第2節第4話『あとのはなし』
—同時刻 平野の高台—
「……おい。あんたのとこの
黒い縁のメガネをかけた長身の男は、双眼鏡を覗き込みながら、怒気をこめてそう呟いた。
「ミスター・T。だから言ったろう。あれは
オールバックでキメた黒眼鏡の男のぼやきに、金髪コーンローの男が言葉を返す。
「あんたが、“オレ様の研究に失敗はねえ。まかせろ。見合う報酬があれば手伝ってやる”っていうから、オレはあんたに依頼したんだけどな」
オールバックの男は双眼鏡を外して、先ほどと同じ口ぶりで言葉を紡ぐ。
「そう言ってくれるなよ。実験に失敗はつきものだ。『失敗は成功の母』っていうのは、
「こっちは金積んで依頼したんだけどな……まあ、いい。『本丸』の準備はできてるんだろうな?」
オールバックの男が、コーンロウの男の隣に立って確認を取る。
「そっちはOKだ。『
金髪コーンロウの男は、かけているサングラスに指を押し当てて、オールバックの男に問う。
「なにがだ?」
「“アレ”を起こした結果は、必ず決まっている。バッドエンドじゃあなく、
ミスターTと呼ばれた男は、何度目かの同じの問いに辟易したのか、大きくため息をつく。
彼の初期衝動は『復讐』だ。かつての友に報いるためなら、
多くの糾弾が生まれるだろう。非難の声が止むことはないだろう。それでも彼は、修羅になることを選んだのだ。
「聴き飽きた。そんなことでオレが思いとどまるとでも?」
「
「ああ」
短く返事をして、ミスターHは階段に足を乗せる。
「……最後に確認していいか、シガレット」
「どうした、ミスター・T」
「オレの行動は、正しいか?」
ミスターTは小さく振り返って、シガレットと呼んだ金髪のコーンロウの男に問いかける。シガレットは、サングラスのブリッジに指を置いて答える。
「——さあな、それはお前が決めることだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます