第29話 救国の女神は半魔半人部隊と戦闘になる。
メーライト出立の知らせは街にも響く。
皆が花道を作りメーライトを送り出す中、メーライトは老騎士とハサンドムが操る馬車に乗ってアルデバイトを後にした。
ヤヅマーミ砦を離れた所で、メーライトが「騎士様達は近付いたら距離を置いてください」と言うと老騎士とハサンドムは「何を申します!?」、「俺たちが守るって」と言う。
メーライトは首を横に振り、「いえ、私の事はアーセワさんが守ってくれます」と返事をすると、アーセワが「はい。ご安心ください」とメーライトに微笑みかけ、老騎士達には「巻き込まれない距離で、馬車を守っていてください」と言うとアルーナが「相手があのザイコンなら流れ弾と余波で大怪我必至だからな」と続ける。
老騎士たちが何も言えない所でアノーレが「神様、本当にギリギリまで治療していいのかい?」と質問をする。
メーライトが「うん。アルティをお願い」と言うと、傷だらけのアルティに向かってアノーレが、「傷が深いよ。まったく…。何でそこまで、こんなになる前に撤退してきなさいよ」と言いながら治療を再開する。
「アル…は…、メーライトの友達…だもん…。敵はアルが独り占めして…、アーセワのご馳走をメーライトと食べるの…」
なんだかんだ言ってもアルティも使徒で、メーライトを慕っていて、メーライトの為を考えていることがわかり、アルーナたちは安心する。
「ったく、とりあえず聞かせろ。アルティの攻撃は通るんだよな?」
「最初は後一歩って所まで、でも治って鱗の箇所が増えると、硬くなってドンドン歯が立たなくなる」
面倒くさそうに「司書が言ってた奴だな」とアルーナたちが確認し合う。
「何それ…、知ってたの?」
「だから帰ってくればいいんだよ。そうしたら知れてただろ?それにこれからは大変だぞ。神様を王子から守るんだ」
アルティの「何…それ?」に、アーシルが楽しそうに「王子様が、神様にこれからもよろしくねって王様に言わせたんだよー」と言うと、意味を理解したアルティは「無理、チェンジ」と言う。
「この一年、見てきたから能力があるのはわかったけど、あのキラキラ笑顔で、なんでもやれますってオーラはメーライト向きじゃない」
アーセワはアルティの言葉にニコニコ顔でウンウンと頷く。
「メーライトにはこう。薄氷のような儚さを持った美男子がお似合いだよ。窓辺で微笑み合うだけでいいの。狩りはアル達でやって、ご飯とかはアーセワが作って2人は窓辺で微笑んでくれてればいいの」
「それだ!」
「それですわ」
「わかってるじゃないアルティ!」
「それしかないわね」
「おお!見たいよ!」
「決定だね」
メーライトは勝手に盛り上がる使徒達に「えぇ!?アルティ?アルーナさん!?アーセワさん!?皆?」と返すが、皆ニコニコとあーでもないと盛り上がる。
この後はただのかしましい馬車旅になってしまい、老騎士とハサンドムは、「むぅ」、「すげぇ賑やか、王子殿下が聞いたら泣くな」と言っていた。
街を出て2日目、傷が癒えたアルティが「そろそろだよ」と言うと、血の臭いが濃くなってくる。
そこには魔物の死骸が散乱していて、よく見ると首を切り落とされたパレスドラゴンまでいる。
「あのデカブツをヤレるアルティが、ズタボロになる相手か」
「まあ、神様と私たちの繋がりも強くなったしさ」
「ザイコン1人なら休ませずに追い立てるよ」
「袋叩き決定だね」
老騎士は、致し方ないが騎士道精神的によろしくないという顔をしていて、アルーナから「あのなぁ、魔王軍の奴らなんて徒党で襲ってくるだろ?倒しながら絶対いつの日か、逆にボコボコにしてやるって思っていたからな」と言われると、返す言葉もなく、「むぅ…」と唸っていた。
メーライトは、余波が来ないと思われるギリギリの場所にあった高台で、アーセワとアノーレを従えてアルーナ達を見ている。
傷が癒えたアルティも含めて戦闘を行った場所に向かうと、「アイツら!あの鱗のやつ!」とアルティが言う。
「んだアイツ?」
「3人?」
「ザイコンじゃないよ!」
驚くアルーナ達に3人の男達が、「来たな女神の使徒達」、「待っていた」、「我らはザイコン様の忠実な下僕」と言って構えを取る。
「漆黒の使徒、傷が癒えている」
「我らの三位一体攻撃を、耐え凌いだだけでも異常なのに、傷まで治すとは」
「だが、我らを殺しきれなかった事が更なる敗因。お前達の強さに合わせて、この身体はより魔物に近付いた。もう遅れは取らない!」
アルーナはそれを聞きながら、「アルティ、お前サンイチでやったのか」と確認すると、「どれもおんなじに見えて、一つずつ倒せなかったんだよ」と不貞腐れる。
「まあいい!連携するぞ!フォーメーションだ!アナーシャ!ここから先はお前が指示出しだ!アーシル!前でろ!アジマーは細かく動け!フォーメーションだからな!アルティ!要はお前だ!全員と連携しろ!泣き言は聞かねえ!」
アルーナの指示で全員が武器を構えると、「我が名はザイコン様の半魔半人部隊!カオカ!」と言いながら1人目が攻め込んできて、2人目と3人目が「同じく我が名はメーウ!」、「ケシャー!参る!」と後に続いてくる。
「よーし、アルーナだ!かかってきやがれ!」
「私はアナーシャ!射殺してあげるわ!」
「私はアーシルだよ!」
「アジマー様の魔法を喰らいなさい!」
「アーセス!行きます!」
「アルティだよ。この前はよくもやってくれたよね」
アルーナの剣撃は、カオカの防御を超えて切り傷が増えていくが、致命傷には遠く及ばない。
「硬っ!?ザイコンの奴より硬い!?」
「漆黒の使徒の攻撃に耐えた我が身に、通用する道理はない!」
「ちっ!アルティ!回復前に追撃!アナーシャ!間を埋めろ!アジマー!アーセス!残り二体の牽制!アーシル!お前は片っ端から守れ!」
「指示出ししてるじゃない!間は埋める!でも少し変えるわ!」
「鱗のところがこの前より硬い!」
「魔法攻撃ならまだ効くから任せな!ストーンバレット!」
「土よ奴らにまとわりつきなさい!」
「前に出て攻撃も兼ねるよ!」
アルーナの剣撃で斬りつけた部分が治る前に、アルティが斬りつけると深く剣が入り、魔法攻撃も通用する。
アナーシャの矢はダメージが少ないのか、邪魔にならない限りカオカ達は抜こうとしなかった。
そして一番のダメージはアーシルの盾での殴打で、カオカ達はアーシルを警戒していた。
「くっ…、流石は女神の使徒」
「ザイコン様を痛め付けただけの事はある」
「人の範疇では負ける。カオカ、メーウ、私が跳ぶ!」
ケシャーが跳んだタイミングで、アルーナが「ヤベェ!あの攻撃が来る!アナーシャ!アジマー!撃ち落とせ!」と指示を出すが、カオカとメーウがそれを妨害する動きに出た。
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