第11話 小噺①(桑名真凜とその友達)

 これは、本堂真紘の後輩——桑名真凜と、その友達——奏由美の小噺。


 *** *** *** *** 


「――先輩、うまくやってるかなぁ」


「なにー? もしかしてまたあのサークルの先輩のこと考えてんの? なんだっけ、ほー、本田? 本間? 真白だっけ?」


「本堂ね。んで真紘。本堂真紘先輩」


「わーフルネで記憶とか流石すぎ~。真凜ガチ恋じゃん」


「うん、ガチ恋だし」


「あっつ~。あれでしょ、前見た"ザ・普通"って感じの人でしょ? 真凜の好み……にしてはちょっと毛色違くない? なんで好きなの?」


「うーん、なんて言うんだろうね。モノ珍しいって言うか、興味深いって言うか……」


「なにそれw 小動物じゃあるまいしw」


「小動物では……確かにないね……もっとこう、なんていうか……」


「えなに、もしかして二人きりだと野獣とかそういうやつ? ムッツリ的な?」


「違う違う。なんていうか、"ほっとけない"じゃないけど、この後この人がどうなっていくのか近くで見てたいなーって、そういう感じ」


「……真凜」


「え、どしたの由美」


「……アンタ、それ愛だよ……お母さん、マリンちゃんが愛を見つけてくれた嬉しさで泣いちゃうわ」


「いやいや急にママ化止めてよ。しかも愛なんて大げさだし」


「いやいや、だって大事なことじゃん? 好きな人を愛せるかどうかってさ」


「ん? フツーに好きな人は愛せるくない?」


「そういうもんじゃないのよ真凜。男女の世界はね、アンタの思ってるよりずっと複雑で混沌としてるもんなの。それこそ今私が飲んでるキャラメル抹茶ベリーカスタードフラペチーノアイストッピングみたいにね……見た目や名前で理解しているつもりでも、そんなの上辺だけ。口にして始めて分かるものなの……いやこれマジで甘すぎて無理真凜あげる」


「そういうもんなのかなぁ……ま、確かにあんまり経験ないから分かってないのかもだけど……て甘ッッ! なにこれ舌溶けそうなんだけど! ヤバっ! え、いや無理!」


「これが愛よ……真凜」


「いや違う!! 甘いだけだって!!!! てかなんでアイストッピングしたし!」


「これも勉強だと思って、ママの分まで飲んで頂戴、真凜ちゃん」


「変なノリで私に廃棄物処理させるなぁーーーーーーー!!!!」


 流行りのお洒落なコーヒースタンドで、今日も二人の日常は過ぎていく。

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