黒服【木村 則人】
第1話【Kgo's BAR】
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【Kgo's BAR】
飲み屋街から少し外れた場所にある
カウンター8席と小さなテーブル席2つ
マスターの趣味の JAZZ が流れる
落ち着いた雰囲気の店内
どうも……
私、当店のバーテンダー
外の空気もすっかり暖かくなり
日の出ている時間帯は
汗ばむほどになって来ました
私は必要な小物や食材を買い
我が
営業時間は18:00〜2:00
閉店時間は気まぐれです
どうぞ気軽にお越しください
開店30分前 店の狭いキッチンで
お通しの仕込みをしていると…
キイッ
入口の扉を開ける音に
顔を上げるとそこには……
「お? どうしたんだ?
こんな時間に珍しいな
もう仕事は終わったのか?」
入口に立っていたのは
4つ年下の
ズッ……ズッ……
顔を俯けたまま肩を落とし
高いピンヒールを履いた足を引き摺り
カウンターへと歩いて来る
「……ちょ…怖いんだけど」
明らかに様子がおかしい……
普段の
前向きで男勝りで負けず嫌いで……
私の前でこんな姿を見せるのは
相当ヘコんでいる時だ……
過去に一度仕事の関係者に裏切られ
ヘコんだ時以来か……
今回は何だ?
カウンターにたどり着き
ヨロヨロと座ると
突っ伏し泣き出した
「うわぁあああああああぁぁぁん!!
「……ほれ、水飲め」
「ヤダ!お酒ちょうだい!超強いやつ!」
「何言ってんだよ飲めないくせに……」
「ヾ(⌒(ノ 。> <)ノ ヤダヤダー!!
飲むの飲むの飲むったら飲むー!」
カウンターをバンバン叩き泣き喚く
「ガキか…いい年こいて……
何があったか知らんが…
ヤケ酒はするな、酒は楽しむものだ」
そう言うとピタリと動きを止め
カウンターに上体を預けたまま
顔だけを上げると唇を尖らせて
恨めしそうに睨む(๑˘・з・˘)
「……(´Д`)ハァ…分かったよ…」
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アパレルブランド K の CEO 兼デザイナー
昔から背が高かった
自分の体に合う着たい服が見つからず
自らデザインして作るようになった
ある時いつものように自作の服で
TKGへ……(ん?卵かけご飯やん)
T…… TG? なんだっけ?
まぁいいや……
ファッションのイベントへ出かけ
某アパレルブランドの代表に
才能を買われアパレル業界に入る
しかしそこに在籍していた
デザイナーに妬まれやってもいない
盗作というデマをでっち上げられる
泣く泣く退社することになった
持ち前の負けず嫌いと男勝りな性格で
それまで以上に奮起し
自らのブランドを立ち上げるに至った
今じゃ泣く子も黙る
業界トップクラスの人気で
毎日相当忙しいはず……
こんな時間にここに来るなんて
余程のことがない限り有り得ない
コト……
出来たばかりのお通しを小鉢に入れ
目の前に置いてやる
「あ!
久しぶりだァ♡ シャクシャク(*´ч ` *)」
「あ!こらお前1口で食うなよ!」
「えー!だって大好物だもん!
もっとちょうだいよ〜!
男だろぉ? ケチケチすんなし!
よこせ!そのタッパーごと食ってやる!」
長い腕でタッパーを奪い取る
「あっ!
食い箸を突っ込むなぁあああああ!」
( ° _ ° )チ ─── ン
もうお客様への提供は無理だ……
「 ンア゙ア゙ッ !! もうっ!なんなんだお前は!」
「……シャクシャク……いいじゃん……
たまには……付き合ってよ……グスン」
「……(´Д`)ハァ…それ作りたてだから
味がまだ馴染んでないだろ?」
私は残しておいた残りの人参1本を
下ろしながら話を聞くことにした
「……確かに…でも美味い……
てか酒はどうした?
まさか忘れたとは言わさんぞ…?」
「……チッ( ¬_¬ ) 」
独りの時には飲ませたくない
潰れたら
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開店準備をしながら
「はあ? ホストだぁあ???」
信じられん……
毎日休みなく働いている
ホストに熱を上げているなんて
想像もしなかったことだった
「お前!まさか貢いで……」
「やめて!
「いやいや、待てよお前」
それはホストにハマった女たちが
皆一様に言うセリフだろう……
……ん?
今どこかで聞いたことある名前が…
どこで聞いた?
でもココで聞いたような…
……ホストの名前なら
他の女性客の口からも出てるのかもな
「本当にいい子なのぉ……
可愛くてカッコよくて優しくてね♡
なんと言っても声が良くて〜♡
耳元で囁かれると蕩けちゃうの(*´∇`*)♡
色が白くてお肌はツルツルでさ
細くてスタイルもいいから
本当はウチのモデルになって欲しいけど
そうしたら世の中の女どもが全員
敵になっちゃうし嫌じゃん?
そんじょそこらの安っぽいホストとは
レベルが違うのよ!
絶対無理にお金を使わせたりしないし
それにそれに〜♪ 黒服もレベル高いのよ
彼がホストなら絶対乗り換えるのに♡」
「いやお前……話が長ぇよ
まだカクテル1口だろ……」
「長くなーい!最後まで聞けー!
「ぅるっさ!」
人の名前を大声で叫び
グラスを一気に
「 ぁあっ!? 」
バタン……
潰れる前に……
そう思っていたのに秒で潰れた
こうなるとしばらくは起きない
悔しいが身長で負けてる私には
コイツは運べない……
「で? 結局なんでこんなに荒れてるのか
1つも分からんのだが……
そのホストに騙された?
……訳じゃなさそうだしなぁ
あぁもう分からん!
面倒くさい女だまったく……」
いつの間にか開店の時間も過ぎている
このまま放置して店を開くことにした
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