第19話 プジャーの魔法講義
「ごちゃごちゃ考えるのはやめた。掛かってこいよ。」
キルシュは挑発を諦め闘志を溜まった鬱憤と一緒に爆発させる。嘲笑ってたレッドソックス達も顔つきが変わり牙を剥く。今にも飛びかかってきそうだ。
「ほう。挑発は点でダメじゃが、獣をも触発する闘志か…これはこれで。ふむ、事を成せば良い。キルシュこの浮いた石の円環より内にいる攻撃のみ叩き落とせ。夜之介は如何様にする?」
「こいつは超前衛さ」
「成程のう」
天夜叉はキルシュが闘志を解放しレッドソックス達が顔を向けた時には突貫し2人が会話してる内に突きつけられ爪を難なく躱し狐達の背後を取った。背後を取られた狐達は自身の後ろよりキルシュが気になるようだ。そして駆けてきた。
「では心置きなく。」
【バイオレンスコピー】
プジャーは呪文を唱える。円環となってた石が増えるだけでなく尖り始め凶悪となる。そして重ねて詠唱した。
「踊り狂え」
【
軌道を重ね円環する小石の凶器、その速度が上がり縦横無尽に駆け周る、さながら嵐のように。丁度飛びかかってきた狐達はズタズタとなり叫び声を上げる。上がった声は獣特有の悲鳴だ。人に寄せた声を出す余裕などないのだろう。石の嵐を抜ける攻撃や本体もあったが全てキルシュが防ぎ押し戻した。たまらず下がるものは天夜叉に斬り伏せられた。
一方的な展開にも限らず逃げるものはいなかった。あたかもキルシュに強く引かれているように。その数も多く天夜叉が刀の血糊を腕を曲げ袖で挟むようにして拭う程。最後の一頭が倒れ戦闘の幕が降りた。
「ジジィ。あんた本当に凄腕の魔法使いだったんだな」
「ふん。こんなもん序の口じゃ。主らも見事ではあったな」
「毛皮にはできそうにないな、ズタズタだ」
「まぁ依頼は討伐がメインだ。問題はねぇはずだ。数も多いしダメになってるから討伐証明ぢゃなく狼煙を上げて見てもらうか」
「血濡れ狐達もまさか全身が濡れるとは思ってなかっただろうな」
「確かに血溜まりやべぇな。一応中層だし狼煙と一緒に消臭香も炊くか。いや待てよ…ポイズンシェルも狙えるかもしんねぇな、待つか」
キャンプ地にて休息を挟みポイズンシェルを待つ3人。先の戦闘を振り返っていた。
「にしても挑発下手だったな」
「しょうがねぇだろ!いきなり狐を罵倒しろって言われてもなぁ」
「毛皮にしてやるよ。とかどーだ?冒険者を獲物にするくらいだ毛皮くらい見た事あるんぢゃ?」
「成程な!その手があったか」
「お主、憎き相手はおらなんだか?あまりにも毒づき慣れてない」
「んー。なんつーか他人を恨むなら自分を恨めってゆーか恨み事に陥った自分の力の無さが腹立つだろ?」
「「………」」
「お主、口調汚いわりに正道を進んでおるな」
「うっせぇよ!つか最初簡単にジジィの挑発受けちまったよな。声なんて耳塞いでても聞こえる時は聞こえるしどう防げばいいんだ?」
「なんじゃそんな事も知らずに身体強化しておったのか?いうたじゃろ声に魔力を乗せると。強化のオーラはお主自身の魔力、声に乗る微量な魔力程度なら弾くじゃろ。まぁ声を得意とし、特化した者がいれば定かではないがのう」
「へぇ。あのオーラにそこまで意味があったんだな」
「攻撃に特化した魔法は貫通するがそれでも纏われた魔力を軽減する。身体強化で耐久力が増えるのもそういった点じゃ」
「やっぱ奥が深ぇんだな。意識、意識!」
「纏う上手さなら夜之介。お主随分と器用な事をするのぅ。外蓋に流れる川のように魔力を流してたじゃろ?狐共の爪をいとも軽く流してた時見たぞ」
「お!プジィは魔力がそこまで見えるのか!」
「当たり前じゃ!凄腕だからの」
魔法談義に花を咲かせ時を忘れる一行
「ここは一つ講義じゃ。先のワシの魔法。元々ある石を浮かしてるのは"念動魔法"そして石を無から生み増やしたのが"創造魔法"。魔力に色をつけるとわかりやすいかのう。この石に触れ動かす魔力自体、どれかの?」
「んー己から生み出してるから創造魔法か?」
「魔力を動かしてるから念動ぢゃね?」
「ブッブー!大外れ。これは原初魔法と呼ばれておる。言うなれば魔力操作魔法じゃ」
「なんだよそれ引っかけかよ!」
「まぁそう言うな。何事も、定め認識する事で成長を成す。身体強化の具合にも関わることぞ。夜之介の川のように流す魔力操作魔法のようにな。そいつに水という実体を与える創造魔法を加えてみぃ、出来る事はかなり広がるじゃろうな」
「うーん剣がかなり滑るってゆーか押し流されるか。成程なんとなくわかった」
「日、暮れてないか?」
「しまった!!!」
撒き餌にしてた現場に急行したが酷かった。大きいカタツムリの群れ。吐き出されている毒の霧。ポイズンシェルは血を好み少しずつ獲物を溶かし毒素だけを取り入れ過剰となった毒を吐出す。
「うわ。近寄れねぇな。毒が濃すぎる」
「ふっふっふ、任せろ」
天夜叉が首に下げてた頬面その下げ紐を引っ張ると顔に吸い付くように収まる。
「この面には毒避けがある。キルシュ殻を採取するにはどうすればいい?」
「本当に大丈夫か?首を刎ねれば溶けてなくなる。怖いのは毒霧だけだからな。一応体には直に触れるなよ」
「あいわかった」
天夜叉が次々と首を刎ねていった。残ったのは毒の沼と血溜まりと損傷著しい血濡れ狐と殻。凄まじい光景となっていた。
「これは…怒られんな。しゃーねぇ俺らだけぢゃ殻は持ち帰れねぇ」
そして狼煙を上げて狩猟者を表すためランクプレートに魔力を込めスタンプにした。
「そんな事が出来るのか!」
「ほう。ここまでくると魔道具の一種じゃな」
「お前ら説明あっただろ」
「「聞いてなかった」」
やれやれとしたキルシュだが物見櫓から狼煙を見て来た常駐の冒険者に現場を見てやれやれとされた3人であった。数多くの討伐に殻の報酬を得たが運搬の依頼に現場の杜撰さの為手間賃を多く払う事になり少なからず響いた。
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