第18話 STRONG BACK

物資を整理しよう。


まず、主要な品目の上で、アイテムID呼び出しで一度に出せるもの。


・米(スーパーの10kgのやつ)

・水(2Lボトル)

・塩(卓上のやつ)

・砂糖(コンビニの1kg入りのやつ)

・デカいハム(無駄に高級オーガニック品)

・カレー野菜の水煮パック(国産)

・卵(不揃い)

・牛乳(学校給食用紙パック)

・冷凍シーフードミックス(中国産)

・ウォッカ(外国産)


アイテムを出すコマンドには、数量を指定する欄があるので、一度に出せる量の少なさについては考えなくて良い。


資材、消耗品はこうだ。


・バスタオル

・「電池(単三)」

・「洗剤」

・「木板(ヒノキ)」

・「鉄」

・回路素子色々

・「布(包帯として使用可能)」

・「重曹」

・「針金」


これらの雑貨の内、「」付きのものは所謂「クラフト素材」の扱いで、クラフトコマンドでかなり自由に細工できる。


特に木板と鉄が最高だ。鉄を加工して釘にすれば、大半の木工品はクラフトできるからな。


武器はこんな感じ。


・レイジングブル(大型拳銃)

・モスバーグ500(ショットガン)

・ブローニングM2(重機関銃)

・ガンパウダー(シングルベース火薬)

・雷管、薬莢、弾頭(色んな種類有り)

・ロングソード(中世騎士の骨董品?)

・ローマの投げ槍(何で?)

・なんかビームが出る杖(笑える)

・パンツァーファウスト3(対戦車ロケラン)

・ダイナマイト


概ね、生きていくには困らないが、嗜好品や衣類、細々としたアメニティグッズに電子製品など、足りないものは極めて多いと言えるな。


むしろ、よくここまで揃えたと褒めてほしいくらいなんだよね。


アイテムID呼び出しの苦行で、一日中半導体やらインチネジやらが出る悲しみがお前に分かるか……?


黄色いケーキが出てきた時はどうするかと思ったね。まあ山奥に埋めたが。


……暇だし、今日はトランシーバーでも作るか。回路素子、クソ程あるもんな。


クラフトコマンドを使わなくても普通に作れる。


「スピーカーで受けた音声をAM変調して送信し、超再生検波回路で受信した信号を増幅してスピーカーを鳴らすだけだし、素人でもできるよこんなん」


「あ……、あ、お?あ……、あ〜……?」


あっ、いけない。


冬芽の脳が処理限界を迎えている!


魔法の研究は人並みにできるみたいなのに、機械の話は1ミリも理解できないんだよねこの子。


機械に弱い女の子って可愛いよね。


いや、機械に強い子も可愛いけど。


ツナギを着た整備士風の女の子とかもう最高よ。


結論、顔が良けりゃ大体のことは許せる!


「まあ、その辺は分かんなくても良いよ。ただ、トランシーバー作るから、これで離れていても連絡できるってこと」


「とらんしばー……?電話のようなもの、ですか?」


「まあ……、そうかな。電話より通信は安定しないけど」


「そうですか……。離れている時も、お兄さんとお話しできるなんて、素敵なことですね……!」


「それもあるが、トレーラーの方で何かあった時に連絡してほしいんだよ」


「ああ、なるほど!分かりました、使い方は……?」


「ボタンを押して話す、ボタンを離して聴く」


「凄い!携帯電話より使い方が簡単です!」


あぁ……、本格派機械音痴……!




さてさて、そろそろ移動するか。


行き先はまず、服屋で良いだろう。


しかし問題が一つ……。


「服屋、ですか……?すみません、自分で服を購入したことがないので……」


この冬芽は、世間知らずのボッチお嬢様ってことだった。


どうやら、家にいたお手伝いさんが身の回りの世話を全部やってくれていたらしく、服屋やら何やらの位置を全く知らないんだと。


つ、使えねー……。


まあいいや、切り替えていこう。


とりあえず、最優先で向かうべきは大きな服屋だな。


冬芽の替えの服は元より、俺の服も必要だ。


俺の身体は、身長230cmという規格外のデカさだから、合う服のサイズは日本にはほぼ無い。


故に、服屋で布とミシンを手に入れて、自分で縫うしかないということになる。


幸いにも、愛用している特注のクソデカ作業服は替えが十着あるのだが、それでも一生保つ訳じゃない。


できればデニム生地なんかを手に入れて、丈夫な服を量産したいところだ。


布からクラフトできるっちゃあできるが、クラフト品は品質も良くないし、フリーサイズしか作れないしな。


その辺は恐らく、ゲームでは服はアイテムとしてサイズの概念がなかったのだが、現実世界では人によって体格差が……ということっぽい。


アイテムID呼び出しで出せる布や服は小さいサイズのばっかりだし、こればっかりは材料を自分で集めるしかない。




服屋を探して、街を巡回する。


街の中心部には流石にゾンビが多いようだから、外縁部をぐるぐる回るようにして移動するのだ。


いやあ、だが本当に戦闘面は困らないな……。


俺は、自作したメイスでゾンビを粉砕しつつ、服屋に入った。


あ、メイスは配管用の鉄パイプに溶かした金属を入れて重くした後、先端に切り出した鉄板を何枚か、銀ロウで付けた感じのだな。


棒の先端に長方形の板が溶着されて、先端から見ると工場の地図記号のようになっている感じ。


重さは通常のメイスの五倍、8kg程度。俺のイかれた筋肉量からすると小枝のようなものだが、威力はとにかく凄まじい。


取り回しのいい1m程度のメイスだが、速度が乗った時は、ゾンビの頭から鳩尾の下くらいまで潰し切る。


横薙ぎに振り抜けば、三体のゾンビをまとめて殺せるパワーがあった。


刀?カッコいいけど、よく考えたら使えねえわあれ。斬ると貫通しちゃうからな。手足切り落としてもゾンビは止まらないから、制動力が高い打撃武器がナンバーワン!


正直、ただのゾンビには銃すら要らんな。


弾丸を作るのも面倒だし、可能な限りは殴り殺すようにしよう。


そんな感じで、ゾンビの頭でモグラ叩きをして、服屋の中に。


服屋は、結構簡単に見つかったな。


中心街から少し外れたところにあった。


そりゃ、服屋なんて毎日行く場所じゃないもんな。中心街からは遠くて当然か。


服屋の中では、まあ当然のように服が得られた。


笑えることに、冬芽は自分の服のサイズも知らないらしいので、色々と着せてサイズを割り出す。


……少し大きめ、か。


腹周りが出てきたもんな、最近は。


着せる服は残念ながらオシャレさではなく頑丈さを優先。


ジーンズやブーツ、モッズコートなどを見繕う。本当なら丈夫な作業服などが良いんだが、服屋には売っていなかった。作業服はホームセンターだろう。


そして、革手袋などももらっていく。肌の露出は控えるのがゾンビとの戦いでは肝要だからな。


残念ながら布の類は見つからなかったな。布は裁縫具店とかに行くべきだったか。


とにかく、冬芽の服は得られたので助かったな。


よしじゃあ早速、冬芽に可愛い服を着せてから脱がせるか!

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