第49話 護衛さんたちと川崎マリエンに行く

 朝、またミキちゃんに変な呼び出し音でモーニングコールをして貰いリーディングプロモーションの支社に出社した。


「よおヒデオ、『モグ』見せろよお」

「はっ、ムラサキさん、何故それを」

「あんた、動画がランキング三位に入ってたよ『ヒデオ、初テイム成功』だってさ」

「ぎゃーー」


 何と言うこと、なぜこんなおじさんの面白くも無い行動の動画をみんな見ているのだ?

 俺にはプライバシーという物は無くなったのか。


「ヒデオ、注目されてんだよ」

「本人が一番解って無いよね」


 ミカリさんもそんな事を言った。

 またまたあ、俺はおじさんだよ、一生のうちに注目なんかされたことの無い男だよ。

 あり得ないと思うね。

 うん。


「という事で今度『モグ』見せて」

「良いですよ」

「テイマーになってないのにテイムできるもんなんだね」

「なんか出来たんですよ、ミカリさん」


 チャムスくんと三郎太くんがやってきて、山下さんが降りて来て、メンバーが揃ったようだ。


「よおし、揃っているな、それではバスにのってマリエンへ行って警備計画の打ち合わせをするよ」

「「「「はいっ」」」」


 芸能事務所の護衛の人達って体育会系なので返事がカッチリしてるね。

 気が引き締まる感じだよね。


 みんなでバスにのって川崎マリエンを目指す。

 マリエンは高速道路に囲まれた埋め立て地みたいな、そんな所だね。

 公園があって、海釣りが出来る場所もある。

 時々焼肉フェスティバルとかある場所なんだよ。


 バスは普通の混み方だけど、透明のゴリラが二頭いるから、そこにはお客さんが入れなくて申し訳無いね。

 なんでか知らないけど、ゴリラの近くには人は立たないんだよね、無意識で気が付いて居るのかもしれない。


 ムラサキさんが席の横に立っているゴリ二郎の腰をポンポンと叩いた。


「これは二郎?」

「二郎ですね」


 ミカリさんが、前にいるゴリ太郎のお尻を触った。


「こっちが太郎かな」

「そうですよ」


 太郎はウホっという顔をするんじゃありません。


「見えないのは面白いなあ」

「おもしろいよね、ゴリちゃん達」

「あはは、喜んでますよ」


 ゴリラ達は俺にしか見えなかったから、最近護衛の人とか、ユカリちゃんとかに認識されたので喜んでいるね。

 やっぱり誰かに知ってもらうのは嬉しいらしい。


 川崎マリエンに着いた。

 日本食肉流通センターという美味しそうな名前のバス停だった。

 

 歩いてライブ会場である、東扇島中央公園まで行く。


「アクセスはバスだけですかね」

「そうだね、スタッフ用に駐車場はあるが、一般客の車は駐める場所が無いから」


 そうかー、車で来られると困るもんね。

 三郎太くんは良い質問をするね。


「リーディングプロモーションだけでの警備ですか?」

「いや、マリア・カマチョさんの事務所からも警備部隊が来るよ、あと、ロシア人のテロがあるかもしれないので、日本政府の機関から警備がくる、あ、あそこにいるね」


 東扇島中央公園の駐車場に怪しい女の子の一団がいた。


「配信冒険者……、『チャーミーハニー』か」


 そういう名前のパーティなのかあ。

 なんだか、黒魔導師みたいな子とか、すごいラフな格好の子とか、いろいろといるね。


「どうもー、『チャーミーハニー』の鮫島でーす。リーディングプロモーションの護衛の方たちですねー」


 黒魔導師っぽいフードの小さい女の子が敬礼をして挨拶をしてきた。

 山下さんが挨拶を返していた。


「あ、あやしいなあ、本当に日本政府関係の人かな」

「自衛隊とか、公安警察とかから若い子だけを出向させて作った部隊らしいよ」

「あからさまに怪しいね、特にフードの子」

「なんだか、ドラゴンが出た時に巻き込まれて顔中火傷とからしいよ」


 わあ、レグルス陛下も罪作りなんだなあ。


 鮫島さんと山下さんが並んで、警備計画の打ち合わせを始めた。

 下っ端の俺達はやる事が無いなあ。

 とりあえず、ここで、ライブをやって、それの警備をするわけか。


「イベント警備の方はやったことありますか、ミカリさん」

「何回かあるよ、教えてあげるよヒデオ」

「透明ゴリラは隠し球だからな、とりあえず重要な所に太郎と二郎を配置しねえとな」


 目のくりくりした子がこちらを振り返った。


「うわさのヒデオさんだ、今も透明ゴリラはいるの?」

「いますよ、ええと」

「あ、潜入捜査とかやってる石橋です、よろしくお願いします」


 石橋さんはぴしりと敬礼した。

 潜入捜査とかするんだ。


「ええと、ここここ、ここに二郎いるな」


 ムラサキさんが二郎の腰をぽんぽん叩いた。


「お、おおおおっ、ほんとうだ、見えないのにいるーっ!! よろしくね二郎さんっ」

『ウホウホ』


 まあ、返事しても石橋さんにゴリラたちの声は聞こえないんだけどね。


「見えないゴリラって便利そうですね、『チャーミーハニー』の鏑木です」


 おお、糸目で美人で強そうな人が挨拶してきたね。


「チャーミーさんは一般警備はしないのでしょう?」

「ええ、そうですね、基本的にテロ対策を担当しますので、一般警備はリーディングプロモーションさんと、マリア・カマチョさんの事務所にお任せする感じになります。あと、我々だけではなく、神奈川県警も協力しますよ」

「おお、凄いですね」

「世界の歌姫と、新進気鋭の配信冒険者パーティ『Dリンクス』の『吟遊詩人バード』のミノリンさんのライブですからね、日本政府も本腰を入れて警護します」


 わあ、やっぱり凄い『吟遊詩人バード』さんなんだなあ、ミノリンさん。


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