第54話 朝からリーディングプロモーションに顔を出す

 パストロミルミルキリンコシンシン。

 パストロミルミルキリンコシンシン。


 謎というか、需要が無さそうな目覚まし音で目を覚ました。

 未だにどこを押せば呼び出し音や目覚まし音を変えられるか、さっぱりわからないので、毎朝謎の音でDスマホに起こされ手目覚めは最悪であるな。


 ふうと、息を吐くと、ゴリラたちものっそり起きてくる。

 奴らは別に寝る必要は無さそうなんだけど、俺が寝てる間は横になってじっとしているな。

 おはようおはよう。


『ウホウホ』

『ウホウホ』


 冷蔵庫から昨日の帰りに買った菓子パンと牛乳を出して朝食とする。

 もぐもぐ。

 さて、今日は予定が無いな。

 『サザンフルーツ』もライブに向けてレッスンだし。

 ケインさんとか、ユカリさんとかが希望するなら狩りに行ってもいいけど、できればまとまった方が良いよね。


 とりあえずリーディングプロモーション支社に出社して、用事が無ければ、街をぶらぶらするかな。

 マリエンライブは週末なので、しばらく暇になりそうだね。


 ゴリラを連れてアパートを後にする。

 お金はあるのだから、もっと良い所に引っ越せよとムラサキさんに言われるが、まあ、引っ越しが面倒くさいんだよね。


 国道を渡り、川崎駅前地区に入り込む。 

 路地を繋いで、市役所裏のリーディングプロモーションが入っているビルにいく。

 エレベーターで登って、チンとなって下りるとリーディングプロモーションの支社だ。

 今日も朝から人が右往左往してるね。


 アイドル溜まりに行くと、カスミちゃんとユカリちゃんがいた。


「ヒデオ、おはよー、『モグ』ちゃん見せて~~」

「私も私もっ」

「カスミちゃんもかい?」

「アイドルにああいう可愛いマスコットは付きものなのよ。迷宮産って事で話題性もあるわっ」

「もっともっと、沢山、『モグ』軍団を作ってMVの後ろで踊らせましょうよっ」

「それ、良いアイデアねっ!」

「今日は、ケインさんが剣の修行だから、その時にでも一緒に迷宮行きますか」

「「いくいく~~!!」」


 二人とも喰い気味に来たな。

 というか、カスミちゃんと一緒の迷宮は初めてだな。


「カスミちゃんは『吟遊詩人バード』?」

「そうそう、ただ、『吟遊詩人バード』が一気に増えちゃって、逆に編成ではねられちゃうのよ」


 ああ、確かに『吟遊詩人バード』ばっかりで迷宮で狩りする訳にはいかないしね。

 パーティーを組む関係もあるのか。


 チョリさんみたいな売れっ子ならば、楽隊パーティーと、狩りパーティを持って、『吟遊詩人バード』でブイブイ言わせられるんだろうけど、あまり偉く無い『吟遊詩人バード』さんの場合は面子に困るのか。


「まあ、そろそろ、パーティー揃えてくれるみたいだけどね」

「私が『魔術師ウイザード』として参加しますよ」

「きゃあっ、ユカリちゃん愛してる~~!」


 何だったら前衛はゴリラが努めても良いんだけど、山下さんの編成次第だね。

 あまり勝手に空約束を出してはいけないだろう。


「じゃあ、ケインさんが来たら予定を聞いて、迷宮行くようなら一緒に行きましょう」

「そうね、生『モグ』くん、楽しみっ」

「なんだか、『モグ』くんの切り抜き動画出ていて、凄い人気ですよ」


 な、なにい、いつの間にそんな事が。

 Dチューバーファンの気持ちはいまいち解らないなあ。


 階段を下りてジムの方に顔を出してみる。

 ミカリさんしか居ないな。


「山下さんもムラサキさんもいませんね」

「ああ、チョリさんの『ハニービー』で狩りに行ったよ」

『チョリさんもライブなのに」

「『サザンフルーツ』は初の大きいハコだからね、チョリさんは慣れてるしさ、狩り動画も入れておかないとさ」

「それもそうですね」

「『Dリンクス』のみのりんも、レッスンは一日置きで、後は狩りしてるよ」


 ああ、わりとそんな感じなのか。

 『サザンフルーツ』の三人が気合い入ってるだけなのね。

 ちょっと安心したね。

 初の大型ライブだからか。

 気持ちは解るな、がんばってね、ヒカリちゃん、ミキちゃん、ヤヤちゃん。


 ミカリさんと喋っていたらケインさんが降りて来て俺の方にきた。


「ヒデオ、新しい従魔捕まえたんだって、今日、俺は剣の稽古だから護衛について、ついでに見せてくれよ」

「良いですよ、カスミちゃんとユカリちゃんが一緒に見たがっているけど、良いですか」

「ああ、まあ、かまわないさ」

「ミカリさんは?」

「午後からは『デモンズハビット』のプロモーションで護衛入りだよ」

「おお、プロモーションの護衛ですか」

「まあ、十二階ぐらいだけどな」

「『ハビット』君達がんばっているね」

「誰ですか?」

「うちの男性ビジュアルバンドユニットだよ」


 そう言ってミカリさんがジムに張られたポスターを指さした。

 おお、顔にいろいろ塗りたくった人達だなあ。


「ヒデオも、もっと芸能に興味をもちたまえよ」

「すいません、ケインさん」

 

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