第14話 69

「69?」

 とスノーホワイトが数字を見て、愕然としている。


 クククク、と俺は笑った。


「もう逃げられないぜ」

 と俺は言った。


「69ってなによ? ……最悪」

 とスノーホワイトが言った。


「クククク」と俺は笑った。

「69」

 69の意味を俺はわからなかった。

 ココに来て数字?

 どういうこっちゃ?


「スノーホワイトちゃんは、69の意味を知っているんじゃないのか?」

 と俺は尋ねた。


「……知らないわよ」

 と彼女は泣きそうな顔をして言った。


 俺も知らないのだ。

 これは参った。本当に意味がわからん。


「いや、君はこの数字の意味を知っている」

 と俺は言った。

 スノーホワイトちゃんが知らなければ、試練は積んだのだ。


 やっぱり試練、っていうだけあって意味不明なモノが出るんだな。


「……」

 彼女が震えている。


 やっぱり彼女は69の意味を知ってそうだった。


「俺とは69はできないのか?」

 と俺は尋ねた。


「出来るわけないでしょう」とスノーホワイトが言う。


「出来ないってことは、69の意味を知ってるんだな?」

 と俺が尋ねる。


「……」


「俺とは68までってことか?」


「何を言ってるの。意味がわかんない」

 とスノーホワイトが言う。


「スノーホワイトちゃんは、69をやった事はないのか?」


「やったことある訳ないでしょ」

 とスノーホワイトがキレている。


「……ヘンゼル君はあるの?」

 とスノーホワイトが尋ねた。


「しょっちゅうやってる」と俺は嘘をついた。 


「あの獣人の女の子と?」

 と彼女が尋ねた。


「79までやったことがある」

 と俺が嘯く。

 69以上の事をやった事があると伝えたくて、79の数字を出す。


「穢らわしい」とスノーホワイトが言った。


「俺と69やろうか? 時間が無い」と俺は言った。

 一体、69って何なんだよ。

 俺は持っていた砂時計をスノーホワイトに見せた。全然、時間は経過していない。まだまだ時間はある。


と69をやるぐらいなら死んだ方がマシよ」

 とスノーホワイトが言う。


 スノーホワイトちゃんがお前って言った。

 そんな口が悪い子だっけ?

 俺と69やるぐらいなら死んだ方がマシ?

 69って一体なんなんだ?


「スノーホワイトちゃんの事は死なせない」

 と俺が言う。

「どんな事があっても、生きてココから出よう」


「キモっ。死ね。ヤリたいだけじゃん」

 とスノーホワイトが言う。


 なんか幻滅な口の悪さじゃん。


「絶対にアナタのは舐めないし、私のは舐めさせない?」


「えっ? 舐める?」

 と俺は首を傾げた。

 俺達、飴ちゃんの話をしてたっけ?


「俺のは甘いぜ」

 と俺は言ってみる。

 飴ちゃんの話をしていないはずだけど、話を合わせるために言ってみた。


「甘かったら病気じゃん」

 とスノーホワイトが言う。


「いや、普通は甘いだろう」

 と俺が言う。


「えっ? 甘いの?」とスノーホワイトが驚いている。


「あぁ」と俺は頷く。

 どこで、どうねじ曲がって飴ちゃんの話になったか知らんけど、飴ちゃんは甘いもんである。

「甘ぇーよ。舌でコロコロと動かすと甘い味が広がるんだ」


「卑猥」とスノーホワイトが絶叫するように言った。


 飴ちゃんを舐める事が卑猥なのか?

 意味がわかんねぇー。


「スノーホワイトちゃんは、なぜか舐める事に抵抗があるみたいだけど、俺は好きなモノならいくらでも舐められるぜ」

 と俺はペロペロキャンディーを思い浮かべながら言った。


「最低」

 とスノーホワイトが言った。


「そうやって、私のも、ずっと舐めるつもり?」

 と彼女が冷めた目をして尋ねた。


 いや、スノーホワイトちゃんが持っている飴ちゃんの味も知らんし。

 でも、まぁ、飴ちゃんなんて、大抵ずっと舐めれるわな。


「舐め続けられると思う」

 と俺が言う。


「……死ね」と彼女が呟いた。


 どうして俺は飴ちゃんを舐め続けられる、と答えただけで死ねと言われているんだろうか?


 スノーホワイトちゃんには飴ちゃんの話は、なぜか禁句らしい。

 話を69に戻そう。


「69をしよう」と俺は言った。


「やるか!!!」

 とスノーホワイトが叫んだ。


 そして彼女はルパ◯三世が変装を解くみたいに、顔の皮をベリベリと剥がした。

 スノーホワイトの顔が捲れ、絶世の美女の顔が現れた。

 髪は緑で、色白で、パッチリ二重、どちらかと言えばタヌキ顔の可愛らしい女の子である。


「お前は……」

 と俺は尋ねた。


「建築の魔女と言えばわかるかしら?」

 と彼女が言った。


 建築の魔女? 

 天才魔女姉妹。

 ハートのお姉ちゃん。

 たしか名前はダイヤ。


「私の負けよ」

 と彼女が言った。


 いや、俺、何も勝ってねぇーよ。

 つーか、勝手に負けてんじゃねぇーよ。


「なんでお前がココに?」

 と俺は尋ねた。 


「おかしな家は、ルールを説明しないと効果は発動しないの。ルールを説明する事によって暗示をかけているのよ。暗示にかかると制限時間が来た時に長い眠りに入るのよ」


「何を言っているのか、サッパリわかんねぇー。暗示? 69から意味がわかんねぇーんだよ」


「このおかしな家の敗北は、私が建築の魔女であることがバレること。試練を全てクリアすること。アナタの試練を妨害するつもりだったのに、こんな変態に色んな事を強要されるなんて」

 と泣きそうな顔をして彼女が言った。


「俺、何も強要してねぇーよ。お前が作り出した試練だろう」


 彼女は扉を開けた。

「この手は使いたくなかったけど、もういい。マジで死ね」

 と彼女が言って扉から出て行った。


 俺も建築の魔女に付いて行く。

 だけど彼女が出て行った扉は鍵がかかっていて開かなかった。


 俺1人で監禁された?

 試練は? もう試練とか関係なくなったんっすか?

 なんか壁が迫って来ている。

 このままいけば壁に挟まれて、ペシャンコになってしまう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る