第93話 まだ見ぬ京都を思いつつ護衛の打ち上げで飲んだくれる
未成年の子が多かったので、マリエンライブの打ち上げは十二時前にお開きとなった。
良い宴会だったねえ。
「ヒデオは帰るの?」
「ちょっと護衛の方の打ち上げを覗いてから帰りますよ」
「明日は朝から狩りに行くからほどほどにねえっ」
「また明日ねっ」
『サザンフルーツ』とチョリさんをタクシーまで見送るのであった。
彼女たちは寮に戻るんだな。
「おお、透明ゴリラ男、上がりかあ、一緒に飲むかあ」
「い、いえ、マイケルさん、恐れ多い」
「へへっ、別にかしこまるなよ、同じDチューバーだろう」
なんだか酔っ払った世界第一位のDチューバーに絡まれた。
というか、日本語上手いな。
マイケルさんは、同僚の重戦士さんと肩を組んで仲間と夜の街に繰り出していった。
マリアさんも一緒だね。
まあ、世界一の配信冒険者パーティだから心配は無いだろう。
『Dリンクス』と『オーバーザレインボー』あと『ラブリーエンゼル』さん、あと先生たちは一丸となって京急の駅の方に歩いて行ったね。
お疲れ様でした。
今頃マリエンの方では大道具の大工さんたちによって片付けが進んでいるんだろうね。
お祭りは色々な人の手によって進行して終わるのだな。
ムラサキさんに聞いた安酒場に向かおうとしたら、ガーガーとローラースケートの音がした。
振り返ると赤坂さんがいて笑顔で手を振っていて、その他に『チャーミーハニー』のみなさんが居た。
「やあやあ、ヒデオさん、行きつけのイタリア料理屋さんがもう締まっていてね、我々も打ち上げに混ざってもいいかな」
「いいですけど、安酒場ですよ、鮫島さん」
「安酒場上等!」
「「「「おーっ」」」」
どうでもいいけど『チャーミーハニー』さんたちはみんな綺麗だけど、体育会系の乗りだよね。
その手の組織から出向してるからかな。
安酒場『魚河岸天国』は銀龍街の真ん中あたりの階段を下りた地下にある。
中に入ると結構盛りあがっているなあ。
「おお、ヒデオきたーっ!!」
「山下さん、『チャーミーハニー』さんもご一緒したいそうですが」
「ああ、これは、現場ではお世話になりました、大歓迎ですよ」
山下さんは名刺をさしだしてぺこぺこ頭を下げた。
鮫島さんもいえいえと言いながら頭を下げた。
というか、座卓三つにリーディングプロモーションの護衛さんが沢山いて、座って飲んでいた。
みんなできあがっているなあ。
「おお、ヒデオ、こっちこいよ」
「ああ、ムラサキさん」
「姉さんはヒデオが好きっすねえ」
「ゴリラ居るからな、ぎゃはは」
いやあ、酔っているなあ。
ミカリさんがポテトサラダとお刺身を取ってくれた。
ありがとうございます。
「ヒデオさん、お疲れさまです。どうでしたホテルの打ち上げは」
「おっとっと、華やかだったねえ、お料理もすごかったよ」
「アイドルたちと護衛は住む世界が違うからねえ」
ビールをグビリと飲む。
うん、美味しいね。
「これもうまいぞ、ヒデオ、くえくえ」
「ありがとうございます」
ムラサキさんが揚げ出し豆腐を入れてくれた。
結構飲んでいるね、顔が赤くてふらふらしてるぞ。
チャーミーさんは後の卓に付いて注文をしているね。
お刺身、からあげ、ポテト、塩辛、たこわさ、ビールにサワー。
やっぱり日本的な宴会は良いなあ。
「ヒデオは朱雀と話し込んでいたが、京都に行くのか?」
後の赤坂さんが聞いてきた。
「なにいっ、いくのかーっ!」
「あはは、移住はしませんよムラサキさん、ゴリラのパワーアップの可能性があるらしいので、ご挨拶に」
「そうか、ゴリラのパワーアップかあ」
「あまり陰陽師を信頼すんな、朱雀は信用できるが、他はわからんぞ」
「ご忠告ありがとうございます、赤坂さん」
それもそうだね。
陰陽師といっても知らない人だしね。
三郎太君が赤坂さんの方に向き直った。
「おねえさんは『チャーミーハニー』の人ですか」
「ああ、ヒデオ番だ」
「「おお」」
三郎太くんとムラサキさんがどよめいた。
「ヒデオさんとかになると番が付くんですねえ」
「タカシやみのりにも付いてるし、『オーバーザレインボー』の東海林にも付いてる、ユニークな
「「おー」」
ムラサキさんが二へ二へ笑いながらバンバン俺の肩を叩いた。
「良かったなあ、ヒデオ、良かったなあ」
「ええ、まあ、そうですね」
赤坂さんは立て膝でビールをずずずと啜ってニヤリと笑った。
「てなわけで、京都には着いてくからよう」
「はい、おねがいします」
赤坂さんがついてきてくれれば割と安心だね。
しかし、京都かあ。
京都への憧れを抱きつつ、荒れた宴会は深夜まで続いた。
(まるで英雄、第一部、見えないゴリラが俺を守る 了)
まるで英雄 ~DダンジョンでピンチのDアイドルを救ってバズッた俺の異能力は二匹の見えないゴリラだ!~ 川獺右端 @kawauso
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