第52話 白くてデカい塔!

ガキの引率をして、病院へ。


大学病院だなここは。研究施設も併設されていて、拾えるものは多そうだ。


手に持てる量というか、システム的にアイテムボックスみたいな、なんかそういうものは使えるのだが、これは持てて精々1トンくらいか。機能名はインベントリだな。


もっとたくさん略奪したいので、車ごと来たのである。車の中には、ストレージボックスを置いてあるからな!


……最近知ったんだけど、俺がクラフトコマンドで作った収納器具には、見た目の何倍も物が入るみたいだ。


分かりやすく言うと、居住地のその辺の箱にきれいな水を9999個スタックできるみたいな話だな。これだけでもチートだよ。


「そんな訳なので、可能な限り略奪をします」


「「「「はい」」」」


「君らは俺が守るので、まあなんか適当に行動してて良いです。怪我するのが嫌なら、近くにいると良いんじゃない?」


「そ、そんな!わ、私も役に……」


ミラがまた、お役立ちアッピルをしてくる。媚び売りに余念がねえな!えらいえらい。


んーしかし、実際問題、俺と比べればあらゆる能力が誤差みたいなもん。


足手纏いは邪魔にならないようにしてくれよ!(キリッ!)みたいな死亡フラグではなく、ちょっとくらい変な行動して足手纏ってもらった方が、話に起伏があって面白いんじゃない?って感覚が俺にはある。


クリーチャーの出現頻度やゾンビ共の進化具合も、大したもんじゃないしな。


難易度最大にしていたら、三日目で巨人ゾンビやらドラゴンやらが街の大通りを闊歩するようになるのだが、この世界はそんなんじゃないし……。


もう数ヶ月経つが、ゾンビは精々筋肉ゾンビやランナーゾンビくらいのレベル?まだ、放電ゾンビも出ちゃいない。


クリーチャーだって見てないな。ゴブリンゾンビは沸いてたから、存在していることは確認済みだが。


理不尽難易度、ご都合悪い主義ではない、と。


色々と「リアリティ」があるっぽいのよね。いや、リアルそのものなんだが。


何にせよ……。


「俺が引率するんだから、死ぬことは万に一つもねえよ。だから、色々と習ったこととか試して、経験を積むと良いよ」


「大リーダー……!」


感動すらミラを他所に、俺は荷台から鉄棒を取り出す……。


これは、鉄の棒の先端に錘をつけた、ロングメイスといったようなものだ。


重さは30kgと軽量で、長さは2m程度。


取り回しが良く、こんな風に狭い建物の中だと重宝する。


仮に建物に引っかかっても、壁や柱ごと破壊すれば良いので、取り回しを気にしたことはないんだが。


さあさあ、とにかく行くぞ。




「鬼堂教授の回診ですよー!!!白くてデカい塔!」


『『『『ゔぉああ……!』』』』


「はい、全員ご病気!安楽死を処方しておきますねッ!!!」


パン!と、弾ける音。


最近は、メイスを振ると音の壁を突破できるようになったんだよな。


この破裂音は、音速超えの音。


30kgのメイスが、音超え、つまりは銃弾並みの速さで迫るとなると、ゾンビってか大抵の存在は耐え切れない。


『ミ"ッ』


弾けて消える。


「ご遺族の方々には『彼は英雄として死にました』と伝えておくぜ!」


俺はそう言って前に指差し謎ポーズ。ロングメイスを担いで歩き出す。


「……化け物か?」


「いやぁ、ぶっちゃけドン引きだよね」


「流石は主人殿でござりまする!天下無双でござるよ〜!!!」


賛否両論、星3.5ってところか?だが、食べ物のログだとしたら良い方だろう。問題ないな!


「……ヨシ!待合室と受付のゾンビは滅ぼしたな!後は病室にもゾンビがいるだろうが、病室には用がないので入らないとして……、こっちの薬品保管庫に向かうぞ!」


「「「「はーい」」」」


……と、その前に。


「お前らも、ゾンビを殺しておけよ〜?ステータス上がるからな!」


余ったゾンビを、女達に殺させる。


「あ、じゃあ、新しく覚えた『灼熱光線』の呪文を……」


「おバカ!病院燃えちゃうでしょ!うりうり〜!」


「ぅあぁ〜……!」


バカなことを言い始める冬芽をもみくちゃにして叱る。


頭は良いはずなのに、俺さえ良ければ良いと思っているから、行動が雑なんだよなあこいつ……。


後、頭もおかしいが、他もおかしいからな。


身の回りのことをあんまり自分で上手くできないから、介護が必要なんだよ。


最近はヘタに魔法が上手くなってきたからって、日常を捨てにきてるのよね。


例えば、『清潔化』の呪文を使ってるからと風呂に入らなかったり、『覚醒』の呪文で何日も徹夜したり……。


全体的に世の中を舐めてるというか、自活能力が地の底なの、なんとかしろよな。まあ可愛いし面白いので介護するんだが。


「えいえい……。あ、主人殿!死んでいない敵兵が居ましたので、トドメを刺しているところでござるよ!」


無子は、こちらが何も言わんでも戦うので楽。


一番の気狂いに見えるが、実際、一番役に立つし手もかからない。ゾンビウィルス適応体としての超再生能力もあるし、噛まれてもゾンビ化しないので、放任してOKなので助かる。


私生活についても、言動がイカれているだけで、実は話も聞いてくれるし、気も利くし、子供に優しいしでほんっとうに良い子なのよ。


キチガイである点以外全部◯なんだよな。


いや、二つ◯をつけられるレベルだ。ちょっぴり大人さ?


『見てなさい、ご主人様!むむむ……、えいっ!……できた!凄いでしょ?』


エレクトラは最近、小さな鉄球の周りに磁場を作り、ローレンツ力を利用した……まあ、コイルガンとかレールガンとかと言われるものを使うようになっていた。


何でも、某ビリビリ中学生の出る超能力と魔術のアニメを、俺の持っているアーカイブから見たらしく、それを真似しているようだ。


お嬢様育ちの為、アニメとかを見たことがほぼ無いらしく、能力の使い方を研ぎ澄ませていなかったらしい。


まあ、電気を自在に発生させて操る超能力とか、どんな能力バトルものでも強キャラなんだし、頑張って鍛えると良いよ。


え?対魔忍?うっ、頭が……!


……ま、まあ、馬鹿ではないから大丈夫じゃない?できもしない潜入任務をやる!とか、そんなことはしないはずだよ!


日本語も着々と覚えてるみたいだし、問題はないな!


「アタシは、身を守れる程度の実力があれば良いんだけどなあ……」


「ハッ、甘いな。この世の中じゃ、身を守れるほどの実力は、いくらあっても足りんよ」


透とミラは、表面上はある程度まとも。


でも、世間話をしながら、元々は病人だったであろう痩せたゾンビ達に銃弾を浴びせる程度には、狂っている。


うお、子供のゾンビの頭を撃ったぞあいつら。ひっでー、人の心とか無いんか?


後、透はこう見えてかなり性格が悪いな。イジメとか平気でやるタイプだぞこれ。


楽しんで暴力を振るえるタイプだ。


一方でミラは性格が悪いというか無い。利益があるかどうかで動く。


無心で暴力を振るうタイプだ。


この二人、サイコパスっていうか、どちらかと言うと下衆だな。好ましい性格だ、末長くお付き合いしたい。




……と、まあ。


全員、使えなくもない、って感じか。


いや、本当の一般通過村人は、もっと使えないもんな。


言うことを聞いて、ある程度の能力もあるとなると、それだけで貴重な人材だよ。


世の中ね、人事やら資本家やらが思うほどに、まともな人材っていないからな……。


大卒でぇ、エクセル使えてぇ、性格まともでぇ……みたいな、婚活売れ残りババアが如く注文をつけても、この世にはそんな人が多くはないのだ。


大卒の日本人って、今二割だっけ?三割だっけ?とにかくそんなもんで……、その中でパソコンをちゃんと使えるだとか、特定の資格を持ってるだとかなると、更に何割か……って話になるだろ?


30%の30%の……って、条件つけてたらそりゃもう、ね?


それを言えば、人格や精神が色々な意味で終わっていても、能力と従順さが担保されているならまあ……、良いとしよう!と、そう言う気持ちにさせられる。


第一、どうせもう人なんてそんなに生き残ってなさそうなんだから、害悪にならない限りは、特に能力のない村人でも貴重な人材カウントだな。ヤク中とかじゃなきゃ何でもOKだぜ!


この女達は全員が特質:サイコパスって感じで、他の村人とは馴染めない感じだから、俺が手ずから介護する必要があるが……、能力は高い。


上手くやっていくしかないかー……。

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