第4話

「これでお前の趣味が“確定”で当てられる。お前の趣味を当てていいか?」

彼女は何かを味わうかのように目を閉じた。

「……いいですよ」

俺はゴクリと息を呑む。

「お前の趣味は、殺し屋。お前は殺し屋を趣味でやっているな」

俺の瞳には彼女の赤い瞳しか映らなかった。

「__正解」

彼女と俺は顔を見合わせた。

「趣味で殺し屋なんてやってるやつなんて、初めて見たよ」

「そうなんだ」

「それでさ、私の願いは叶えてくれるの?あなたの任務も偶然だけど終わらせてあげたんだから、一つくらいは聞いてくれるよね」

イエスかノーか。究極の二択だ。

その時彼女は飛び上がって言った。

「そうだ!!そんなに私の願いを叶えたくないなら、あなたが叶えてくれたら私もあなたの願いを一つ叶えてあげるから」

願い…か。

思い返してみると俺には叶えたい願いがただ一つだけある。

それは俺が殺し屋になった理由でもある。

俺ははっきりとした口調で言う。

「イエス」

暗闇から開放されたかのように、彼女は人生で見てきた中で最高の微笑みを見せた。

「今日はもう遅いし、また明日の九時、あそこのカフェで待ち合わせよう」

「あ、名前聞いてなかったな」

暗白既隙【くらしろきすき】」

「じゃあ、キスキと呼ばせてもらおうか」

「俺の名前も言わなくては」と思った。

「市っ……」

俺が名前を伝えようとした瞬間、彼女は口を動かした。

「ふふふ。私…あなたの名前、ずっと前から知ってるわ」

いやいや、そんなわけ無いだろ。

この二人は全くの初対面である。

「お前、嘘付いたから俺の願いを二つくらい叶えてくれよ」

まあ、あいつも嘘をついたんだからな、これは当たり前だ。

「嘘じゃない」

キスキは再び心を読んだかのように言った。

「嘘だろ」

「いや、嘘じゃない」

「あなたの名前は市一、苦巣醋市一【くすすしいち】!!」

一瞬聞き間違いかと思った。そう、聞き間違いだ。

「もう一度言ってみろ」

俺は聞き返す。

「あんな変な名前二回も言うのは大変」

どうやら聞き間違いではなかったらしい。

変な名前、生まれる前からそれくらい自分でも理解している。

「キスキ、お前もしかしてストーカーか?」

ここまで来るとストーカーと疑っても仕方がないことだ。

「さあね」

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