第90話 みんなが帰って来てライブが再開する

 中継映像で『Dリンクス』のみんながヘリに乗り込んだのが映った。

 みんな帰って来るにみたいだな。

 遠くのタンカーからヘリコプターが飛んできて、駐車場あたりに着陸した。

 轟音と風が凄いね。


 しばらくしてタカシくん達が花道を歩いて入って来た。

 ああ、みんな頑張ったね。


「タカシくん~~!! 凄かったよ~~!!」

「みのりんも頑張った! 偉いっ!!」


 みのりんさんが先頭になって、皆に手を振りながら歩いた。

 その後がマリアさん。

 そしてタカシくん、泥舟くん、鏡子さん、チアキちゃん、朱雀さんと続く。


 観客が歓声を上げて、拍手でヒーローを迎え入れた。

 凱旋だね。


「赤ガチャピン!! かっこ良かったぞ~~!!」

「陛下~~!! 今度乗せてください~~!!」

「デートしましょうよ~~!! 陛下~~!!」


 レグルス陛下もいて、またゴツイ赤背広おじさんモードで手を上げての凱旋だね。


 みのりんさんと、マリアさんが走ってステージに上がり、手を上げた。

 観客は大歓声をあげた。

 さらわれる前に歌っていた新曲、『吟遊詩人バードは地の果てまでも旅をする』の前奏が流れ始めた。


「みんなっ! 心配掛けてごめんねっ! でも、タカシ君と『Dリンクス』の仲間、あとレグルス陛下が助けてくれたのっ、悪意のある妨害なんかに私たち『マリア&みのり』は負けませんっ!! では、最後の曲です、『吟遊詩人バードは地の果てまでも旅をする』」


 マリアさんも英語で挨拶をして、新曲が始まった。


 そして、二人は歌い出す。

 マリエンライブのトリを務める曲は、観客の熱狂に迎え入れられ、大盛り上がりであった。


 いやあ、良い曲だなあ。


 みのりんさんと、マリアさんが歌い上げると、会場がシンとなった。

 そして万雷の拍手が二人を讃えた。

 ああ、良い物をこんな近くで見られるなんて。

 護衛をやって良かったなあ。


 汗だくになった二人が舞台袖に戻ってきた。

 ヒカリちゃんがタオルを二人に渡した。


「すごかったよ、みのりちゃんっ!」

「よかったわよ、みのり」

「あ、ありがとう、嬉しいよっ」


 マリアさんも英語で何か礼っぽい事を言った。


 会場の盛り上がりは静まらず、アンコールのコールが鳴り響く。


「みのりん、出れるか?」


 舞台監督さんがみのりんさんに聞いた。


「えっと、その、アンコールって何を歌えば?」


 マリアさんが何やらモニョモニョ英語で行った。


「そうか、『元気の歌』か、たしかに『マリア&みのり』っぽい、良いね。歌える?」

「歌いますっ」


 みのりんさんとマリアさんはアンコールに応え、再びステージに立った。


「みんなー、アンコールありがとうっ、じゃあ、一曲だけ、私たちのテーマソングみたいな『元気の歌』ですっ!!」


 マリアさんも英語でなにやら挨拶をした。

 やっぱグローバルだねえ。


 のりのりで『元気の歌ロングVer』を歌って、マリエンライブは終了した。

 観客がさらなるアンコールを求める拍手がいつまでも続いていた。


「終わったねえ」

「サザンのみんなも、チョリさんも、お疲れ様でした」

「ありがとうヒデオ」

「色々つかんだわ。自分のライブが楽しみね」

「ゴリちゃん達とモグをMVに使おうよ」

「いいわねえ」


 ブザーと共に終了のアナウンスが流れて、祭りが終わった。


「ヒデオは打ち上げに出るの?」

「え、護衛だしね、撤収の警備を手伝うよ」


 ヒカリちゃんが俺の後に回ってベルトを引っ張った。


「一緒に行こうよ行こうよ、『Dリンクス』さんたちと仲良くなろうよ」

「いや、おっちゃんはただの護衛だからさ、打ち上げとかはね、あんま活躍してないし」

「ヒデオはりっちょん捕まえたじゃない」

「ゴリ次郎が捕まえただけだよ、チョリさん」


 アイドルたちと打ち上げに行くよりも、警備班での打ち上げに参加したいね。


「ヒデオさんはマリエンライブの打ち上げに、『サザンフルーツ』とチョリの護衛として参加してくれ」

「「「「やったあっ!!」」」」

「えーーっ」


 山下さんも酷な事を言いますなあ。


「まあ、ヒデオは地味だがスキルが派手だからな、『Dリンクス』と仲良くしてこいよ」

「ええ、ムラサキさんまで」

「護衛部はどっかで朝まで飲んでるから、打ち上げ終わったら来なよ」

「後でお店を教えてくださいね、ミカリさん」

「おうおう」


 しかし、朝まで呑み会かあ、みんな若いね。


「打ち上げにはマイクロバスを出すから、ヒデオさんも一緒に乗って行きなさい」

「わかりましたよ」

「いこいこ、ヒデオ」

「ヒデオさんと一緒にパーティは楽しそうですよ」

「というか、一度支社に行って背広に着替えてこないと」


 そうだね、今はガードマンの制服だから。


 俺達は駐車場からマイクロバスで駅前に戻った。

 アイドルたちはそのまま会場のホテルに、俺は支社で背広に着替えるのだ。


 ううん、やだなあ、バッくれてはいけないかな。

 まあ、いかんよなあ。

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