第20話 次の街へ

 プジャーの加入。そしてキルシュの銀級、プジャー、天夜叉の鉄級昇格祝いが行われた職員同行の元ダンジョンでの腕試しと質疑応答、キルシュは難なく、他2人も銀級へのプッシュがあったが、天夜叉は破天荒な性格が発覚。プジャー遠すぎるジェネレーションギャップが災いし。質疑応答の段階でもう少し常識を蓄える事とのお達がでたため昇格の保留とあいなった。


 プジャーの強い希望でネェちゃんがいる店、キャバレーでの宴がとなった。


「キャー!この子可愛いわ!」

「あら。和人のお客様とは珍しい。スラリとしてるわね。荒事の住人の方とは思えないわ、うっとりしちゃう」

「えー、でもお着物?脱がせたらもの凄いって聞いたよー?」

「あらーキルシュ君と言えば期待の新人ホープぢゃないっ!えっ!もう銀級なの?!すごぉーい」


 気を良くした一行は稼いだ金を溶かしていく。プジャーは胸に引っ付き、どうだ羨ましいだろうと言わんばかりの顔でチラチラとこちらを覗く。天夜叉は退店後、従業員と闇に消え、キルシュはプジャーをひっぺがして宿に戻った。


 翌朝プジャーは鏡の前にちょこんと座り伸びた顎髭をしごいていた。


『顎髭が急速に伸びたのう。日が立ち、この身体が魂に引っ張られておる。魔力の炉心は元々の身体とは別物。都合はいいが強化する必要がある。魔眼は徐々に発露しておる』


 宿の食堂で会する一行。


「なんだジジィ。急にジジィ度が増したな、どうしたんだよ!」

「長老猿に進化したのか?」

「ちゃうわい。ワシの魂にこの猿の身体が引っ張られたんじゃ」

「ん。すると猿の魂はどこに?」

「本の中じゃ」

「て事は、俺らのどっちかがあの本に入れられる可能性もあったのか」

「「………」」

「すまんかったな。許してくれんかのう」


 少し爺めいた猿がまんまるな目で2人をに伺い、静かに返答を待つ。


「俺は別にいいぞ!旅をすればこういった出会いの形もあろう」

「まぁ…ジジィにはタメになる事も教わってるしな。それにもうパーティ申請しちまってるしよ」

「お主ら…ありがとう」


 ボソッと呟くその口元は口角が少し上がっていた。


 その後一行は天夜叉の学術都市へ行きたいと言う要望により、どの経路を辿るか会議が行われた。その結果、金級で制限が解除される飛龍船の利用。発着場がある街をランクを上げつつ目指す事になった。


 西へ向かう事になった一行。ギルドでは盛大な宴が執り行われていた。キルシュにとっては馴染み深い冒険者仲間に受付嬢のネルジュ、そしてギルマスのハーゲン。この街で過ごした時間は短くなかった。


 次の街ジャグオーは、大森林や湿原に小さいながらも鉱山、地理的資源を今までいた街、ライデルと挟み合うような位置関係にある。その豊富な資源を目的に職人達が寄り合い出来たのがジャグオー。街道を進む一行だが語り部が路肩で休んでいるとこで足を止めた。


「一緒にいいかい?語り部さん」

「ええ。どうぞお座りなせぇ」

「いやはやこの大陸にも語り部がいるとは驚いてな」

「あっしら音戯衆おとぎしゅうは身体に難を抱える者らで構成されてますれば、このご時世、あっしらみたいなのは五万といる。もちろんどの大陸なもおるでしょうなぁ」

「そうだったのか。そりゃあ物語には事欠かない訳だ。ではさっそくだが頼めるかい?」


 一行は腰を落ち着け天夜叉が大銅貨1枚をお椀へとカランと投げ入れる。


「それではこの先の街ジャグオーで聞いた話を一つ」


べべんっ!


「汗をしたらせ鉄を打つ。油塗れで機械をいじくり回す。そんな店主らで街はせめぎ合う。ゴチャゴチャとしたその中に颯爽と現れし魔法銀をこさえた冒険者が1人。麗金の髪を靡かせ、そこから覗くは蒼き慧眼の君。漢しか知らぬ街娘は大騒ぎ!こんな脂っこい街に王子が現れたとな。だがその熱も鉄と一緒で冷めるが早し。三日坊主ならぬ三日王子。さも原因は慧眼の君にあり。容姿に見合わず嘆いてばかり。ついたあだ名が【嘆きの冒険者王子】かの者、この先いずれ相見えましょうや」


「嘆きの冒険者王子か。どんなやつなんだろうな」

「ミスリルランクという事は腕は確かなんじゃろ?」

「ああやっぱ三味線の音は心地良い」


 この先何やら楽しそうな兆、一行が進む足は早まった。

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