第9話[お仕事]
〜現在地・アジト〜
〜零夜視点〜
仄にこっぴどく説教されたが、五体満足で帰って来れたので結果オーライだろう
スマホを開き時計を見ると、午後3時と示されている
俺はこれから大変になるだろうなぁと思いながら屋上へ向かう階段を階段を上る
煙草は吸えないので、ただ屋上で風を感じるだけだ
そんなことを考えていると、目の前にドアが見え、ドアノブに手をかけ扉を開く
???「……あ、零夜」
どうやら先客が居たようだ
零夜「
魁、零夜組の幹部であり、体術を巧みに使う
近接特化の戦闘員だ
俺は近くのベンチに腰をかけ、鉄柵に腕を置いている魁に喋りかける
魁「今日の仕事についてだ」
零夜「……仕事、あ、そっか」
零夜「お前あれか、キャバとホストの経営に携わってるんだよな」
魁「そう、その仕事について、レイテルで話してるって訳」
魁は月水金日にキャバ、火木土にはホストの店舗に直接行き、そこの見守りをしている
まぁ、ボディーガードってヤツだ、店員が危ない目に合いそうになったら店員を奥に連れていき、その対処をする
零夜「今日は何時からなんだ?」
魁「8時からだ、まだたっぷり時間はある 」
零夜「大変だな〜ホント」
魁「仕方ない、俺はこれが仕事だから」
零夜「スゲェなぁ……」
その後魁と軽く雑談をした後
俺は執務室へと帰ることにした
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〜現在地:アジト〜
〜魁視点〜
屋上でダラダラと過ごしている内に7時になってしまった、始業時間は8時、今から仕事場に向かわないと行けない、屋上のドアを開け、自室で仕事場へ向かう準備をする
スーツを正し、ネクタイを結び、自室を出る
アジトの玄関を開け、車を停めている駐車場へ向かう
流星街の喧騒の音が増していく
ザワザワと様々な人の声が混じり、喧騒音は増幅していく
駐車場に着き、俺の車を目視すると俺はそれに近づき車のロックを解除する
ドアを開け、運転席に座るとエンジンをかけ
アクセルを踏んだ
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車を動かし数分経つと、目的地に着く
俺が経営に携わっているキャバクラ
その名も[マーメイド パレス]
人魚のように美しく舞う女性達の宮殿と言う意味で名付けられた
まぁ、その人魚を喰らおうとする獣もわんさか居るがな、その対処に俺が居るんだが
マーメイド パレスの裏のドアをノックし開けると、そこにはキャバ嬢達が準備をしていた
魁「今日も無理のないように頼む」
キャバ嬢「はい、よろしくお願いしす!」
元気よく俺にお辞儀をする姿に、俺は微笑み「今日も見守り頑張るか」と心の中で意気込んだ
スマホを取り出し時間を見ると、7時55分と出ていた、始業時間まであと5分後
俺は限られた時間の中で皆の動向を知る為に
見ていなかったレイテルを開く
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零夜『皆どう?見つけられそう?』
天斗『特にそれらしい建物は無い……』
秋月『そうそう、特になんもねぇ〜』
凛音『こっちも無い……』
零夜『まぁ、一日目だ、1週間以内に見つけられればいい、しっかり体を休めて、また明日に備えるのも手だ』
翠郎『白兎の薬割れないの残念だな〜』
白兎『こっちは安心の一言だわ』
翠郎『帰ったら沢山割ってやるからさ☆』
白兎『爆死しろクソが』
零夜『仲良いなぁお前ら、まぁ、皆今日はゆっくり休め』
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特に進展が無いらしく、今日は皆休むらしい
まぁ、まだ一日も経ってないんだし、見つけるのも困難だろう、そう思っていると、時間は8時になった、俺はスマホを閉じ、キャバ嬢の皆を送り出す
そして、美しく舞う人魚達のショーが始まる
カランカランと言うドアが開く音が聞こえ、色々な年齢の人が来店する、仕事終わりのサラリーマンやキャバに始めてきたであろう青年や、様々な年齢層の男性が来ている
俺はキャバ嬢の皆が見える位置に待機し
客が不審な動きをしていないか注意深く見る
だが、今来ているのは殆ど常連さん
良い態度でキャバ嬢に接し、色々なお酒を頼んでくれる、キャバ嬢の皆も楽しそうに話しているもんだから、俺も笑顔になる
40分程経ち、マーメイド パレスの盛り上がりは最高潮に達する
だが、そんな空間に水を差すように
3人のチンピラが、来店する
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頬杖を付き、ダラーっとお客さん達を見る
するとドアから来店時に鳴るカランカランと言う音が聞こえ、俺はそこに目を移す
チンピラA「おw可愛い子沢山いるじゃ〜んwww」
来店してきたのは、いかにも柄が悪そうなチンピラ少年達だった
俺はグッと警戒度を上げ、少年たちを注意深く見る
キャバ嬢も顔が引き
チンピラB「え〜誰にしよっかなぁ〜w」
チンピラC「この子可愛くない?www」
チンピラA「お、じゃあこの子にしよ!w」
そして、1人のキャバ嬢が指名され、キャバ嬢は言われるがまま席に着く
俺はすぐ動けるように体勢を整える
チンピラA「え〜じゃあどうしよっかなぁ〜www」
チンピラB「コレ頼む……?www」
チンピラA「え?!wwwマジ?www」
何やらチンピラ達がギャーギャーと騒いでいる、少し声の音量を下げてもらおうと思い歩き出すと同時に、チンピラ達から注文が入る
チンピラC「キャバ嬢ちゃんに良いところ見せてやろうぜ?wwww」
チンピラA「……しゃーねぇなぁ〜!!w」
チンピラA「じゃあ……」
チンピラA「ルイ・ロデレール クリスタル、3本!!!www」
チンピラから聞こえた言葉は、それは俺に衝撃を与えるようなものだった
魁(ルイ・ロデレール クリスタル!?1本16万する代物だぞ!それを3本……しかもあんな若いのが……!?)
俺は目をかっぴらき狼狽える
そして店員が奥の方からルイ・ロデレール クリスタルを3本持って行き、机の上の置く
魁(……ルイ・ロデレール クリスタルを頼むのは、財力のある中年男性、だけど、あんなまだ金を持ってるとは思えない少年達がそんな高価なモン頼めるか……?)
疑問が疑問を呼ぶ、バイトで稼いだのか…?
と思い、強引にそう結論づける
キャバ嬢の顔がさらに引き攣るが、それでも表面上の笑顔を崩さず相手を褒める
キャバ嬢「す、すご〜い!そ、そんなの頼めるんですね!」
チンピラA「スゲェだろぉ?w」
チンピラB「金はたんまりあるからな〜w」
チンピラは「金なら沢山ある」と豪語する
バイトを必死にして貯めたのか……?と思うが、どこか引っかかる
そして、チンピラはキャバ嬢に顔をちかづける
チンピラA「なぁ、姉ちゃん、俺達とこんな所から出ない?」
キャバ嬢「っえ……?」
チンピラB「こんな所で話してるのもなんだからさぁ、もっと別のところで飲もうよ」
キャバ嬢「っあ、いや……それは……」
チンピラC「あ?なに?断るの?」
キャバ嬢「っやめてください!!」
チンピラA「良いから来いよ!」
チンピラは、キャバ嬢の腕を強引に掴もうとする
魁「お客さん、ウチ、そういうのやってないんで」
だが、その手はキャバ嬢の腕を掴むことは出来なかった
俺は逆にチンピラの腕を掴み、それを制止し、キャバ嬢を俺の後ろへと隠す
チンピラC「あ?なんだテメェ」
チンピラB「いい所なんだから邪魔すんなよ」
チンピラ達は威嚇しながら立ち上がるが、俺はそんなモノには動じず言葉を続ける
魁「ウチの嬢が困っていますので、そういうのは辞めてもらいたい、そういうサービスを求めているのなら、他の店をオススメします」
淡々と言葉を紡ぐ
チンピラB「……チッ、折角いい所だったのに、興醒めだわ」
チンピラA「おい、お前」
チンピラは俺の胸倉を掴む
魁「なんですか?」
チンピラA「裏来い、誰に喧嘩売ったか教えてやる」
魁「……はぁ、わかりました」
魁「ですが胸倉を掴まないで下さい、スーツが乱れますので」
チンピラA「うっせぇよ、早く来い」
そう言われると、胸倉を掴まれ強引に店の外に連れていかれる
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連れてこられたのは、店から少し離れた裏路地だった、俺は胸倉を離されると同時に突き飛ばされる
チンピラC「誰に喧嘩売ってんだァ!?」
チンピラB「身体で教えこんでやるよ、後悔しても遅いからな」
チンピラは唾を飛ばしながら俺に向かい遠吠えのように叫ぶが、俺は平静に言う
魁「辞めてください、落ち着いて話しましょう」
チンピラA「はぁ〜…ムカつくわ、お前ここでボコボコにしてやる」
魁「……分かりました、じゃあ………」
俺はネクタイを緩め、スーツを脱ぐ
魁「今の俺はキャバのボディーガードでは無く、1人の男としてお前らと殺り合う」
吐き捨てるようにチンピラに向かい言うと
チンピラA「死ねぇぇぇぇ!!!!」
チンピラは威勢だけは良く叫び、俺に向かい拳を振り下ろす
だが、相手は素人、丸わかりのそれをするりとかわしチンピラの握り拳を掴み腹に膝蹴りを入れる
チンピラ「ッグファッ!!!!」
チンピラは情けない声と唾を吐き出し、腹を抱え後ろに下がる
チンピラA「……ッハァ……お、お前ら…!ボケっとすんな!!!一斉にやれ!!!」
チンピラが他の2人に言うと、2人のチンピラもこちらに走り出し俺に向かい拳を作り振り下ろすが、いとも容易くそれをかわし2人のチンピラの顔面を掴み地面に叩き付ける
アスファルトと頭蓋骨が接触する音が鈍く聞こえ、片方は意識を保っているが、もう片方のチンピラは意識を失ってしまったようだ
チンピラA「ッ隙ありィ!!!」
すると、さっきのチンピラがナイフを構え、それを俺の屈んで見えている背中に刺そうとしてくる、だが、俺は2人のチンピラの頭部から手を離し、一瞬にしてナイフを持ったチンピラに詰める
チンピラ「ッはy……」
俺の拳がチンピラの腹部にヒットし、チンピラは唾を吐くが、俺の猛攻は終わらずそのまま顔面を掴み、横へ投げ飛ばす
チンピラは建物の壁に激突し血反吐を吐き、力無くそのまま座り込み意識を失う
チンピラB「……ッハァ……ッハァ…」
後ろから荒い息遣いが聞こえる
チンピラB「死ねぇ……!!!!!」
弱々しいチンピラの声が聞こえる
俺は反射的にしゃがみ後ろを振り向くと同時にチンピラの足を薙ぎ払う
チンピラは体勢を崩し倒れ、俺はそのまま直ぐに立ち上がりチンピラの顔面を踏み付けると、勢い良く踏み付けたせいか、チンピラの歯が勢い良く抜け、歯が宙に舞い、その後小さくコロッと落ちた音がアスファルトを伝う
一通り片付いた事を確認し、俺は壁に寄りかかって気絶しているチンピラの髪の毛を乱雑に掴むと
魁「テメェらみてぇのが踏み荒らしていい所じゃねぇんだよ、帰ってママに哺乳瓶でも飲ませてもらえ」
チンピラに向かい静かに呟き、髪の毛から手を離し、その場を後にした
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数分歩き店に入ると先程のキャバ嬢から「大丈夫でしたか!?」と聞かれ「あぁ、何ともないよ」と答えると、キャバ嬢は後ろめたそうに「すいません……私のせいで……」と呟く
魁「何言ってんだ、悪いのはアイツらだ、お前は何も悪くないよ 」
キャバ嬢に向かいそう言うと、嬉しそうに「ありがとうございます」と答えられ、続くようにキャバは「じゃあ、改めて行ってきます」と一言、俺はそれを見送るように「行ってらっしゃい」と手を振る
その後は特に何事もなく、キャバ嬢とお客さん達の会話が繰り広げられる
頬杖をつき、さっき被害にあったキャバ嬢に目をやると、楽しそうにお客さん達と話しており、俺は安心し一息つく
そしてそのまま終業時間を迎える
終業すると、キャバ嬢の皆は次々と退店していき、俺も帰宅の準備を始める
キャバ嬢「あの……改めてありがとうございました」
と、その時、チンピラに絡まれていた嬢に話しかけられる
魁「あぁ、大丈夫だ、俺もすまなかったな、もっと早く動けばよかった」
キャバ嬢「あ、いえ!悪いのは相手なので!」
魁「そう言って貰えると助かる、今から帰るのか?」
キャバ嬢「あ、はい……ですけど、あの人達に絡まれんじゃないかと怖くて……」
下を向きながら怯えた声で俺に訴える
魁「じゃあ、乗ってくか?」
そんな嬢を見て可哀想に思い、送っていく事を提案する
キャバ嬢「え、いいんですか?」
嬢は意外にもそれに食いつき、俺もそれを許諾する
魁「あぁ、1人で帰るの怖いだろうし」
キャバ嬢「……じゃあ、お言葉に甘えて」
魁「了解」
そうして店から退店すると、俺と嬢は帰路を共にし、車を停めてある駐車場に着き、車のロックを解除し乗り込みアクセルを踏む
魁(帰って早く寝よ……)
疲れと眠気に襲われながら、嬢に指示された家へと車を走らせた
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