革靴の音を奏でていく

窓からは月明かりが差し込み、俺は窓を見た瞬間に手で月明かりを遮る

すると、前の方からコツ、コツと言う靴の音が聞こえ、俺は前を見る


???「あ〜……零っち……」

零夜「おぉ、みお


そこに居たのは、零夜組一般構成員の澪だった、可愛らしいパジャマと眠そうな目、そして若干跳ねている金髪、多分、睡眠から起きたんだろう


零夜「どうした、起きたのか?」


澪はコクンと頷く


零夜「なるほど、それで寝れなくて、少し探検してたって感じか?」

澪「零っち当たり〜」


澪はケラケラと笑いながら言う

俺はそんな澪を見て、少し口角が上がる

そんな俺を見て澪はニヤニヤしながら、「あ〜零っち笑った♪」と耳元で囁いてくる

バッと手を耳に当てると、澪は更に「あはは〜♪」と笑う

笑っている澪に向かい、俺は「早く寝ろよ」と言うと、澪は「はーい」と声をあげる


俺はそのまま横を通り過ぎようと、澪の横を通る


だが、澪に手を掴まれ、混乱する暇もなく、そのまま「おやすみ、零夜」 と、囁かれた


俺は突然の事でキョドりながら「ッあ、う…あぁ、おやすみ……」と言う事しか出来ずにいると、満足気な顔をしながら俺の手を離し、「またね〜零っち!」と言い去っていった


零夜「なんだったんだ……」


そう思ったが、深く考えるとまためんどいなと思い、その事をあまり考えず執務室へと向かった


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


執務室へ着き、部屋の電気を点灯する

書類が無くなった机に、いつもと変わらない家具が俺の部屋に鎮座する

ベッドへ向かい、そのまま勢い良くダイブ

ドンッと疲れによってか、頭を殴られるような疲労感が俺を侵していく

俺はその疲労に抗う暇もなく、そのまま思考を落とした


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

〜現在地:アジト・医務室〜

〜天華視点〜


魅零さんの容態は変わらず、寝息を立て寝ている

私はベッドのすぐ横で魅零さんの顔を見つめ

続け、少しウトウトしてくる

魅零さんの容態は心配だが、寝ないと最高のパフォーマンスは出せない

だけど、今離れて、何か魅零さんに異変が起きたら、それは感じを怠った私の責任だ

いや、正確には、そんな責任は無い

だけど、やっぱり、怖いから



──人が死んでいくのは



命「大丈夫か、天華」


すると、医務室の扉の方から声が聞こえる

女性の割に低い声が特徴的で、直ぐに誰か把握した


天華「命さん、起こしちゃいましたか?」

命「いや、いつもこのくらいに起きる」

天華「そうでしたか」


私と言葉を交わしながらも命さんは、魅零さんのベッドを少し見つめ、そのままそのベッドへ近づいて行く


命「……魅零?何があった?」


命さんが少し困惑したような声で、私に問いかける、私は零夜さんから聞いた情報を命さんに話し、命さんはそれに頷く


命「……なるほど」

天華「やっぱり……過去が……」

命「そうだな……」


命さんは顎に手を添え考える素振りを見せる


命「これに関しては、外部から何か施して回復に至るのは難しい」


命「……魅零自身が、その過去の呪いを打ち砕くしか、有効打はない」


私は命さんの言葉を静かに聞き頷く


命「今日はもう遅い、もう寝な……と、言いたいが、もう4時だ、今寝ても生活習慣が壊れてしまう可能性もある」

天華「隙間時間で昼寝させて貰います、お気遣いありがとうございます」


そう言うと命さんは、「ここは天華に任せる、何かあったら呼んでくれ」と言い、医務室から出ていった


私は命さんにお辞儀をし、また魅零さんの

ベッドの横の椅子に座る


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

〜現在地:アジト・執務室〜

〜零夜視点〜


零夜「ぅ〜……ん」


脳が覚め、うーんと声を上げ上半身を起こす

ボサボサの寝癖を治す為、洗面所へ向かう

その途中、2階にある医務室へ寄り道をし、魅零の容態を確認しに行く


零夜「起きてるかな〜」


未だ起きてない脳を起こそうとしながら

2階へ向かい、医務室を目視すると、扉を3回ノックしドアを開ける


零夜「おーい、来たz……」









──「れ、零夜さん!」


ベッドの方から、声が聞こえる

俺の脳は一気に起き、俺の口角がグッと上がり、その声に呼応するように叫ぶ


零夜「魅零!!」


ベッドには、上半身を起こしている魅零が俺に微笑みながらそこに居た

その横には、ベッドにうつ伏せになりながら

寝ている天華が居た

魅零は天華の紺色の髪を撫でながら、俺に

「す、すいません……ご迷惑を……」と申し訳なさそうに言う


零夜「いやいや、大丈夫大丈夫、お前が無事そうで良かった」

魅零「えへへ……ありがとうございます…」


笑顔で笑っている魅零を見て、俺も微笑む


……だけど、やっぱり



魅零に対してのが、募っていく



俺は魅零に向かい、呟くように言う


零夜「……なぁ、魅零」

魅零「は、はい?なんですか?」






───今回の作戦から、降りるか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る