第9話 冒険者ギルド

 別室に連れられた天夜叉は説明を受けていた要約すると。


冒険者ギルドとは様々な依頼、魔物の討伐、護衛、詮索、未開の土地の開拓等を請け負う事を生業とする組合であり冒険者の格を表す下のランクから

ノープレート見習い

カッパー

アイアン

シルバー

ゴールド

魔銀ミスリル

金剛アダマンタイト

神鉱オリハルコン

攻勢、守勢、索敵等の技能毎にF〜Sランクで査定し、それを加味した上で決められる。格ランク毎に貢献度に応じ昇格試験を受けられる。それによりランクに応じた報酬がある。特殊情報の解禁や竜車や飛龍船の乗車資格。管理下にあるダンジョンの階層許可、各都市における免税等の特権である。


 そして特級を示すオリジナルプレート。これはギルドの管理から外れる事を示す。


 また各支部毎にその地域の特色に合わせる為、格ギルドマスターの裁量に試験内容や報酬、運営の仕方をほぼ任せている。共通しているのは格を表すランクとギルド職員が派遣されている事。格都市や支部ごとに犯罪に当たる行為も変わるのでまずは確認する事。


 そして冒険者の種類には2種類。拠点を構えその土地をホームとする者と流浪の者。その土地に居付く者に依頼の斡旋が優先される。

魔素の研究が進みその土地に長く居着くものほど身体に馴染んでいることがわかり、戦士は身体強化の差。魔法使いにとっては支配領域に差が出る事がわかってからはホームを設定する冒険者がかなり増えたのだ。


 わからない事は都度職員に相談してくださいとネルジュは言い、夜之介から出身地や今持つ技能を聴取しまとめた紙を提出しに出る。


これらの話を戦い以外ではあまり頭の回らない夜之介はうんうんと頷きながら聞き流していた。


 ネルジュが戻ってきた時にノープレートを示すガラスがチェーンにつけられたものを渡される。


「このプレートを首など目立つとこにつけてください。提示すればあなたの身分証明になります。チェーンなどは好きなものに取り替えてもいいですが、プレートは必ず紛失しないよう気をつけてください。中にあなたの情報が封じられていますので。これにて説明を終わりますが質問はありますか?」

「いや、まるでないな!」


ネルジュはジト目を向けるがいちいち気にしては進まない。


「おそらく捕物の件もあるので、査定後あなたはカッパーにすぐ上がる可能性があります。この支部では初心講習もありますがどうしますか?」

「いや、キルシュから教わるよ。そんぢゃどうもどうも」


 長い話に少し落ち着かなかった夜之介はすぐ立ち上がりプレートを首につけ足早に立ち去った。


 大型ルーキーとして注目されているがパーティの勧誘を避けているソロのキルシュが連れてきたここらではあまり見かけない和人。

人柄は陽気なようでどこか抜けていそうな第一印象を持ったが、どうにも一波乱起きそうだとネルジュは訝しんだ。




 ギルドを出て少し歩いた所で夜之介は1人の男に声をかけられる。


「なぁそこのあんた迷子か?案内してやろうか?」


禿げ頭に傷の入った強面、高めのタッパ、腕も太い。アイアンプレートを下げている。


「む、正直迷子なんだ。助かる。"猿が腰引け亭"はわかるか?」

「はんっ。こっちだついてきな」


 着いていくと人気のない路地裏の行き止まりにたどり着き禿げ頭はいつの間にか背に立っていた。


「キルシュの野郎ちょっと目立つからって調子に乗りやがって。おまけにスカート履いた変わりもんまで連れてきやがる。見ぐるみ全部置いてけや。それで勘弁して…」


天夜叉が履いている袴。確かにそのまま立っていれば見知らぬ者が見ればスカートに見えるであろう。その足が伸びて後ろ蹴りが放たれた。禿げ頭はもろに腹にくらい膝が崩れ落ちる。そこに側頭部にもう一発蹴りをくらうと壁にぶつかり尻餅をつく。


 失っていた意識が浮上し慌てて立ちあがろうとするが肩を足蹴にされ爪が食い込んでいて立ち上がれない。足首を掴むがびくともせず。こちらを覗き込んでいる傾いた無機質な黒目と目が合う。


「いぎぎっ」


肩に徐々に爪が食い込んでくる。


「何の騒ぎであるか!」


 その時、人相の悪い人が路地裏に人を連れ込んだと通報を受けた衛兵2人が駆けつけた。


「な、なぁ人相が悪いってどっちだ?」

「俺にはどちらも柄が悪く見えるが。さて…」


 肩やいかにもな顔をして壁に倒れ込む禿げ頭。肩や片足を突きつけ禿げ頭を下から睨め付けるねめつける男。確かにどちらも柄が悪い。その時屋根からフードを被った1人の男が降りてきた。


「あーこの者らは2人とも冒険者だ。成り行きは全部見ていた。この場は預からせてもらう」


そうゆうとフードを外し懐から盾に剣と杖が交差した紋章を掲げる。冒険者ギルドを示す紋章。それを持つのは職員である。


「ビラックさんか。って事は新人いびりってとこか。わかった預けよう」

「いやいつもすまんね」


衛兵2人が捌けるとビラックは天夜叉に近づく。


「夜之介だったか。もう離してやれ。震えてて可哀想ぢゃないか」

「何故名を?」

「あーネルジュだよ。さっきお前さんの担当してただろ?なんか嫌な予感がするつってなその男もギルドから目をつけられてたんだよ俺はビラック。ギルドの斥候役さ、よろしくな」


 ビラックはそう言い片手を差し出す。天夜叉はそれに応える為、足を外し差し出された手を握り返した。


「いやぁー心配する必要はなかったみたいだけど普段衛兵さん達には迷惑をかけててね。見逃す訳にもいかなかったんだなこれが。"猿の腰掛け亭"には僕が送ってくよ」

「へぇーギルド職員とやらはずいぶんと世話焼きが良いな。助かるがこいつはいいのか?」

「まぁ世話をちゃんと見るのもウチの支部の特色ってやつさ。そいつなら心配ない」


ビラックがピューっと口笛を吹くと影から大きい黒色の狼が現れ禿げ頭を咥えて去っていった。


「影法師の術か!これは驚いた」

「和人の大陸にもこのような術があるのかい?まぁそりゃあるか。この世は混ざりもんってね。それぢゃ行こうか」


 2人は"猿の腰掛け亭"へと歩き出す


「いや、にしても"猿の腰引け亭"って分かってて言ったんだろ?まるで先の彼の様を提言するとは。上から見ててバレちゃいけないのに思わず吹いちゃったよ」

「いや言われるまで間違っているのに気付いてなかった」

「そうかいそうかい。にしてもキルシュの言う通り腕は立つみたいだね。明日ギルドに来てくれ。捕物の現場検めに同行の依頼がある

。ねぐらの散策とあんたの銅級試験を兼ねてるんだ。低級への対処と森の周り方の査定。アンタなら問題なさそうだがね」

「さっそく昇級か?貢献度が何ちゃらとやらはいいのか?まだ来たばっかだぞ」

「ノープレートは単に荒事に対する体力をつけるためとか常識を身につけるためとか主に駆け出しの子どもや人のための期間なんだよ。慣れてそうなアンタには必要ないだろう?」

「常識は少し心もとないのだが」

「ははっ。それはおいおい身につくさ。身につくといいね」


 そうこう話してるうちに目的地へと辿り着く。


「それぢゃ明日頼んだよ。僕も同行する」

「ああ。よろしく頼む」


天夜叉とビラックはそれぞれキルシュとネルジュに事の端末をを報告する。いずれも感想は知らん奴にほいほい着いていくな、やれやれと一致した。


 かくして天夜叉は冒険者と成る事が出来たがその立ち上がりはほんの少しだけ騒がしいものとあいなった。

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