第3話 幼馴染の獣人の女の子と同居生活スタートってマジかよ!

 俺には魔力が無いのでサッパリわからんけど、魔法には得意分野があるらしい。才能って言えばいいんだろう。

 アブーは回復と土属性の魔法に才能があるらしい。


 ちなみに俺の才能は、ありあまるカリスマ性だろうか。

 それに日本の知識がある。この世界でウォシュレットが気持ちいい事を知っているのは俺だけだろう。


 アブーが3人の男を回復させた。

 3人とも若いドワーフ族で黒ひげを生やし、魔法学校規定の制服を着ていた。

 誰がどう見ても魔法学校の生徒である。3人とも顔が若干違うけど似た様な顔だった。身長は140センチぐらいで体格はゴツい。

 助けてくれてありがとう、みたいな礼を言われて適当に自己紹介をした。丸い眼鏡をかけているドワーフがドックという名前で、眠たそうな奴がスリーピーという名前で、アホそうな奴がドーピーという名前である。


「どうして倒れていたんだ?」

 と俺はドワーフに尋ねた。

 やっぱり煉獄の魔女に倒されたのか?


「地元から出て来て、嬉しくなりすぎて可愛い女の子に声をかけたら気付いた時には気絶していたんだ」

 とドックが言った。

 地元から出て来て、ということは彼等も新1年生なんだろう。


「やっぱりあの子にヤラれたのかな?」とドーピー。「それしかないだろう」とドック。「そんな事より眠たい」とスリーピー。 


「でもよかった」とドックが言った。「入学していたら決闘をもちかけられて学生証を奪われていたかもしれない」


「学生証?」と俺は首を傾げた。


「もしかして知らないのか?」とドックが言う。「学生証をかけた決闘が魔法学校の公式で認められているのだ」


 決闘が学校の公式で認められている? どんな学校だよ。めっちゃ嫌なんですけど。


「戦うことによって、より強い魔法使いを生み出したいという学校の方針らしい」

 とドックが言う。


「でも学生証を奪われたからって、別に大した事ねぇーだろう」と俺が言う。


 いや、とドックが言った。


「学生証を奪われた生徒は……奪った相手の言いなりになる」とドックが言った。

 

 なんじゃそれ?


「学生証を奪われないように学生達は強くなるのだ。学生証を奪うために学生達は強くなるのだ」

 とドックが言う。


 そんな弱肉強食みたいな世界はイヤだよ。

 もっとハッピーな学校ライフが送りたいだけなのに。


「わかった。そういう事なんだね」とアブーが言い始める。「ヘンゼルは全校生徒の学生証を奪って一番になるんだね」


「そんな物騒なことしねぇーよ」と俺が言う。



 魔法電車がやって来て都市へ。

 助けたドワーフとも別れ、俺達は借りているボロアパートに向かった。

 魔法学校には寮が無い。その代わり学校の近くに安いアパートが多い。

 どこまでもアブーが付いて来るので、近くの場所にアパートを借りたのかな、と思った。


 引っ越しのために一度だけボロアパートに来ていたから、迷いなく自分が住むアパートに到着できた。


 外観はレンガ造りでオレンジ色をしていた。

 レンガ造りの建物が多い地域なのだ。

 一見、大きなお屋敷に見えるけど扉を開けて中に入ると8つの部屋がある。

 俺の部屋は103号室だった。


 鍵を取り出して扉にさす。

 そして俺はアブーを見た。

 彼女は俺の部屋の前まで付いて来ていた。


「お前はどこに部屋を借りたんだよ?」

 と俺は尋ねた。


「ココだよ」

 とアブーが嬉しそうに言った。


「へー、たまたま一緒なんだ」と俺が言う。「何号室?」


 アブーが扉に書かれた数字を見る。


「103号室」

 とアブーが言う。


「へー、たまたま一緒じゃん」

 と俺が言う。


 俺は扉を開けて中に入った。


 中は結構広い。ワンルームで10畳ぐらいはある。

 すでにベッドが置かれていた。

 俺はベッドに寝転がった。

 俺だけの城である。

 この部屋から楽しい学校生活を送るのだ。

 この部屋に付き合った女の子を入れて、あんなことやこんなことをするのだ。

 ありがとうございます。


「よいしょ」

 と声が聞こえた。

 アブーが背負っていた大きなリュックを下ろした。


「なんでお前が俺の部屋に入って来るんだよ」

 と俺は怒鳴った。


「オウチ、カネナシ、ヘヤ、カリレン」

 とアブーが言う。


「なんでカタコトなんだよ」と俺が言う。


「今日からよろしくお願いします」

 とアブーが頭を下げた。


 幼馴染の獣人の女の子と同居生活スタートってマジかよ。

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