第30話 救国の女神は半魔半人部隊に勝利する。

カオカとメーウの邪魔が入っても一度目は、アナーシャの矢とアジマーの魔法で落下前に迎撃できたが、今度はカオカが飛び立ってしまう。


アジマーとアナーシャの攻撃をメーウが身を挺して防ぎ、その間にカオカが落ちてきてしまう。


「防いでみせる!皆は私の盾の中に!隔絶結界!アイソレーション・ウォール!」


アーシルの盾の中に入ると、アーセスが「風の精霊!突風!」と指示を出し、カオカの攻撃は直撃しないで済む。


だが、逸れた攻撃でも余波はとてつもないもので、吹き飛んだアルーナ達は慌てて立ち上がるとアーシルが傷だらけで蹲っていた。


アルーナが心配そうに「アーシル!」と声をかけると、アーシルは「平気」と言い、「…立つよ。盾使いは仲間を守るんだよ。私のアイソレーション・ウォールは防げたんだ。身体の小さい私がダメなだけ。神様の使徒はこんな攻撃には負けない!」と言いながら立ち上がる。


血だらけのアーシルを見て、メーライトが「アノーレさん!皆を回復して!皆!私は大丈夫だからもっと力を奮って!」と指示を出した。


「聞こえた。メーライトの声」

「おうよ。やってやろうじゃん」


アルティとアルーナが前に出ると「甘い!今度は三位一体で潰してやる!」とカオカ達は跳んだ。


「アーシル、あなたの盾は奴らの攻撃に負けてなかった」

「そうだよ。ダメなのは小さく弱いこの身体なんだ」


アーセスは「なら合わせるよ。私が台座を作る。補助をするから受け止めよう」と提案をした。


「わ、助かるよ」

「私達はチームよ」


「なら一個やってやろうじゃん」

「アルーナ?」


「アーシル、この盾は内側から攻撃できるか?」

「やれるよ」


「よし、カウンターをキメるぞ。一体ずつ倒す。目標を決めるぞ」

「あんな高く跳んでクルクル混ざってるのに?」


確かにカオカ達はクルクルとドリルのようになっていて狙いにくい。

一体に狙いを定めるのが難しい状況にアルーナが苛立つとアナーシャが「読み勝ちね」と言った。


「アナーシャ?」


アナーシャはニヤリと笑うと、「奴らの見た目って似てるから、相手に合わせて矢を一体ずつ変えたのよ。何色にする?」と聞く。

よくみると背中に刺さった矢は燃えているもの、放電しているもの、冷気を放っているものがあった。


これなら狙えるとわかったアルーナは「アナーシャ!デカした!皆!赤狙いだ!」と指示を出していた。



「アイツら、中々落ちてこない」

「バカだからだろ?バカは高いところが好きなんだよ」

「勢いつけてんでしょ?」

「これでトドメって?」

「それが命取りだよ。土の精霊…アーシルの台座になって」


カオカ達が超上空に跳んでいる間に台座が出来上がり、アーシルが「わ、楽ちんかも。ありがとうアーセス」と言って盾を構える。


アルーナが「お前ら…カウンターで必殺技だぞ!必ず殺せる技だかんな!」と指示を出すと、アルティが「皆必殺技持ってんの!?アルにはないよ」と言いながら困った顔をする。


「あー…、アルティって作者が決めたからか。神様なら自由にしてくれてたからなー」

「作者めぇぇぇ」


「なら適宜だ!任せる。アテにしてるからな」

「よろしくねアルティ」

「期待してる」


アルティは皆から言われて気持ちよくなり「任せなさい!」なんて言っていた。



カオカ達も準備が整ったのだろう。

耳をつんざくような「キィィィ」という音を出しながら迫ってくる。



「千年竜のブレスすら止められる!宮廷料理人の実力を見せてやるんだから!隔絶結界!アイソレーション・ウォール!」


アーシルの盾が張られると、アルーナが「今度こそ撃ち落とす。月の戦乙女を舐めるな!ナイブレイド!行くぞ!タイダルウェイブ・レイ!」と言って構えを取る。


「削ぎ落とす!フレイムアロー!」

「私も火!消滅必至!インフェルノフレイム!」

「なら追い風!風の精霊!竜巻を起こして!」


皆それぞれが攻撃を繰り出し、カオカ達が「狙いはメーウか!?」、「この穿孔状態でメーウのみを狙うのか!?」、「ぐぉぉぉっ!?」と声を上げる。


攻撃自体は悪くない。

アーシルの防御を抜けて攻撃に、無防備なメーウが傷だらけになり、後少しで倒せる時、一度目の攻撃で傷だらけだったアーシルが、防御の衝撃で血を吐き、防御壁は弱々しい光になる。


「メーウ!お前の犠牲は無駄ではない!」

「この勝利はお前のものだ!」


カオカとケシャーの声に「甘いっての!」と言って、アーシルと一緒に盾を構えたのはアルティで、「よっこいしょぉぉぉっ!」と言いながら押し返す。


「2人なら負けない!アーシル!」

「負けないよ!助けてくれてありがとうアルティ!」


「よっしゃあ!殺すぞぉぉっ!」

「おう!」

「任せなさい!」

「もう一撃!」


再度放った必殺技でメーウは吹き飛び、そのまま絶命する。


メーウがやられたカオカとケシャーは、距離を取ると「メーウ、すぐに行くぞ」、「この使徒どもも道連れにしてやるからな」と言って再度飛び立とうとする。


傍目に、アーシルでは次は防げないかもしれない。

仮に今回防いで、カオカかケシャーを倒しても次は防げない。


カオカ達はそう思っていた。


「追いついたぁ!」と言って現れたアノーレが、「アーシル!立ちなさい!」と言いながら、「広域治癒魔法!」と唱えると、アーシル達に優しい光が降り注いできて傷を癒していく。


「治る!ありがとうアノーレ!」

「お礼なら神様に言いな!今、私達のために祈りを捧げてくれてるよ!神様からだよ!『勝てるって信じてる!皆!お願い!頑張って!私も祈るね!』だよ!」


「よっしゃあ!勝つぞぉぉっ!」


アノーレの言葉に全員で構えを取った時、眼前でカオカ達は蹲り苦しんでいた。


身体からは「ジュゥゥゥッ」という音と煙。


「あ!アイツら、ザイコンもそうだったけど、治癒魔法が効くんじゃねぇか!?」


アルーナの言葉に、アルティが「それなら!」と言って肉薄して斬りつけると、あれだけ硬い鱗に守られていたカオカの肌に深々と剣が刺さり、赤紫色の鮮血が舞う。



それを見たアルーナが「弱体化するぞ!アノーレ!このまま踏ん張れ!アタシ達は怪我が治る!奴らは動けなくなる!ワンサイドだ!」と言うなり、カオカ達をコレでもかと痛め付けていく。


カオカ達も負けずに必死に反撃に出るが、痛みのために動きに精細さがない。


「人の身なら負けなかったものを」

「半魔半人の身体が悔やまれる」


そんな事を言いながらカオカとケシャーは息絶えていた。

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