まるで英雄 ～DダンジョンでピンチのDアイドルを救ってバズッた俺の異能力は二匹の見えないゴリラだ！～

第69話 お昼を食べてから、捕り物

　お昼休みなので、また食肉流通センターの食堂へお邪魔する。

　倉庫労働者さんたちの食堂なので、アイドルと護衛が入ると偉く目立つね。

　ミカリさんとか、三郎太くんとかが外側に陣取って、アイドルの方へ一般の人が来ないように制限してるね。

　自然に厳つい雰囲気をだしておくと、現場のおっちゃんたちはわきまえて近寄って来ないんだよね。

　ただ、若い兄ちゃんは無謀にもこっちに来ようとして、止められたりしてるね。

　俺も外側で警備に入るかな。

「ああ、ヒデオは舐められるから駄目だ、サザンと一緒に飯を食べろ」

「そうですか、ムラサキさん」

「適材適所だよ、ゴツかったり、酷い傷があったりでハッタリが聞くメンバーがやる事だ、お前は見るからに人がよさそうだからな、無駄なトラブルが起きる」

「ああ、そうだな」

　山下さんにも言われてしまった。

　やっぱり体を鍛えてマッチョにしないとだめかねえ。

　俺がカツカレーをおばちゃんから貰ってテーブルに付くとヒカリちゃんがニマニマしていた。

「本当はヒデオがここに居ると、あのオヤジはなんでって、思われるんだけどね」

「ああ、それもそうだね、あっち行くよ」

「行かなくていいよ、ヒデオ。ヒカリちゃんもからかわないの」

　チョリさんがヒカリちゃんをたしなめてくれた。

「ヒデオは見た目と中身が全然違うからねえ。ほら、ここに座って」

　ヒカリちゃんが椅子を引いてくれたので、ありがたく座る。

　対面がミキちゃんとヤヤちゃんだね。

「あ、本当にお肉美味しいわね」

「でしょー、穴場よね」

「お弁当もやってるみたいだから、当日の仕出しもしてくれないかしらね」

「あとで頼んでみますよ」

　山下さんが請け負ってくれた。

　ここの食堂のお弁当ならば期待ができるね。

　ああ、カツカレーが美味しい。

　お肉が良い豚を使って、カリッと揚げていて、カレーも甘辛いし、良いね。

「昨日は三つ星レストラン、今日は食肉センター食堂、ヒデオの食事は乱高下するね」

「どっちも美味しいからね、良い悪いは無いんだよ」

「B級グルメでも美味しい物あるしね、ヒデオに賛成だわ」

　チョリさんも、アイドルなのに、わりと庶民的ね。

　うん、俺は昨日の三つ星レストランよりも、街の食堂のカレーが好きだな。

　気楽で良いよ。

　今日は背広じゃ無くてリーディングプロモーションさんが用意してくれた、ガードマンの制服だね。

　制服も窮屈だけど、凄い背広よりは良いね。

　ちなみに背広の方は支社で脱いで適当にバックに入れたら

ムラサキさんに怒られて、丁寧に仕舞われて、ロッカーの中だよ。

　プライベートではあまり使わないから、ここが良いかもね。

「スタッフの制服が妙に似合いますね、ヒデオさん」

「え、そうかい」

「そうそう、なんか居るなあって感じのスタッフになるよね」

「うんうん、ヒデオさんとウリ二つのスタッフさん、五人ぐらい知ってますよ」

「ザ・日本のおじさんだからねえ、ヒデオは」

　わりと制服姿が好評……、なのかな？

　お昼を食べおわったので、波打ち際まで歩いて来て木陰で食休みだ。

「マリエン、舐めてたけど、意外に良い所ね」

「不便だけど、海が近くて良い感じよね。マリエンにサメの剥製もあるし」

「本当？」

「何か、ホオジロザメの死骸が打ち上げられていたから、剥製にしたんだって、でっかいよ」

「わ、後で見に行こう」

　俺もサメ見たいな。

　休憩をしてから、ライブ会場に戻る。

　だんだん細部も綺麗になってきて、凄く良くなってきたね。

「ヒデオ、カメラ小僧が入り込んだ！」

　ムラサキさんが警告を発した。

　おお、小柄な若者が一眼レフを持って椅子の上を飛び跳ねていた。

「ちっ、『盗賊（シーフ）』だな、すばしこい！」

　俺は辺りを見回した。

　肝心な時に『チャーミーハニー』さんが居ないな。

「おとなしくしろっ！　小僧」

「ちくしょうっ！！　みのりんはいねえのかっ！！　サザンなんかいらねえっ！　チョリはもっといらねえっ！！」

「にゃろうっ！」

「ぶっころす！」

　チョリさんの目が据わった。

「私の弓矢がなーい」

「迷宮の外で流血沙汰は駄目よ、ヒカリ」

　ヒカリちゃんをヤヤちゃんが止めた。

「『おねがいおねがい、おねがいよ～～♪　わたしの願いを叶えてよ～～♪』立ち止まってよ～～♪」

「え、あ、うん」

　上手い！

　チョリさんが呪歌で『盗賊（シーフ）』の動きを止めた。

「行け、ゴリ太郎、ゴリ次郎！」

　止まった『盗賊（シーフ）』さんを太郎と次郎がなんなく取り押さえた。

「うわ、なんだ、何も無いのに,毛むくじゃらがっ！！　ヒデオの透明ゴリラだな！！」

「よく知ってるね、さあ、一緒に事務所に行こうね」

「放せー、放せー、俺はみのりんの写真を撮って情弱どもに高値で売る仕事があるんだっ！！」

「そんな権利は無いから」

　俺はゴリラたちに命じて、『盗賊（シーフ）』くんを事務所に運んだ。

　事務所前で、『チャーミーハニー』の石橋さんが頭をかきながらやってきた。

「遅れました」

「何してたんですか」

「近所にロシア人が出たので追いかけてまして」

「捕まえたんですか、ロシア人」

「にがしました、てへぺろ」

　わりと『チャーミーハニー』さんて、あてにならないか？