第76話 赤坂さんと別れて街をぶらつく
「そいじゃあたしは仕事に戻るから、またなヒデオ」
「ありがとうございました、赤坂さん」
赤坂さんはローラースケートをガーガー言わせて走り去った。
今は午後一時ぐらい、銀流会通りのマクドナルド前だね。
まだ、呑みに行くには早いなあ。
服でも……、というか、なんか最近『サザンフルーツ』の三人に連れられて服は買ったしなあ。
まあまあ格好いい奴。
あんまり沢山服を買い込んでもしまう場所があまり無いんだよなあ。
《きゅっきゅ》
暇なら遊んでよ、と『モグ』が念話をしてきた。
それもそうだね。
迷宮に行こうか。
とことこ歩いて川崎駅のエスカレーターにのる。
今日も駅前の時計塔下は人がいっぱいだなあ。
待ち合わせのメッカなんだよね。
川崎駅のコンコースを抜けて、大型商業施設に入る。
中央の広場に地獄門はそそりたっているね。
大きいねえ。
「あ、ヒデオだ、ゴリラどこよ」
「ばっか透明ゴリラだぜ、見えないんだよ」
お、こんなおじさんにも声援をくれるなんて、嬉しいなあ。
手とか振っちゃえ。
地獄門の前にはたこ焼きとか綿飴の屋台が出ていてお祭りみたいだね。
地獄門をくぐると外とは温度が一度ぐらい低い。
ちょっとヒンヤリして、独特の硫黄みたいな匂いがするね。
中央階段を下りて地下二階のレストラン街へ、そのまま階段を下りると、広々とした草原の三階だね。
野外みたいだけど、偽野外なんだよね。
迷宮の中なんで、雨は降らないらしい。
「きゅきゅーい」
『モグ』が土の中から現れた。
よーしよしよし、とうちゃんに会えなくて寂しかったかい?
ふよふよとカメラピクシーの無愛想ちゃんも来た。
映画を見た後だと、ちょっと構えてしまうね。
『ヒデオが、またソロだ』
『『モグ』の世話かな』
「みなさん、こんにちは、今日はモグをかまいに来ましたよ」
『さっきローラースケート女とマックでデートしてたな』
「げげ、なぜそれをっ」
赤坂さんとの逢瀬を誰かに見られていたっぽい。
ここはなかなか嫌なインターネッツですね。
『きゅーきゅー』
モグは甘えた声を出して俺の足下にまとわりついた。
「本当に早く外に連れ出せるようになると良いんだけどなあ」
「きゅーきゅー」
モグと遊んでいたら、ドドドドドと高校生ぐらいの女の子が走ってきて、『モグ』に向けて
『げ、『ダーティペア』が来た、『モグ』逃げて~』
「希少種ゲットー!」
「わ、だめだよ」
俺はゴリ次郎を動かして女の子の
「ぎゃ、なんだこれ、斧が動かねえっ」
「姫川~、先行くな~」
「高木~~、おせえっ、今あたしは怪しいオヤジと交戦中だっ。パパ活とかやってそうだ」
「君は失敬だねえ、このモグラは俺がテイムした従魔だから狩っちゃ駄目だよ」
「なにっ!! 魔物を飼い慣らすとかできるのかっ!!」
「というか、こいつ、透明ゴリラのヒデオだ、有名人だぞ姫川」
「なにいっ、このしょぼくれオヤジがかっ!!」
『なんだか変な組み合わせだなあ』
『だれ、この不良共』
『タカシの同級生の不良、チーム名は『ラブリーエンゼル』なんで人呼んで『ダーティペア』だ』
「うっせいぞ、オタクどもっ」
姫川ちゃんは
「おっちゃんのペットだったのか、すまねえすまねえ」
「わりいね、姫川、馬鹿でさあ」
「高木の方が馬鹿だろうっ!!」
「なにおうっ!」
「ああ、喧嘩しちゃだめだよ」
血の気の多い女の子二人はつかみ合いの喧嘩をしそうだったので止めた。
「ヒデオ有名人なのに何してんのさ、狩りは?」
「今日はお休みだよ、『モグ』が遊んでって言ってきたのでかまいにきたんだ」
「へえ、ちょっと見せて」
「おお、なんかラブリーだな、こやつ」
「あまり乱暴にしちゃだめだよ」
『モグ』はなんだか二人組の女の子を怖がっていた。
でも、さすがに女の子なので、目を細めて『モグ』を撫でる手は優しいね。
「そういや、ゴリラも居るんだろ、ゴリラゴリラ」
「いるけど見えないよ」
ゴリ太郎が姫川ちゃんの肩に手を乗せた。
「うおおおおっ!! 本当にみえねえっ!!」
「まじかまじか、おお、フワフワだ」
高木ちゃんがゴリ太郎の腰に手をやった。
『しかし、平日の午後に何してんだ『ダーティペア』は』
「午後の授業だるいからさぼった」
「今日は夕方まで五階狩りだ、おまえら見て視聴料をくれ」
『勉強しろよお』
「いいんだよ、レベルが上がれば勉強しなくても知力が上がって成績が良くなんだからよお」
「そうだそうだ、一攫千金だ」
『新メンバーの二人は?』
「誘ったけど、学校さぼりたくねえだってよ」
「まったく真面目チャンはなあ。あとデブ僧侶は今日も来てねえし」
「今日はあれだ、あっちだ、ヤクザパーティーの狩りだ」
『お、本当だ、今日は越谷パーティーの日か、じゃあな、あんまりヒデオに迷惑かけんなよ』
「わ、接続切んなよっ!」
「くそうくそう、接続料をくれよう」
なんだか騒々しい子たちだね。
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