「いいよな。女は着飾ってにこにこしてりゃそれでいいなんて、羨ましい限りだ」と、言われましたので・・・
選択肢2.「ごめんなさい……あなたがそんな風に思っていただなんて、知らなかったの……」と、謝る。を選んだ場合。
選択肢2.「ごめんなさい……あなたがそんな風に思っていただなんて、知らなかったの……」と、謝る。を選んだ場合。
わたしは・・・
足早に部屋へと向かう旦那様の背中に声を掛けた。
「ごめんなさい……あなたがそんな風に思っていただなんて、知らなかったの……」
旦那様へ謝罪をし、わたしはパチン! と指を鳴らした。
「侍女達! というワケで、旦那様をドレスアップしてあげて! 勿論、フルコースで」
「「「かしこまりました!」」」
と、控えていた侍女達が旦那様を取り囲んでバスルームへと連れて行った。
「な、なにをするお前達っ!?」
「あら、旦那様。着飾ってにこにこしていればいい奥様のことが羨ましいのでしょう?」
「大丈夫ですわ、旦那様」
「やっ、やめろっ!? 勝手に服を脱がすなっ!?」
「ええ。旦那様がそのようなご趣味を持っていても、奥様の愛は変わりませんわ」
「そんな趣味とはどういう意味だっ!?」
「あらあら、お恥ずかしがらなくても宜しいのですよ」
と、侍女達は手際良く旦那様の衣服を剥ぎ取って行く。
「やめろっ!? パンツを脱がすなっ!!」
旦那様は必至で抵抗して、パンツ一枚だけは死守。
「まあ、それでは大事なところのケアができませんのに」
「はあっ!? なにを言っているっ!?」
「はいはい、お風呂の用意はできていますから。入りましょうね、坊ちゃん?」
旦那様を子供扱いしているのは、お義父様の頃からこの家に仕えている大ベテランの侍女長。
「なっ!? ぼ、坊ちゃんって呼ぶなっ!?」
「はいはい、坊ちゃんには昔からお風呂嫌いで困らされたものです」
「や、やめろっ!? そんなところ触るなっ!? じ、自分で洗うっ!? 自分で洗うから!」
「はいはい、あんまりわたくし共を困らせないでくださいませ」
「うわ~~~っっ!?!?」
なにやら叫び声がしていますねぇ。どうしたのかしら?
「ちょっ、待てっ!? なんだその剃刀はっ!?」
「フルコースのドレスアップですからね、ムダ毛処理ですよ。動かないでくださいね? 動くと肌が傷付いてしまいますからね」
「や、やめっ!」
「坊ちゃんっ、動かないっ!!」
「ひっ!」
侍女長の一喝で、暴れるような気配はなくなりました。
よかった。旦那様がお怪我をしては大変ですもの。
「さ、これでお綺麗になりました」
「す、すね毛が全部剃られてしまった……」
「はい、それじゃあマッサージを致しますよ」
「なっ、服を着せろ!」
「はいはい、坊ちゃん。そんなに急がなくても、ドレスはマッサージが終わってからですよ」
「ドレスっ!? なにを言ってるんだっ!?」
ハッ! そうだわ。ここでボケ~っと旦那様と侍女達のやり取りを聞いている場合じゃなかったわ!
旦那様は、着飾ったわたしのことが羨ましいと言っていたもの。旦那様は、ドレスを着てお化粧をしてみたいということだ。だから、マッサージとネイルと、パック。その後に軽食が入ってから、お化粧が終わる前に、旦那様でも着られるサイズのドレスとコルセットとハイヒールを用意しなくてはっ!?
わたしは慌てて、お針子達に一番大きなドレスのサイズを直すようにとお願いした。
妊婦用の楽なドレスをお直しすれば、男性でも着られるわよね? コルセットも大きいサイズの物がどこかにしまってあったはず。ああでも、旦那様が履けるくらいのハイヒールがあったかしら?
と、大慌てで旦那様に身に着けて頂く物を超特急で用意してもらった。
みんな笑顔で笑いながら、快く準備してくれた。さすが、侯爵家の使用人ね!
でも・・・
「旦那様、申し訳ありません」
ぐったりとして侍女達に身を任せている旦那様に、悲しいお報せをしなければいけません。
「なにがだ」
不機嫌な声でわたしを見上げる旦那様。
「残念なことに、旦那様の履けるサイズのハイヒールが見付かりませんでした」
「・・・」
じっとりと、怒りの籠った眼差し。やっぱり、フルのドレスアップでハイヒール無しというのは格好が付きませんものね!
「というワケで、遥か東方に伝わるテンソクという秘法を試してみませんか? なんでも、足にキツく布を巻いて、足のサイズを小さくすることができるそうです」
「なんだそれは……」
ぐったりと疲れたような声が返ります。
まあ、なんだか初めてのデビュタントを思い出します。あのときのわたしも、こんな風にして侍女達にお世話をされながら、ぐったりしていたものです。
ですが、これも慣れです。マッサージを受け、そしてあれこれしている合間に軽食と水分補給をすればある程度回復するはず。
「やり方はわかりませんが、侍女達が足に布を巻いて足を小さくしてくれるそうです」
「?」
「なにやら、ものすっご~~く痛いそうですが、おしゃれというのは我慢ですものね! がんばってくださいませ!」
「は?」
「では、わたしは旦那様の軽食を用意するようにお願いして来ますね♪」
ふふっ、コルセットでかなり締め付けるとあんまり食べられないし、下手したら吐きそうになるから、軽くても栄養価の高い食べ物を用意しなきゃ! と、料理長にお願いしに行くと、
「ぎぃゃーーーーっ!?!?!?」
なんだか断末魔の悲鳴みたいな旦那様の声が屋敷に響きました。
きっと、コルセットを締められているのね……初めてのコルセットはとっても、とってもつらいものね。昔々は、コルセットはアバラが折れてからが本番! という恐ろしい風習があったそうです。
現在では、アバラが折れるまでキツく締め過ぎると生活全般と出産への悪影響。下手をすると折れたアバラが内臓を傷付け、命の危機すらもあると判明してから、骨折する程にキツく締め上げることは無くなったそうですが……
でも旦那様、おしゃれは我慢なのです! 気合と根性と、『これを着たステキなわたし♪』というのを想像して、痛い、つらい、苦しい、暑い、寒いを耐え抜くのです!
それが真の淑女というものですわ!
そんなこんなで、フルにドレスアップした旦那様は――――
「すみませんでしたっ!! もうあんなこと絶対言わないから許してくれっ!?」
と、なぜか滂沱と涙を流しながら謝って来ました。
「どうされたのですか? そのように泣いていては、お化粧が剥げてしまいますよ? さあ、涙をお拭きになって?」
「許して、くれるのか……?」
「? わたしはなにも怒っていませんよ? 旦那様」
「そうか……」
ほっとした顔でわたしを見下ろす旦那様に、
「ええ。むしろ、旦那様が女装してドレスを着て着飾ってみたいという願望を抑圧していたことに気付かず、申し訳ありませんでした」
「違うっ!? 俺にそんな趣味は無いからなっ!?」
「え? 違うのですか?」
「お前がっ、『女は気楽でいい』などと言ったことへの当て付けだと」
「そんな、わたしがそんなことをするはずがありませんわ」
「そう、なのか……?」
「ええ。ですので、旦那様」
「なんだ?」
「お化粧が崩れているので直しましょう?」
「もう勘弁してくれっ!?」
と、旦那様は泣きながら着替えさせてくれ! と喚いたので、侍女達が笑いながら旦那様のドレスとコルセットを脱がせて行きました。
ちょっと残念。
でも、この件以来、旦那様がドレスアップしたわたしに対して優しくなりました。
「ドレスはその……色々と大変だったからな!」
「ふふっ……ありがとうございます、旦那様♪」
――――――――――――
天然奥さんで旦那が酷い目に……でもラブコメハッピーエンド。(((*≧艸≦)ププッ
ちなみにですが、
まあ、アバラ折るまで締めるコルセットも似たようなものなんですけどね。昔のおしゃれって本当に怖い……(ll゜Д゜)怖ァ
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