第41話 SEKAI GA OWARI

ある日突然世界が終わった。


よくわからないけど、その時に一緒にいた恋人の手を握りしめ、泣きながら逃げて避難して、気がついたら兵庫の避難センターにいた。


けど、世界の終わりから三ヶ月もすると、物資がなくなり……。


飢えて乾いて、死を覚悟した。


その時。


僕達の新しいリーダーが、いきなり現れたんだ……。


彼……、鬼堂龍弥さんは、最強にして最高の人だ!


よく分からないが特別な「力」があるらしく、食べ物や機械をたくさん持っているリーダーは、それを僕達に与えてくれた!


貴重な水で身体を清めてもらい、新しい服もくれて、毎日の食事もくれる……。


世界がこうなる前は当たり前だったそれは、今のこの世の中じゃ何よりも得難いものなんだ。


それを……、それをくれたリーダーには、僕達は、何でもしたい。恩返しをしたい!


泥水を啜り、ドブネズミや虫を食べて、たくさんのものを失ってきた僕達を、助けてくれた彼の為に!


……僕達は、彼の手引きで、永住の地を探すことになった。


それは、恩返しをしたい気持ちも当然あるけれど、リーダーについていけば食べるのに困らないという下心もあった。


と言うより、「船で北海道に移動して、山奥の農村で自給自足を目指す」というリーダーの言葉は、賛成する以外にないだろ?


当たり前だ、それは本当に理想的な話だから。


ゾンビが来ないような山奥で、みんなで畑を耕しながら生活して、自給自足をする。


首都である東京も壊滅して、総理大臣どころか天皇陛下も亡くなったんだ。外国だってもう音信不通。


となると、自分達で生きていく場所を作り、生きる為に必要な食べ物を作り、生活しなきゃならない。誰も助けてくれないんだから。


そう考えると、海を超えて北海道に行き、その山奥で安全に、食べ物を生産して暮らす!という考えは最高だった。


そう、それで……。


リーダーは、京都や大阪、兵庫付近で移民集団を募ったらしく、二百人ほどの人を集めたみたいだ。


車や人も増えて、かなりの大集団になっている。


けど、基本的には僕と同じくらいの若者ばかりで、足手纏いになるような老人はいない。


冷酷な話だけど、それは仕方ないと思う……。


現在は、目的地の神戸の手前辺りの街中に陣取り、ゾンビを掃討してとりあえずの安全地帯を作ったところだった。


と言っても、ゾンビは、デカい鉄棍棒を持ったリーダーが暴れ回って、僕達はリーダーからもらったライフルで残党を始末しただけなんだけどさ。やっぱ凄いよあの人、強過ぎる……。


その後は、リーダーがどこからか出した鉄板で、ビルとビルの間の小道を塞いで、車をバリケードになるように駐車し、その真ん中で野営を始めた。


僕は一応、この三ヶ月で銃の扱いと格闘の技術をリーダーから習って、警備兵に任命されている。


元から、高校の空手部でエースだった僕は、リーダーには特に目をかけてもらっていて、89式というライフルも与えられた。


今は、同い年の四人の部下がいて、三十人いる警備隊でもそこそこの立場だ。


そんな訳で、部下四人と、リーダーが一瞬でクラフトした見張り台の上から陣地の外側を見張っていた。


六時間ほど見張りをすると、交代の時間になった。


今日は何と、リーダーが頑張っている民にと、特別におやつを作ってくれた!


砂糖がたっぷりまぶされたドーナツだ!


久々の甘味に、感動のあまり僕は泣いてしまった。


見れば、他にも泣いている人がいる……。


やっぱり、リーダーは最高だ!


僕は、リーダーの為なら、命だって惜しくない!




次の日。


朝、僕はテントの中で起きて、身支度を整える。


リーダーが、その辺の土にいきなり給水ポンプを刺すと、何故か水が湧くので、それを使って顔を洗って歯を磨くのだ。


流石に、シャワーを浴びられるほどの水はないけれど、タオルで身体を拭いたりはできるし、仮設シャワーで三日に一度は身体を洗える。


特に女の子は髪を洗えるからって喜んでたなあ。


僕の恋人も、凄い喜んでいる。


どれもこれも、リーダーのお陰だ。


そして朝食。


朝ごはんはいつも決まっていて、ご飯と目玉焼きと、千切りキャベツにわかめの味噌汁だ。


どうやら、最近は鶏をどこかで確保してきたらしく、車二台に鶏を満載した、鶏小屋車ができているからな。卵の出所はそこだろうな。


米は、トラック三台分、大袋が積み上がっている。リーダーの「力」によるものだ。


味はもちろん……、ああ、美味しい……!


また、米が食べられるなんて!


しかも、ご飯はお代わり可能!食べ盛りの僕達からすると、こんなに嬉しいことはない!


しっかりご飯を食べたら、仕事だ。


野営地の警備を他の班に任せて、僕の班は訓練をする。


どうやらリーダーは、元々自衛隊にいたらしく、自衛隊の格闘技術や銃の扱いなんかを教えてくれるんだ。


「よし、狙って……、撃て!」


「はいっ!」


「おお、よくできたな。やはり、お前は優秀だ」


「ありがとうございますっ!」


憧れのリーダーに褒めてもらいながら、四時間程度の訓練をこなす。


そうしたら、昼食。お昼はチャーハンと玉ねぎのスープ。


美味しかった!


そして午後からは、警備の仕事……。


偉大なリーダーに拾ってもらえて、僕は幸せ者だ。


永住できる土地に着いたら、彼女と子供を作って増やして、リーダーを頂点とする国を作るぞ!


僕は、リーダーの作る国の礎になるんだ!

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