第11話 おかしな家

 扉を開けると、そこには何もない空間と1人の女の子が縄で縛られていた。

 しかもハムのように縄でグルグルに縛られている。


「大丈夫か?」

 と俺は言いながら、縄で縛られている女の子の元へ。


 もうプレイが始まっているのかもしれない、と思った。

 そういうコンセプトの店なのかもしれない。


 近づいて女の子の顔を見る。

 見知った女の子だった。


「スノーホワイトちゃん!!」

 と俺が声をかける。


 口にタオルを巻かれているせいで、「んー、んー」と彼女はうねる事しか出来ない。


 俺の杖が振動している。

 いや、下半身の杖じゃなくて、黒き水晶が振動している。


 どうどうどう、と俺は馬をあやすように水晶をなだめた。

 このおかしな家に入った時から、黒き水晶は何かをビンビンに感じている。

 黒き水晶の能力は魔力吸収である。

 黒き水晶をなだめると俺はスノーホワイトちゃんの口に巻かれたタオルを解いた。


「ヘンゼル君」とか細い声で彼女が言った。


「どうしてスノーホワイトちゃんがココにいるんだい?」

 と俺は、出来るだけカッコ付けて尋ねた。


「教室にいたら、気づいたらココにいたの」

 とスノーホワイトが言う。

「もうすでに、……」と彼女が切羽詰まったような声で言った。「建築の魔女に攻撃されている」


「どうして君に、それがわかるの?」

 と俺は尋ねた。


 ココは校庭の中にある風◯店だぜ。

 建築の魔女の攻撃じゃなくて、エッチな店だぜ。

 つーことは、スノーホワイトちゃんが……あんな事やこんな事をしてくれるのか? 鼻血ブシューーー。


「……私は建築の魔女に攻撃された事があるの。おかしな家から出れなかったの。そのせいで3年間も眠っていたの」

 と彼女が言う。


「どうして君が攻撃される必要があるんだい?」

 と俺は尋ねた。


「天才魔女姉妹と地元が一緒なの。……もともと私の方が強かったの。だから妬まれて」と彼女が言う。

 とても言いづらそうに言っていた。


 つまりあれか? 16歳引く3年間の眠りで精神年齢は13歳ってことか? 体は大人、でも精神年齢は子ども。逆バローのアイツなわけか。


「わかった」と俺は言った。


「本当?」

 とスノーホワイトが尋ねた。


「本当だよ。君の事は必ず俺が守る」

 と俺は言った。


「ヘンゼル君には、この建物がどんな建物に見えたの?」

 とスノーホワイトが尋ねた。


「どうして、そんな事を聞くんだい?」

 と俺は尋ねた。

 ヌキ、と書かれた風俗店に見えた。そんな事を言えるはずがない。


「この建物は、建築の魔女が攻撃したい相手が入りたい建物になるの」

 とスノーホワイトが言った。


「図書館」と俺は答えた。


「それじゃあ5つの試練は知識になるわ」


「5つの試練?」

 と俺は首を傾げた。


「『おかしな家』に入ってしまうと5つの試練が待っている。その5つの試練をクリアできなければ『おかしな家』からは出れない。制限時間は、そこにある砂時計が落ちるまで」

 とスノーホワイトが言った。

 彼女の視線の先には手のひらサイズの砂時計があった。


「砂時計が落ちきるまで2時間ってところかしら」

 とスノーホワイトが言う。


 おかしな家の説明。砂時計が落ちるまでの時間。スノーホワイトちゃんって色んな事を知っているんだな、と俺は感心した。

 さっき図書館って嘘をついてしまったけど、もしかして入った建物によって試練の内容が変わるタイプなのかな?


「もし試練にクリア出来なかったら?」

 と俺は尋ねた。


「眠りにつく」

 とスノーホワイトが答えた。


「それで君は3年間も眠ったのか?」

 と俺は尋ねた。


 ポクリ、とスノーホワイトが頷く。


「扉に試練の内容が書かれているはず。その内容をクリアしなくては次の部屋には入れない」

 とスノーホワイトが言った。


 扉は2つあった。

 入って来た扉には何も書かれていない。

 扉が開くか試してみると扉には鍵がかかって開かなかった。

 もう1つの扉にはA4サイズの紙に文字が書かれて張り付けられていた。


『2人とも裸になる』

 

 どうやら第1の試練は裸になる事らしい。


 建物によって試練が変更される。

 俺の頭の中に様々な数式が流れた。

 全てわかった。

 俺が入ったのはエッチな建物である。

 そして、これから起こるのは5つのエッチな試練である。

 俺達は試練を越えなければいけない。

 試練だから、あんなことやこんなことをしても……。


「へ、ヘンゼル君」

 と縄に結ばれて、床に寝ているスノーホワイトが言った。

「どうして服を脱いでいるの?」


「第一の試練が裸になることなんだ」

 と俺が言う。

 パンツ1枚になり、縛られた彼女の元へ。


「君も脱がしてあげる」

 と俺は言った。


 キャーーーーー、とスノーホワイトが悲鳴を上げた。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る