第17話 性⭐︎おねいさん

裸の冬芽を眺める。


「……ふふ、どうですか?」


そうすると冬芽は、微笑みつつ手を頭の後ろで組んで、股を開いて立ち、身体を見せつけてきた。


地獄のような生活で、元の人格というか常識が破壊されたらしい。


俺に媚びるのが当たり前だと思ってしまっているようだな。


まあ、俺にデメリットはないので良いだろう。


「ああ、可愛いよ」


そう言って俺は、冬芽を抱きしめた。


最近はもう、かなり体力も気力も戻ってきたようだな。


「服を着せてやれなくて悪いな。お前の制服は洗っても洗っても酷い匂いが落ちなかったから捨てちまった」


「良いんです。私、お兄さんに身体を見てほしいので」


ステータスには[狂気]と出ているがまあ、治す必要性は感じられない。


喜んで身体を開いてくれる女の子に、「もっと自分を大切にしなさい!」って普通言うか?少なくとも俺はそんなインポ野郎ではないな。


「嬉しいよ、冬芽」


「それで、その、最近は体力も戻ってきましたし、そろそろご奉仕したいです……♡」


「そうしたいが、今は薬局を探していてな。避妊の為の薬を……」


「え?孕ませてもらって結構ですよ?」


「デキたらどうするんだよ」


「産みます。産んだ子供は、邪魔なら捨てましょう」


「それは可哀想だな。お前の子を捨てるなんて、俺は嫌だね」


「ふふふ、嬉しいです。でも、私は孕んでも別に構いませんから!子供なんかより、貴方の方が大切です♡」


うーん、良い感じに狂っていらっしゃる。


そうだなあ……。


「……いつか、船を探して、ゾンビのいない離島とかに行くのはどうだ?そこでなら、子供も育てやすいだろ?」


「……本当、ですか?私のこと、お嫁さんにして、ください、ますか?」


「ああ、もちろんだとも!……だが、何せ人が足りんからな、また別に女を拾ったり、仲間を作ることになるかもしれん。それは良いか?」


「はい!」


狂っているから、ハーレム案も受け入れてくれる、か。


助かるねえ。




冬芽に場所を聞いて、この街の薬局まで来た。


当然ゾンビはいるが、トレーラーハウス内の梯子から車の上に登り、そこからレイジングブルを使っての射撃で仕留めたので、何も問題はない。


それに俺は、ゾンビに噛まれても、肉体が硬過ぎて歯が通らないから感染しないのだ。


ついでに言えば、ゾンビウイルスは感染力がそこまで高くないので、ちょっとした傷口なら洗い流して消毒すれば大体大丈夫。


それどころか、実は、抗生物質を投与すればゾンビウイルスに感染しても早期治療ができるまである。ゾンビウイルスのワクチンを作る為にゾンビウイルスに適応した女の子を組織に連れて行ってうんぬんかんぬん〜みたいな話はないのだ。


ゾンビによる傷は、二十四時間以内に徹底的な消毒をすることと、抗生物質の投与と、傷口の適切な治療で空気感染を防ぐこと。この三つができれば、感染確率は少数点以下に抑えられる。無論、その本人の体力や体調も影響するが。


現状、ここまで世界が狂っているのは、ゾンビが普通に強いことと、「物資不足」が大体の原因だろう。


傷口を洗えば平気?洗えるだけの水がないのだ。


消毒すれば平気?それをする為の薬品がないのだ。扱う専門家もいない。


日本は、食べるものの半分以上を輸入で賄っているような国だ。食べるものを食べていなければ、感染症に打ち勝てる体力が出せない。


だから今、追い詰められている……。


……まあ、その辺は俺には関係ない。


マジな話、俺さえ幸せなら世界が滅んでも別に構わないのだ。


その幸せに必要なものをピックアップして生かしておいてやっているだけ。


アイテムID呼び出しの試行回数は、生きながらえれば生きながらえるほどに増えていくのだから、徐々に既存の世界は「不要になってゆく」のだ。俺の中では。


確かに、今はまだ色々と足りないものが多い。


油断はできない状況だ。


だがそれでも、「生存するだけ」ならば余裕と言って良いくらいにはアイテムのレパートリーがあるつもりだ。


とにかく、俺は好きにやらせてもらう。


終わった世界を、楽しませてもらうぞ。


さあ、カゴに薬を詰め込んで……と。


サプリメント各種はもちろん、風邪薬や咳止め、精神安定剤に睡眠薬などももらっていこう。


消毒液に虫刺され用の軟膏、痒み止めに、下痢止めに……おお、氷枕なんてのもあると助かるか。


それと……、婦人用のフリーサイズ下着があるな。これは、冬芽に着せてやることとする。


後はバックヤードに、調剤薬局の女性店員のものらしき白衣があるので、これも持って行く。


冬芽は、下着の上に白衣を羽織るという、なんか逆に全裸より変態チックな姿になったが、まあ興奮できるので問題はないだろう。


こんなあっさり探索できちゃう俺だが、普通の人はこういかないんだろうな。


スタッフは特殊な訓練を受けています、テレビの前の皆さんは真似しないでくださいってか。


俺は視界の端に映る「マップ」を見て、敵を発見し……。


『ぎゃぎが!』


即、踏みつけた。


いやあ……、棚の下に挟まっているゾンビとか、普通は即死トラップよなあ……。


いきなり棚の下、視界の外からワッと出てきて、衣服によるガードのない足首を齧ってくるんだから。


ホント、マップ様々、コンソール様々だぜ!


そう思いつつ俺は、軍用のブーツでゾンビの頭を踏み潰した……。うん、俺の筋力なら素手の格闘攻撃でゾンビ殺せるんだ。


靴底にこびり付いた肉片を、その辺の棚に擦り付けて落とした後は、物資を満載したカゴを抱えて俺はトレーラーハウスに帰還する……。

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