第3話[屋上を照らす月]

〜現在地︰アジト〜

〜零夜視点〜


零夜「くぅ〜……終わったぁぁ……」


疲れにより生じる掠れと腑抜けを併せ持った声を発しながら、机にペンをカランと落とす

カチッ、カチッと鳴っている時計を見ると、短針がもう3の所を指しており、皆仕事終わってる頃かなと想像する


椅子の上で軽い背伸びをした後、席から立ち上がり、そのまま執務室のドアへと向かい、きぃーっとした音を立てながら開ける

執務室前の長い廊下に出ると、俺はそのまま屋上へと向かう階段がある所に向かって行く


コツンコツンと革靴特有の音を立て、執務の疲れにより少し体勢が猫背になる

欠伸あくびも止まらず、少し屋上で涼んだら直ぐ寝よう、そう思いながら進んでいく


数分程歩いていると、消灯された廊下のせいで上手く姿が見えないが、こちらに向かい歩いてくる人影が見えてくる、そして、ソイツは俺に向かい声をかけてくる


???「零夜か」

零夜「なんだお前か、よっす、叶翔」


人影の正体は、零夜組一般構成員の空也くうや 叶翔かなとだった

来た方向から察するに、多分叶翔も屋上に

行っていたのだろう


零夜「というか寝てなかったのかお前」

叶翔「あぁ、少し屋上に出ていた、もう帰る所だ」

零夜「そっか、俺も今から屋上行こうと思ってるんだよ、なんだよ〜屋上居たんだったら俺の話に付き合ってくれよ〜」


どうせ屋上居たなら話に付き合って欲しいと言う、酔っ払ったダル絡みするおっさんみたいな願いを言うと、叶翔は表情を変えず「良いぞ」と返事をし、俺は少し驚く


零夜「あ、良いんだ」

叶翔「どうせ寝るだけだ、だったらもう少し話に付き合うのも良いだろう」

零夜「マジか、サンキュ、んじゃ行くか」

叶翔「あぁ」


叶翔は来た方向へ踵を返し、そのまま屋上の方へと歩みを変える

数分経つと屋上に繋がる階段の姿があらわになり、俺達はその階段を登っていく

数分登ると屋上のドアが目の前に現れ、ドアノブに手をかけ開けると、俺達の瞳に映ったのは、月明かりに照らされる屋上だった

俺はそのまま屋上の鉄柵に手を置き、月を眺め、叶翔は常設されている屋上の椅子に座る


零夜「フゥ〜……」

叶翔「お前が屋上に来るなんて珍しいな、いつもは書類を纏めるのにヒーヒー言ってマトモに執務室から出ていなかったのに」

零夜「今日は珍しく区切りついたんだよ、たまには俺も外出ねぇとだし……」

叶翔「書類整理もほどほどにやれよ、零夜が倒れたら、ここの司令塔が居なくなる」

零夜「へいへい」


司令塔なんて大袈裟だなぁ……

まぁ、それでも俺を信頼してくれる事に、悪い気はしない

俺と叶翔はその後も今日の出来事やら明日の予定やらの軽い会話を挟み、話の内容が尽きると、少しの間静寂が訪れる


叶翔「……こんな事聞くのも、変かもしれないが…」


そして、その静寂を破るように、叶翔が口を開く

その口はどもりながら、何か言いにくそうな感じだった


叶翔「…零夜の……あの」

叶翔「……やっぱいい」


だが、何か言いたそうにして、また口を閉じてしまった


零夜「なんだよ?」


俺は口を閉じてしまった叶翔に問いかける


叶翔「…大丈夫だ、なんでもない」


だが、叶翔が言いたくなさそうにするので、俺もその後は深く追求せず、「そっか」とだけ返した


叶翔「もう寝る、おやすみ」


叶翔は急に立ち上がりそう言う

俺は「おっけ、おやすみさん」とだけ言い叶翔を見つめる

叶翔はそのままドアを開け、そのまま屋上から出ていった

俺はまた月を見上げる

風が激しくなり、鼓膜を風の音が刺激する

ネクタイが風に飛ばされそうになる

俺も寝るか、と思い始め、鉄柵から手を離し

屋上のドアへと向かって行く


風が強くなり始める


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

屋上から出てそのまま執務室に向かう

風が頬を撫でる感覚が残り、頬を手で撫でる

早く自室へ戻って寝よう、そう思いながら

人の気配もない廊下をゆっくりゆっくり歩いていく


と、その時、前方から2人の人影を目視する


???「テメェあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」

???「ごめんね〜wwwwwwwww」


俺はその2人の喧騒音から察した……いつも研究品を割ったり割られたりして喧嘩を常日頃からしている、通称


???「あ!零にぃ聞いてよ!!!」


するとこちらに気付いたのか、白兎はくとがこちらに呼び掛ける


零夜「……またやったのか……?」


俺はジト目で2人に問いかける


白兎「そう!!!この翠郎すいろうとか言うヤツが!!!また!!!」

翠郎「違う、白兎の研究している瓶を盗んだだけだ、あと薬瓶を割ったり」

零夜「クソじゃん」

白兎「シンプルに殺すぞォ!!!!!!」

翠郎「まぁまぁ、落ち着け落ち着け」

白兎「そう言いながら私から遠ざかってんじゃねぇよクソ翠郎!!!!!!」

翠郎「やべっバレた☆」

白兎「待てやゴラあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!」

翠郎「またな〜零夜〜」


そう言うと2人は俺の横を駆けて行き、2人の姿は見えなくなって行く、嵐のように去っていった2人に対し俺は


零夜「……懲りねぇな」


と、一言呟き、また俺は執務室へと向かって行く


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

〜現在地︰???〜

〜???視点〜


煙草をふかし、椅子に腰をかける


???「……流星街」

???「零夜組……」


煙草を灰皿へ乱雑に置く


???「流星街を掌握すれば、我々の資金源はもっと潤う……そして……」


???「異分子零夜組を排除出来れば、我々の活動域も広がる」


???「何故、零夜組を?」


側近は問う


???「何故……か」


???「……我々にとって、不都合だからだ」


???「零細勢力の筈なのに流星街を掌握できている、そこから見るに、そこら辺にいるマフィアとは比べ物にならない」


???「なら、今のうちに潰すのが、得策と思ってな」


???「……なるほど、最近薬売人を送っているのも?」


???「調査……まぁ、捨て駒だが」


???「……なるほど」


俺は立ち上がり、側近の肩に手を置く


???「幹部のお前には、期待しているんだぞ」


???「……承知しております」


俺は幹部の肩から手を離し、また席に座る






???「……さぁ、零夜組」






全面戦争ゲームをしようじゃないか」

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