第15話[嫌です]

〜現在地:アジト・医務室〜

〜零夜視点〜


───今回の作戦から、降りるか?


魅零の容態を心配し、魅零に向かい言う

当の本人の魅零は、俺の言葉を聞くと、苦虫を噛み潰したような顔をしながら、困惑の声色で俺に縋り付くように言う


魅零「ぇ……な、なんで……?」

魅零「い、嫌です……!!!」


零夜「……」


魅零は今にも泣きそうな声で言う

でも、容態が心配だ、これ以上悪化したらパフォーマンスが落ちて、100%の力を発揮出来ない

俺は降りた方がいい旨と魅零の容態が心配なんだと言う事を伝えようと思い、口を開こうとする




命「やらせてやれ」



だが、俺が発言しようとするその瞬間、いつの間にか医務室に居た命が、魅零を作戦に参加させてやれという旨の言葉を発した

俺は困惑する、「でも、容態が悪化したらどうするんだ?」と命に言う、だが命は「魅零を信じてやれ」とだけ、俺に諭すように言う


零夜「……でも」

魅零「……零夜さん」


すると、ギュッと俺の手を魅零が掴む

俺は驚いて魅零の方を勢い良く見ると、魅零の目には、俺に懇願するような目をしており、「やらせて下さい……」と訴えてくる


そんな魅零を見て、これ以上の否定は可哀想だと思考し、魅零の頭に手をやり、「……分かったよ、でも、無理しないでくれ」と言うすると魅零は、一気に笑顔になり「うん!」と一言


そんな魅零の笑顔に俺は少しドキッとするが

直ぐに顔を背けたので、その照れは見られずに済む


幻響「あ〜零夜、ここに居たのか〜」


すると医務室の扉からひょこっと顔を出し

俺を目視する幻響が、俺に向かい、俺を探していたと言うような発言をする

俺は「ん?どうした?」と幻響に言うと

幻響はスマホを手に取り、「面白いことになったよ♪」と言う


面白い事……?俺はスマホを懐から出し

レイテルを開く








そこには、萃の『虎狼、発見完了』と言う文字が送信されていた


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


俺は魅零達に別れを告げ、急いで萃の自室へ

向かって行き、萃の部屋のドアを勢い良く開ける


零夜「萃!あれはホンt……」

萃「ホントだよ」


パソコンはカタカタと打ちながら、俺の問いに答える、エンターキーをカチッと押すと、そのまま回転椅子を俺の方へ向け、俺にどういう事なのかを説明する


萃「まず、虎狼発見に至ったのは、レイテルのこれ」


そう言うと萃はスマホでレイテルを開き

俺にそれを見せつける


そこには白月の添付写真"21-84"と言う車のナンバーがあった


萃はスマホを引っ込め、パソコンをカタカタと弄ると、次は俺に向かいこっちに来いとジェスチャーをする、俺はそれに従い萃の側へ行くと、頬っぺを手で掴まれ、パソコンの方に視線を移される


そこには、ごちゃごちゃとしたパソコン画面があり、俺は「???」となった

萃はそんな俺を気にも止めず話す


萃「解析結果、あの車、たまにここの廃ビルに来ているらしい」

萃「それで、数分経つと、その車は後部座席に居た男を廃ビルの中へと連れ出し、その後車は走り去った……で、その後の車の動向を追ったの」


萃は淡々と続けて言い、俺にとある映像を見せる


萃「これ、分かる?」


そこに映し出されていたのは、さっきのビルとは違う、他の廃ビルの中に入っていく車の監視カメラの映像だった


零夜「えぇ……?良く追えたな……?」

萃「でしょ、まぁ、リアルタイムで色々とハッキングして車の動向を追えるようにGPSアプリを仕込んだって訳」


俺には一生理解が出来ない領域だ……

そう思いながらも、萃の話を聞く


萃「それで、私は仮説を立てた」

萃「男達が連れ出された所は、のビル、そして、車が常駐している所は、ってね」

零夜「なんで拷問専用のビルと本部を別にする必要があるんだ?」

萃「拷問専用ビルは、血腥ちなまぐさい匂いでいつかバレるかもしれないでしょ」

零夜「なぁるほど」

零夜「でも廃ビルに本部建てるかぁ?」

萃「そう、だから、この2つの廃ビルにはがあると思うよ」

零夜「地下ぁ?」

萃「この2つのビル、どっちもエレベーターが作動している、しかもそのエレベーターの前には、2人の黒服が見張っている」

零夜「……じゃあ、それがホントなら」


萃と俺は顔を見合せる


萃「ナンバー21-84が常駐している方の廃ビルの地下には、何重にもある階層があって、そこが……」


零夜「……………」


萃はニヤリと笑う


萃「良かったね、ホントに虎狼本部を1週間以内に見つけられたよ」

零夜「あぁ……!」


俺は萃の頭に手を置き、クシャクシャになるくらい髪を撫でる


零夜「ありがとう!!!」

萃「あーもう!直ぐ撫でるのやめて!!!」


俺と萃の声が混ざり合いながら、部屋の中を反響する


そして、俺はレイテルを開き、メッセージを打つ




『虎狼本部を見つける事に成功した』









『4日後、作戦実行に移す』




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

〜現在地:アジト・医務室〜

〜命視点〜


私は魅零の体調を確認する為、医務室を訪れていた、天華が寝ていたが、私が声をかけた瞬間起き上がり「すすすすすすいませんんんんんん!!!」と言いながら何処か行ってしまった

なんだったんだ……と思いながらも、魅零の方へ顔を向け、魅零に体調は大丈夫かと聞く


命「体調はどうだい」

魅零「あ、はい、だ、だいぶ回復して……」


キョドりながらも私に向かい大丈夫と言う旨を必死に伝える魅零に対し、私は「そうか」と声を出す


命「……魅零、聞きたいんだが」

魅零「ぁ、は、はい?」


魅零は、私の問いかけに返事をし、私はそのまま言葉を紡ぐ


命「……怖いか?虎狼が」


私の問いは、虎狼が怖いか否かと言うのだ

どういう反応を示すか

怖いと言うだろうか

それとも、自信に満ち溢れた事を言うだろうか


魅零「……怖いですよ、とても」


魅零の回答は、「怖い」だった

それもそうだろう、虎狼の残虐性は計り知れない、捕まったら何をしてくるか……


魅零「でも」


終わったと思った魅零の発言がまだ続いており、魅零はそのまま声を絞り出すように言う


魅零「でも……誰かがやらなきゃ行けないんです」


魅零「誰かが、やらないと行けない」


魅零「それが、私ってだけで」


そう言い、眉をひそめた笑顔を絞り出す

私はそんな魅零を見て、思わず「強いな」といつもより1トーン下げた声で言う


魅零「いえ……強くなんか」


命「強いさ、とてもね」


魅零「……そうですかね」


命「あぁ、魅零は強い」


俯く魅零に向かい言う

そんな私の言葉に魅零は、「ありがとうございます」と、貼り付けたような笑顔で返事をする


そうしていると、レイテルから通知が届く


それは零夜のモノであり、内容は






『4日後、作戦実行に移す』と言うのだった


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

〜現在地:アジト・屋上〜

〜忘霓視点〜


幻響「いやぁ驚いたよね、まさかホントに1週間以内に探し当てるなんてさ」

忘霓「あぁ、驚いた」


朝の屋上、幻響と共に煙草をふかす

……まさか本当に虎狼の本部を探し当てるとは、やっぱりここは運を持っているな


幻響「どう?」


零夜組の運の良さに感服していると、幻響が俺に向かい何か聞いてくる


忘霓「?、どうって何がだ?」

幻響「ビビってるか?ってことだよ」


それは、俺が潜入にビビっているのか

と言う問いだった

俺は質問の意図を理解すると、フッと鼻を鳴らし、幻響に向かいその問いに応える


忘霓「愚問だな」


タバコを灰皿へと擦り付け、空を見上げる


忘霓「誰かがやらなきゃ行けないんだ、それが俺ってだけで、そして、過去の俺がそういう決断をしたんだ、その期待に応える為にも、ビビる訳には行かねぇよ」


俺がそう応えると、幻響は満足気に

「カッコイ〜」と茶化すように言う


???「あ、探しましたよお二人さん!」


すると、後ろからキーと言う扉が開く音が聞こえ、俺と幻響は後ろを振り向く


忘霓「あぁ、遊月ゆうげつ

遊月「はい!遊月です!」


そこには、零夜組の広報員、遊月が居た

遊月が言うには、俺たちを探していたと言うらしいが、何故俺たちを?

そう思っていると、それを察したのか遊月は

「潜入まであと4日後!どういう心意気で挑みますか!!」と言う質問だった

唐突な質問に驚いたが、すぐに幻響は笑い

「楽しみだよ、どんな敵に出会えるかね?」

とおちゃらけながら言う、そして遊月は「ふむふむ」と頷き、今度は俺に視線を移す

俺も何か言え、と言う圧を感じ、俺はそれに乗ることにして咳払いをする

そして遊月に向かい「相手は中々手強い、だが、それで俺が引く理由にはならない、必ず成功させてみせる」と応えると、幻響が「忘霓君やっぱりカッコイ〜」と俺に耳打ちする


遊月は俺と幻響の言葉を聞くと、紙にメモをし、そして「ありがとうございました!」と頭を下げ扉をばたんと閉める


幻響「ホント嵐みたいな子だね」

忘霓「ここの大半がそうだろ」

幻響「ッはは、そうだった」


静まり返った屋上の中、俺はまたタバコを持ち、火をつけ、そのまま幻響と雑談へ洒落込んだ

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