第12話 裸

「ええがな、ええがな。これは俺がやりたいんじゃなくて、試練なんやで」

 と俺は関西弁で縄を解き、彼女の服を脱がせようとした。

 もちろん下半身は興奮している。

 興奮しているのがバレないように、股でアレを挟んでいた。


 バシッ、と縄を解いたスノーホワイトに殴られた。


「痛っ」

 と俺は言って、頬を触った。


「変態」とスノーホワイトが言う。


「いや、違うんだよ。これは試練なんだよ」

 と俺が言う。

 そして扉に書かれた文字を指差す。


 スノーホワイトが、扉に書かれた文字を見て、もの凄く嫌な顔をした。


「ヘンゼル君」と彼女がか細い声で言った。「図書館に入ったんじゃないの? 図書館に入ったなら知識の試練になるはずだけど」


「服を脱ぐって難しい事じゃん。誰でも簡単に脱げるもんじゃない。そこを狙った知識の試練なのかもしれない」

 と俺が言う。


「絶対に嘘だ。コイツ、変な建物に入ったな」

 とスノーホワイトが、ボソリと呟いた。


「えっ、なんか言った?」

 聞こえなかったので、俺は尋ねた。


「なんも言ってないよ」

 と彼女が言う。


「さぁ、さぁ」

 と俺が言う。


「無理」

 とスノーホワイトが、顔を真っ赤にさせて言う。


「これは試練なんだ。さぁ、脱ぐんだ」


「いや」

 と彼女が首を横に振る。


「もしかして君は」

 と俺は言った。

 もしかして君は焦らせば焦らすほど男が興奮する事を知っているのか?


「違う。私はスノーホワイトよ」

 と彼女は、そう答えた。

 

 えっ? 急に自分がスノーホワイトである事を言い出したけど、どうしたんだ?

 俺は彼女をキョトンとした目でジッと見つめた。


「……わかった。脱ぐから」


「君がスノーホワイトだという事は知っている」

 と俺は言った。


「後ろ向いといて」


「はい」と俺は言って、壁に視線を向ける。

 そして彼女が脱ぐ姿をチラチラと見る。

 ローブを脱ぎ、制服のボタンを外していく。

 何度目かで、顔を真っ赤にしたスノーホワイトと目が合った。


 どうも、みたいに俺は会釈した。


「見ないで」

 と冷たい声で彼女に言われた。


 チラチラ見るのはノーカンである。


 そしてついに、彼女は下着だけになった。


 処女雪のような白い肌。

 育った大きな胸。

 恥ずかしいのか、出来る限り、胸を腕で隠している。

 下着は上下ともに白だった。


「見ないで。見ないで。見ないで」

 とスノーホワイトが顔を真っ赤にして呟く。


「大丈夫。目は瞑ってるから」

 と俺が言う。

 こんなに美しいモノが目の前にあるのだ。目を瞑る訳がない。むしろいつも以上に目は開いていた。


「ガッツリ、目開いてんじゃん」

 とスノーホワイトが言う。

 いつもはか細い声なのに、声量が大きくなっている。


「それじゃあ、おパンティーとブラジャーも脱ごうか?」

 と俺はヨダレを垂らしながら言った。


「いや」と彼女が言う。


「俺が脱がしてあげてもいいんだぜ」

 と俺が言って、彼女に近づいて行く。


 スノーホワイトは扉の方に逃げて行く。

 そして試練の扉を開けて、次の部屋に行った。


 試練の扉を開けて……。


 二人とも裸になれ、って試練なのに、下着でもOKなんて、そんな……。

 もっと俺を楽しませてくれよ。


 俺は砂時計を持って次の部屋に入った。

 次の部屋の試練は、『キス』とだけ書かれていた。


 スノーホワイトは、部屋の隅で三角座りして、うずくまっていた。

 俺の杖は相変わらず振動している。

 制服と魔導書(料理本)は邪魔だから置いて来てしまったけど、杖だけは持って来ていた。

 どうどうどうどう、と俺は馬をあやすように黒き水晶を撫でた。

 








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