第89話 でかい魔物ミハエルは懲らしめられた
ミハエルの変化した罪獣は強かった。
だが、『Dリンクス』の総攻撃とレグルス陛下の猛攻に押されていく。
なによりみのりんさんの呪歌【スローバラード】の効果が凄い。
速度が半分になってしまうと、敵の攻撃は避けられないし、敵に攻撃を当てる事ができない。
さすがレア呪歌は凄いなあ。
『
回復の歌は敵も回復してしまうし、攻撃力アップの歌も敵にも効いてしまう。
だから【平衡感覚】を持った鏡子さんに【ぐるぐるの歌】とか打ち消すスキルとセットで運用しなくてはならないから、結構難しいんだよ。
でも、レア呪歌【スローバラード】は相手を指定できるらしい。
さすがはレアだねえ。
『いけない、いけない、あれじゃ破裂しちゃうぞ♡』
中継映像からサッチャンの声が入って、画像が大きく揺れた。
サッチャンは
長銃が光輝き、会場のお客さんが、おおとどよめいた。
『今回は特別に補強してあげる、この銃は、百二十レベルの魔石を発射するようには出来てないのよ♡』
『ありがとう、サッチャン』
「なんだ、何しようってんだ泥舟は?」
「チアキちゃんがでっかいレグルス陛下の魔石を持ってきてた、す、凄い事しそう」
「あの長銃はたしか、魔石を充填して発射できるから……」
泥舟くんはタカシくんが付けたバツ印の傷に目がけて引き金を引いた。
ドカアアアアン!!
もの凄い轟音で泥舟くんが後方に転がった。
魔石弾は竜の形の赤い光になり、ギャオウと吠えながら飛び、怪物ミハエルの胸板を吹き飛ばし、貫通し、船の外壁も吹き飛ばした。
ドドーン!!
うお、生音が遠くから伝わってきたぞ。
遠いタンカーの近くで凄い水柱が上がっていた。
うわ、タンカー、沈まないか?
竜弾に体の半分を吹っ飛ばされたのに、ミハエルは死んでいなかった、それどころか、樹木のような枝を伸ばして欠損した体の部分を補修している。
なんてタフな魔物なんだ。
タカシくんが走った。
ミハエルの巨大な丸めた背中を走って登る。
『【オカン乱入】!』
おお、三回目、今日最後の【オカン乱入】だ。
光の柱から、かーちゃんさんが現れ、タカシ君と一緒に走り出す。
『お、おう、罪獣かいなっ!』
『かーちゃん、背中の出っ張りが急所だ。タイミングを合わせて攻撃だ!』
『わかったで!』
『や ら せ ま せ ん や ら せ ま せ ん っ』
ああ、【スローバラード】が掛かってるから、音声が間延びしているのね。
『いい加減、くたばりやがれっ!』『
満身創痍のレグルス陛下が魔物ミハエルに噛みついて動きを止めた。
『きゃりありああぁるううっ!!』
『『おおきくおおきくするどくつよく~~♪ あなたのちからはこんなものじゃないわ~~♪ がんばれがんばれちからをいれろ~~♪』』
「みのりんの【威力増幅の歌】だー!!」
「これで勝つる!!」
『いっくでー、【
『『暁』、[浄化]で焼き払え!!』
魔物ミハエルの巨体の背中、そのでっぱりが急所みたいだ。
そのコブに、タカシくんと、かーちゃんさんが同時攻撃を加えた。
ドッキャーン!!
轟音と共に光が交差し、背中のコブが吹き飛んだ。
魔物ミハエルはぶるっと震えると、倒木のようにまっすぐ地面に倒れた。
「「「「やったーっ!!」」」」
「スゴイぜ『Dリンクス』!」
「全員揃うと、あいつら滅茶苦茶つええっ!」
ああ、良くやったなあ、あんな大きい化け物に、よく恐れずに立ち向かったね。
タカシくんは凄いなあ。
『Dリンクス』は格好いい。
拍手が誰からともなく打ち鳴らされ、一瞬で会場全体に広がった。
舞台袖の俺達も拍手をしていた。
「すごいね『Dリンクス』!」
「あんな大きな魔物も倒せるんですね」
「あはは、あんた達も深い階層に行けばあれくらいの魔物と戦うわよ」
会場が一体になってどよめいっていた。
なにか凄い物をリアルタイムで見た高揚感が凄いね。
「あれ、タカシ、なにやってんだ?」
「朱雀さんが【
え、なんで魔物ミハエルを蘇生させてんだろうか。
朱雀さんは一回失敗して、二回目に【
魔物ミハエルが息を吹き返した。
タカシくんは何かの呪文を唱えながら光輝く『暁』で巨体を撫でているね。
みるみるうちに巨体が小さくなり、最後には全裸のロシア人男性になった。
「なんだよ、ミハエルなんか生きかえらせなくて良いだろ」
「魔剣と魔盾を手に入れて、奴は死なせておけばよかったのになあ」
「あっ! 違う! ロシアで政変だ!! プーチン大統領が失脚したぞ!! それでか!」
「おお、本当だ、ニュース速報で出てる! 新政権は迷宮を誘致したいって」
ああ、ロシアの明日の為に蘇生させたのか。
いいね、タカシくん。
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