第3話 立花千鶴
大和大陸の中心部、大江戸城天守閣。国主に家老、家臣が一同集まる中、
大太刀を横に置き、艶やかで腰ほどまである黒髪の女、立花家長女・千鶴が上座に座す男に平伏していた。
この男。大国主・
「立花千鶴。これより其方を天夜叉目付役とする。」
「はっ。全霊をもって全う致します」
「ふっ相変わらず硬いなお主は。そこまで気負わずと良い。アレは人の手でどうこうできるものではない。それに此度は絶好の機会だ。奴についていき世界を知りお主の祈願である"
「ははぁ。上様の御心、大変有り難くそれこそが最上の糧となります」
千鶴が下げていた頭をさらに下にと下げた。
「面を上げい。その凛とした顔を良く見せてくれ………うむ。大和の女は凛々しく逞しい!安寧ぞ。では千鶴よ支度もあろう下がれ。
皆も下がって良い。天夜叉との宴、存分に楽しめ」
千鶴、家臣団、参勤に来てた国主が去った後、大国主、家宰を勤める二人、合わせてが残っていた。
「
「そうでしょう。夫は刀でしか敵を両断できませんが、あの子は視線に口、態度を持ってして両断しますれば。試合前、入り乱れた縁談もバッサバッサと口だけで斬り捨てました。こられた殿方達が不憫なほどに」
「ふっ、両親の血を濃く継いだな」
「夫の血はわかりますが…はて?」
こてんっと雪華が首を傾げ、もう一人の家宰である
「友親様。そろそろ冒険者ぎるど招致の件、詰めましょう。答えの刻限まで三日しかありません」
「ふむ。いかにして有り様を計るか。か、わかった。」
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五光の間という部屋にて千鶴と雪華が向かいあっていた。
「さて、千鶴。外の大陸にてお役目以外にあなたが成すべき事。心得ていますね?」
「はっ。見聞を広める事。まだ見ぬ強者をこの地平太にて屠り去る事。そして何より立花の名を世界に知らしめる事にございます」
「違います」
「ん?」
雪華がピシャリと指摘し千鶴はこてんっと首を傾げる。
「いいですか千鶴。あなたが真に成さねばならない事は子を生し、私の元へ連れてくる事です。」
「はぁ〜。母上…。これよりしばしの別れとなりましょう、そんな時にそのようなじょうだ「冗談ではありませんよ?千鶴、縁談騒動の件、もう頭から抜けてるのですか?あまりの言われように不能の者まで出たと聞きます。
お可哀想に。大した功も立てられないのにそこに不能となれば何をたてられましょうか」
「母上、それは少々毒が過ぎます」
「あなたには言われたくありませんよ千鶴。それに人の本意、嘘か真か。見抜けぬ様ではまだまだです。母ではなく立花家の長として
いい人を見つけてくるまでは立花家の敷居を跨ぐ事を許しません」
「なっ…それはいささか無茶がすぎ「安心なさい。出立までに見抜く術、そして立花家相伝"裏四十八手"をあなたに仕込みます。いい人を捕えるには必須科目です」
「し、しかし「しかしもカカシもありませんよ」
千鶴が雪華の怒涛なる口勢を受けてる時、
「母上。
立花家次男・直継である
「入りなさい」
「直継!おねぇちゃんが大和をしばらく離れる事、許しなさい。私がこれほどまでに直継と離れる事に心を痛めているのです。あなたもさぞ辛いでしょう。ですが大事な御役目。辛抱ください」
直継は襖を開けたままの姿でポカンと口を開いていた。
「あ、姉上、私の事は万事心配御無用。御役目に専念してくださいませ」
「全く貴方は…直継の事となるとそそっかしい。悪い癖ですよ?直継、そんなとこにいつまでもいないでこちらへ」
こうして立花家はしばし別れの後間を過ごし、千鶴は出立の用意のために離れた。
「さて、直継。これで邪魔者がいなくなりなす、婚姻の件つつがなく進めなさい。」
「母上、邪魔者とはあまりな言い方ではないですか…」
「あなたの優しさは美徳ではあり母も誇らしいです。ですが時には無用です。それに昔あなたが懇意にしてた子を連れてきたでしょう?あの時、千鶴の形相ときたら牛魔王にすら引けをとりませんでした。して裏四十八手の習得はどこまで進みましたか?」
「そのようなお顔見た事ありませんが…。それが二十七手目に手こずっていまして」
「女には男に決して見せない顔を持ってるものです。
あの手は重国様の体格状、私には経験がありませんが…お義父上に教えを乞いなさい」
「承知致しました」
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大江戸の城下町は今、祭りで賑わっている。特に目を見張るのが子ども大人問わず、武士にいたるまで体のあちこちに鈴を赤と青の紐で括り付けている。シャンシャンと鳴らし楽しげだ。あとは木製のお立ち台。上には太鼓が並んでいる。明日、天夜叉による"鬼舞"が披露されるのである。
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