第31話 救国の女神はアルデバイトを奪還した。

カオカ達を撃破したメーライト達。

メーライトは半魔半人と聞いて、キチンと人として埋葬してからアルデバイト城を目指した。


アルデバイト城に向かう道では、魔物の群れがカオカ達の後を追うように砦を目指してきていたが、半魔半人部隊はいなかったのでメーライト達の敵ではなかった。


老騎士とハサンドムが震え上がるパレスドラゴンすら、アルーナ達は奪い合うように、メーライトに良いところを見せたい一心で襲いかかっていく。


アルティとアルーナの剣撃は物凄いものがあり、アルティが馬車よりも大きなアイスサイズを作って、パレスドラゴンの首を刎ねて見せると、アルーナは「舐めんな!月の戦乙女の本気だ!ナイブレイド!必殺!レイブレイド!」と言って、アルデバイト城に匹敵する大きさの、光の剣で真上から一刀両断してしまう。


「やりすぎです」

「アンタ達、負担が全部神様に行くんだから、自重しなさいよ」

「今ザイコンが出てきたら困るって」


メーライトが力強く「私ならまだ平気です!」と言うが顔は青白い。


アーセワが「アルーナ、アルティ、神様が倒れたら許しませんよ」と睨みを利かせながら、メーライトに花の蜜入りの水を勧めてくる。


こんなに楽しい旅路はないとメーライトは喜び、多少の無理でもなんとかしてしまう。カオカ達を倒して7日してから到着した、アルデバイトの城は、思いの外荒れておらず、略奪行為も起きていなかった。

だが、あのアルデバイト陥落の日に残った人々に生き残りはいなかった。


メーライトはアルティ達に警護を頼んで生家に顔を出す。

一年数ヶ月振りの生家には、懐かしい匂いはなく、外壁に近いこともあったのだろう、ナイヤルトコの兵士達に荒らされていた。

それでも母が家事をする時に着ていたエプロンや、父が出かける時に被りたいと珍しくゴネて買って貰っていた帽子、姉が宝物にしていた、小さな指人形は見つかった。


指人形は、昔まだ仲の良い時に、メーライトも遊ばせて貰った事がある。

2人でお姉ちゃんとメーライトの立場は変わらないが、指人形のメーライトは健康体で、指人形のお姉ちゃんのお手伝いをするねと言うと、お姉ちゃんは「ありがとうメーライト」と言って、「じゃあそこのお芋をこっちに持ってきて」と指示を出す。

2人で楽しく遊んだ事を思い出すと、あのナイヤルトコが攻め込んできて、顔を歪めてメーライトを捨てた姉との解離に涙が出てしまった。


「メーライト、メーライトにはアル達が居るから元気出してよ」

「うん。ありがとうアルティ」


いつの間にかメーライトの横にいたアルティの慰めに、メーライトはありがとうと言うが、アーセワは眉間にシワをよせて「アルティ?仕事はどうしました?神様と離れても平気なあなたが、後続部隊に到着の知らせをする事を、神様からも命じられましたよね?」と言う。


「キチンと王子の馬車まで行ってから言ったよぉ。メーライトの所に早く帰ってきたかったから、頑張ったんだよぉ〜」


頑張るという事は負担は全てメーライトに向かうので、アーセワが「あなたまた無理をしたのね!?」と怒ると、メーライトが「アーセワさん、私なら平気だよ」と、アーセワを止める。


アーセワはメーライトが言えば大人しくなるが、ドヤ顔のアルティを見ていると、「ですがやはり示しがつきません」と言ってしまう。

アルティは嬉しそうに「アーセワは怒りん坊だよねメーライト」と言いつける。そんなかしましいやり取りにメーライトはいつの間にか笑顔になっていた。



「この家を直して住めるかな?」

「神様?どうせなら城のそばにデデンとスゲェの建てて貰おうぜ?」

「えぇ?肩が凝るよぉ」

「確かに、あの王子が近くにいたら、しょっちゅう来られて嫌だよねぇ」

「それならあの王子様が神様に「こんな家ではダメです」とか言いそうじゃない?」


もう何かにつけて、メーライトの話からクサンゴーダの話に繋がり、クサンゴーダはダメだ、メーライトを守るぞと言う話になる。


そのクサンゴーダ達、後続が到着したのは5日後の事だった。


アルデバイトは沸きに沸いた。

奪還の戦果にクサンゴーダはついてきた兵士達の前で、メーライトに感謝を告げて、救国の女神として讃えた。だが、実際に問題は少ししか解決していない。


ザイコンに酷似した半魔半人の兵士を倒したが、それだけでザイコンを倒していない。


だが、ザイコンに酷似した半魔半人を倒せてしまった事が、アルデバイトへの帰還を急がせてしまう結果になる。


メーライトは生産職の使徒達を呼び出して、兵士達と城と街の復興に努める。

砦に作ったアルデバイトの街を復興した経験から、人々は使徒達のいう事を聞き、完全に機能して復興していく。城の書庫も最低限が無事だったので、メーライトは更に移送に適した使徒を呼び出して、城と砦を定期便のようにつないで人々を城へと戻した。


だが、砦の暮らしが良かった者や、城周りに思い入れのない人間や子供を持つ親達は城への帰還を断り、砦に住む事にしてしまった。


これに関してメーライトはクサンゴーダに謝ると「いえ、メーライト嬢の仕事が完璧だった証左です。誇りに思ってください」と逆に賞賛を送ってきた。


城の奪還から半年、ザイコンの侵攻を恐れて注意したが、結局ナイヤルトコは大人しく、意味や理由を探したが、メーライト達には分からずじまいだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る