第13話 それぞれのスキル

 天夜叉は1人冒険者として慣れるため常駐依頼である小型荷車のシャトル輸送、大森林での薬草採取、低級魔物の狩猟。その抱き合わせで依頼をこなしていた。ユルゲン大森林。盗賊と会った森とは違いその森の深さは目で捉えきれないほど広大に広がっている。ギルドは入り口と深さに応じて物見櫓ものみやぐらと小屋を建て、監視するため常駐の冒険者を配置している。


 天夜叉は街から小型の荷車を縄で連結させ引っ張り、森の入り口物見櫓に停める。取った薬草、ホーンラビットなどを一台分乗せ街に戻り、それの繰り返し。依頼をこなしながら思いに耽っていた。


 キルシュ・ライデット。この大陸で初めて出逢った人間。今は旅の仲間。野営の時、語りは静かだったがまなこの奥には意志の炎が轟々と燃えていた。ああいった眼を持つものは驚くべきほど短いときで化ける。千鶴もそうだった(小うるさいとこは苦手だが)。そして何より愉快だ。島のゴブリンが見せる連携の巧みさ、あれにはかなり憧れていた。島には友柄はいたが仲間とは違う関係な気がする。己を高めるだけに留まらない今を楽しく思う。この先も仲間と呼ぶ者が増えるのだろうか。そうだと良いな。


 天夜叉は自身に飛び込んでくるホーンラビットの角を切り落としながら考えていた。角を切られた兎は去っていく。ギルドから言われたのだ。肉と皮はもう充分だから角だけを剥ぎ取って来いと。


 

「依頼を終えた。確認を頼む」


 天夜叉はプレートを木の一枚板で作られたカウンターにカタリと置いた。


「はい!お疲れ様でした!キルシュさんは訓練所にいますよ」

「わかった。では立ち入る故、申請を頼む」



ここ数日天夜叉は初級でもできる依頼を、キルシュは武技習得の為、訓練所に通っていた。



 訓練所にてお互い報告し合っていたキルシュと天夜叉。入り口から金色のプレートを下げた3人組から声を掛けられる。大柄の男を中心に左右それぞれに軽装の男と魔術師用ローブを纏う女。


「お〜いっキルシュ!聞いたぜ。パーティ、組んだってな!」


大柄の男が声を上げた


「ああ。狙いのものは手に入ったのか?」

「おうよ!遠征の甲斐があったぜ!」


 そういうと3人組一同が片手を掲げる。そこにはブレスレットがはめられていた。


「武技も得たんだろ?いっちょ組み手どうだ?」

「ああ。願いたいとこだ」

「先に…そこの侍と…いいか?」


 軽装の寡黙そうな男が口を開いた


「まぁキルシュが組んだ相手だ。気になるわな。御仁!コイツと手合わせいいか?」

「ん。いいぞ!」

「真剣で…いいか?」

「ちょっアンタ!」

「無論構わない」

「なっ…」

 

 ローブの女があたふたし始めたが気にせず天夜叉と軽装の男が向かい合う。


「んぅ?獲物はいいのか?」

「獲物なら…ある」


3人組そろいもそろって待ってましたと言わんばかりの顔をする。


「コール」


軽装の男がブレスレットがはめられた腕を前に伸ばし魔力が籠った指でCallと文字を宙に刻む。するとその文字が宙に亀裂を生み、そこから柄が二つ。軽装の男が掴み引き抜くと双剣が現れた。


「なにぃ!?」


天夜叉の目は見開かれ顎は外れそうなほど開いた。


「いやぁーそこまでリアクション取ってくれるなんて嬉しいぜ!へへっ。なぁ?」

「嬉しい…」

「大枚はたいた甲斐があるわね!」


「いざ…」


賑やかだった空気が締まる。両者睨み合いが続いた。お互いに半身。天夜叉は右手が前手で木の棒を逆手に構えている


『杖…いやただの木の棒に見える。出立からも純粋な剣士に思う。あの逆手の棒で隙を作り、あの剣で強撃。その線か。仕掛けてみるか』


口数少ない軽装の男は心の中では饒舌だった。そして仕掛けようと上体と重心が前に向いたとこで天夜叉が突貫を仕掛けた。


『っ!』


思惑をすかされ僅かに身体が強張った、その隙で距離を詰められ逆手の棒が槍投げの構えから突き込まれる。バックステップを連続で踏み距離を取った。


『気の起こりを読まれた。それに滑らかで早い挙動。真剣での立ち合いでも躊躇なく来るとこを考えても相当場数を踏んでいる。銅級だと思わない方がいい。登録したての上級者とみた』


「身体強化。ストレングス、アジリティ」


「ちょっとそこまでするの?!」

「先手を取ろうとした矢先に取られたんだ。稽古をつけてやるようなレベルぢゃねぇと体感したんだろ。ちゃっかり刃の保護掛けてるから心配はねぇ。たぶん」

「たぶんってダメぢゃん」


 軽装の男がオーラを纏い突貫する。蹴られた地が爆ぜたかと思うと一瞬にして距離が縮められ跳躍から双剣を海老反りに振りかぶる。天夜叉は左手は刀の柄にかかり右手は棒を逆手持ちの構えで待つ


「双破山っ!」


 天夜叉は振り下ろされる刃を払うため逆手の棒で体重を乗せるようにして横薙ぎに振るった。横薙ぎが向かって振り下ろされた左側の剣とかち合い、そして流され、死に体となった横薙ぎ後の右腕に残っていた方の剣が振り下ろされる。


 未だ宙に浮いてる相手の身体に当て身をする事でなんとか凌いだ。少し後方に着地後、互いに仕切り直すため距離を取る。


 今の攻防。天夜叉は軽装の男が跳躍し振りかぶられた時点で二振り共に振り下ろされるとイメージを持ち。明らかに強化された一撃。簡単に払えまいと重心のほとんどを乗せた横薙ぎを選択。払えれば居合。力の差で払えなければ半身回転で振り下ろされた後の死に体へ一刀入れる。


しかし結果は一振りだけが振り下ろされかち合った瞬間、手首を返され流され死に体間際。刀は己の右手が邪魔で手が出ない。足首を捻り鉤爪に体重を乗せ当て身で凌いだ。軽装の男は死に体と思ってた相手からの体重が乗ったタックルに驚愕したのだった。


「惜しいだろうがそこまでだな。時間がねぇ。俺とキルシュの番だ」

「む。勉強になった………得るものはあっただろうか?」

「大豊作さ!いやぁー二刀流との立ち合いはあまりなかったからな。こちらこそ勉強になった」


 軽装の男と天夜叉が握手を交わす。


「うしっ!キルシュやんぞ!俺らは決め手を踏んでやるか」

「ああ。頼む」


大柄の男は立て掛けられた訓練用の木の斧を担ぎキルシュと向かいあった。


 キルシュは静かに頷くが武技を使う相手に技量だけで渡り合った天夜叉の動きを見て闘志が燃えていた。














***コメント


むぅー戦闘を具体的に書くのって難しいですねぇ。詳細を書こうとすると長々ごちゃごちゃとしてくるような。スタイリッシュに書けるよう登場人物と共に成長していけたらなぁと思います!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る