第5話
アラームスイッチを止め、また眠りにつく。
五分後、再びびアラームが辺りを鳴り響く。
これがスヌーズ機能。
今までに戦ってきたが、一度も勝てなかった最強の機能。
俺は時計を確認した、九時二分と表示されている。
待ち合わせは早朝。
あー、起きたくない。
俺は目覚まし時計の電池を取り外す。
俺は着替え、朝食、歯磨きを済ませ、すぐに家を出た。
現在時刻九時十二分。
足の速さには少し自信があった。
_____
「着いた」
現在時刻九時二十五分。
俺の目の前に、昨日キスキと約束をしたカフェに到着した。
店内へ入ると、入り口のすぐ隣りにあるカウンター席に、メロンソーダを飲んでるキスキが居た。
「おまたせ。ギリ間に合ったな」
「間に合ってない。遅いよ、市一」
彼女は怒っているのか、頬を膨らませた。
「すみませんね」
俺は小さくため息をつく。
俺は紅茶を一つ注文した。
殺し屋にとって紅茶は相棒のようなものである。
「それで、市一が叶えてほしい願い、教えて」
俺は少し間を開けて言った。
「それは、少し俺の過去を話さなければいけない」
「わ、分かったわ」
簡単に言えば、俺は昔、何者かに短剣で刺されたことがある」
俺の脳内には過去の記憶が溢れ返る。
「誰にさされたのよ?」
キスキは首をかしげる。
「あのときはまだ分からなかったが、敵国のスパイだな。あいつらは、この国『エラス王国』の全ての人間が持っている特殊な遺伝子を研究しているらしい。だから俺に短剣を刺して採血したのかもしれない」
俺は言った。
俺が何者かにさされてから二年後に、敵国との戦争が勃発した。
戦争の結果を裏で左右するのが、俺たち殺し屋、そして敵国のスパイ。
「その頃の俺は殺し屋なんて、存在すら知らなかったけどな。もちろん敵国のスパイの存在も」
俺はそれから十一年間、新聞、アンケートなど様々な方法で事件の犯人を捕まえようとしたが、実際、まだそのときはまだ犯人が誰かは分からなかった
だが、調べ尽くして一つだけ分かったことがあった。
それは殺し屋という職業の存在。
殺し屋は、調べていくうちに、敵国のスパイと戦っているということを知ったのだ。
「こっち側の人間になれば事件の真相を突き止めることができるかもしれない」と当時の俺は考えていたのだ。
キスキは深くうなずく。
「ということは、市一は事件の犯人を捕まえるために殺し屋になったってこと?」
俺はコクリと頷く。
「俺が殺し屋になってからも、仲間が次々と刃物で刺される事件が勃発した。殺し屋本部が大規模な調査を行った所、敵国のスパイが犯人だったということが判明した」
それから、俺は何度も敵国のスパイを暗殺しようと企んだ。
結果は全敗。
「俺が得意とするスナイパーライフルで遠距離攻撃を仕掛けたとしても、相手はスパイ、すぐに気づかれて防御されてしまう。あいつらに勝つためには、二人で同時に攻撃をする必要があるんだ。しかも、旅をするには一人より二人の方が圧倒的有利だろ。だから俺の願いはお前とともに、敵国のスパイを抹殺することだ」
「市一なら金が欲しいだとかそんな感じのじゃないの?まあ良いけど…」
意外にあっさりとOKを出してくれた。
現在は一ヶ月間停戦中。敵軍のスパイを抹殺するには今が絶好のチャンスである。
俺は自らの拳を握りしめる。
「そんじゃあお前の願いを聞いてやろうか」
紅茶の中に入った氷の音が鳴る。
「……私の願いは、世界中を見てみたい。そしてこの素敵な世界を絶望へと飲み込んでしまう、悪人をこの世から抹消することよ」
キスキは恥ずかしそうに頬を赤くして言った。
少しすると白い髮を揺らしながら高い椅子から快活に飛び降りる。
「これからよろしく。市一」
彼女どこか遠い海の先へと旅をするように、太陽の光を受けて輝くはめ込み窓の先へと指を指した。
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