第50話 マリエンをぶらぶら歩いて観察する
マリア・カマチョさんの所属会社から、ごっつい外人さんが現れて一行に加わった。
基本的な警備計画はカマチョさんの所属会社が作り、リーディングプロモーションと日本政府が意見を入れて完成させる感じだね。
今はまだのどかな公園で、親子づれなどが歩いていて牧歌的なんだけど、ライブの日には色々と変わるらしい。
観客席、ステージ、バックヤード、設計図を示しながら計画を皆で共有していくね。
とりあえず、公園全体を柵で囲い、お客さんの導線を一つにするらしい。
なかなか考えられているね。
しかし、のどかな公園だね。
海も近く、良い風が吹いてくる。
ビーチバレーを楽しむ人達、BBQのサイトで肉を焼く親子づれ、みんな思い思いに休日を楽しんでいるようだ。
「俺は何をすれば良いのかなあ」
「ヒデオはゴリちゃん達を使って、ステージ上の警備だろうね」
「そうだな、見えないゴリラが居るのは大きい」
「ミカリさんとムラサキさんは周辺警備ですか?」
「私は周辺警備だね、ムラサキは?」
「私はお客の流れを見る感じかな。ただの客だったら良いけど、テロリストも入ってる可能性が高いし」
ああ、そうなんだよね、お客さんにテロリストが紛れ込んでいる可能性があるんだな。
リーディングプロモーションの護衛さんたちは、施設の周辺に立って監視する警備員、人の流れを見ながら異変を察知する監視員、あとステージ上での事件に対処する俺と透明ゴリラという感じか。
ステージ裏にには何人か腕っ節の強い護衛、三郎太くんとかが入るっぽいね。
とりあえず、俺にはイベント警備の経験が無いから、計画は山下さんとかに任せておけば良いか。
うーん、『モグ』が居れば、人知れず土中から監視できるのだが、まだ迷宮の外に出せないしな。
そうか、トリとか猫とか小型の魔物をテイムすれば、自然に監視とかできるのか。
『
アメリカさんの興行主はこの手のライブになれてるらしくて自信を持って話を進めているね。
ステージ上の設備とか、音響装置は我々じゃなくてまた別のスタッフが入るらしい。
警備関係の俺達は、外側の設営と、観客の導線、そしてイレギュラーが起こった時の対処のようだね。
「大きいイベントって大変なんですなあ」
「まあ、そうね、というか、今回のライブは小さい方よ」
「ロックフェスとか、大がかりで警備とかしたくないよねえ」
「今回は首都圏だし、諜報機関とか、サイボーグアイドルとかの襲撃が予想されているから、フェスよりは難しいんだけどね」
「サイボーグアイドルって、何?」
ミカリさんと、ムラサキさんが黙って俺の顔を見た。
「「りっちょん」」
「誰?」
「あー、何もしらないのかーっ!」
「情報に疎すぎるよ、ヒデオさんっ」
「すいません」
チャムスさんがタブレットを操ってりっちょんの動画を見せてくれた。
なんだ、この子、片手が機械でレーザー砲で魔物を倒して居るぞ!
「ミノタウロスにやられて片手と片目を失って、ロシアの技術でサイボーグ化したって」
「そうなんですかー」
すごいアイドルがいるなあ!
「で、この人来そうなんですか?」
「『Dリンクス』のタカシくんと確執があるし、みのりんを憎んでいるみたいだしね」
「先に捕まえておけば良いんじゃないんですか?」
「最近は居ないのよ、ロシアの諜報組織と一緒に動いてるっぽいよ」
『チャーミーハニー』の鮫島さんが話を聞きつけたのか寄ってきた。
「そうそう、りっちょんはやっかいだよね、見つけたら捕まえてね」
というか、本当に昔のテレビゲームの黒魔導師そっくりな格好だよなあ、鮫島さん。
あやしさ満点だ。
「見えないゴリラは隠し球に良いからね、がんばってね、ヒデオさん」
「はあ、がんばりますけど」
レーザー砲って、透明ゴリラを貫通してこっちに当たりそうだよなあ。
「鮫島さんって『
「ちがうよー、私は『
「遠く無いですか?」
マリエンタワーの展望室は結構遠い上に高い位置だから、弓だと大変そうだ。
「ああ、リーダーは【必中】持ちだから、あそこから狙えるんだよ」
石橋さんが教えてくれた。
レアスキル持ちの『
「私はあそこから全体を見て警備するから、ヒデオさんは透明ゴリラでステージを警備してくださいね」
「わ、わかりました、がんばりますよ」
俺が頭を下げると、満足したような感じで鮫島さんはマリア・カマチョさんの所属事務所の護衛さんの方へ行った。
「なんだね、日本政府に透明ゴリラの事が知られてしまったね」
「きっと、今後、国賓の警備とか色々頼まれるぜ」
「え、そうなるかなあ、やだなあ」
「うそうそ、無いって」
「無いですよ」
『チャーミーハニー』の鏑木さんが笑って否定してくれた。
ちょっとほっとした。
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