第44話 目を覚まして出社して指示を聞く
ビンバッチョロピピロン!!
ビンバッチョロピピロン!!
今日もまた、ムカつく呼び出し音でミキちゃんからのモーニングコールだ。
『おはようございます、ヒデオさん』
「おはよう、いつもありがとうね」
『それは言わない約束ですよ』
昭和のドラマみたいなやりとりをして切った切った。
やあ、今日も良い天気だね。
昨日買っておいた菓子パンと缶紅茶で朝ご飯とした。
うまいうまい。
ゴリラ達と一緒にアパートを出た。
路地を伝って国道を渡り川崎の繁華街に入る。
市役所の裏のリーディングプロモーションの支社が入っているビルに入る。
エレベーターに乗ると、不自然なゴリラスペースが出来るので申し訳無いね。
支社のある階で下りて、事務所のドアを開ける。
「お、来たね、ヒデオさん」
山下さんがパソコンの前で手を上げた。
「今日は施設警備の仕事を教えてください」
「マリエンライブの警備に入ってくれるんだね、助かるよ。ムラサキさん、ミカリさん、チャムス君も入るよ」
「そうですか、それは心強いです」
知っている護衛さんも入るのは良いね。
助かるな。
山下さんはマリエンの地図を出して来た。
「まだ、計画は完全に決まっては無いんだけど、だいたいの流れは決まってきたよ。『サザンフルーツ』は最初の前座だ、『チョリズ』が二番手、そして、トリに『マリア&ミノリ』が登場してライブはクライマックスになる」
「なるほど」
施設警備の仕事は初めてなので、いまいち実感が湧かないが、とりあえず、やってみようか。
「透明のゴリラ二頭は警備のアドバンテージが高いからね、がんばって」
「わかりました」
山下さんに警備計画を教えてもらった。
お客さんの導線とか、入場出場の流れとか、考えておかないといけないのか。
とりあえず、リーディングプロモーションの警備と、警察の警備とかも関係するようだ。
「警察の警備も入るんですね」
「そうそう、『Dリンクス』は日本の誇りだから、政府機関も動いているようだよ」
「『Dリンクス』? あ、みのりさんがそうでしたね」
「そうそう、彼女は配信冒険者系の『
やっぱり配信冒険者パーティでも名前をあげると政府と関係ができるのか、すごい事だねえ。
「あ、ヒデオ、来てるね~」
「あら、みんな」
『サザンフルーツ』のみんなが、支社にやってきた。
「警備の情報を聞いているのね」
「そうだよ、『サザン』のみんなは?」
「私らはレッスンだよー」
「午後までですよ」
「晩ご飯をご一緒しませんか?」
「いやあ……」
今日は一人で飲む日だからね。
「もう、付き合い悪いわねえっ」
「ごめんね、ヒカリちゃん」
「ヒデオさんにも生活があるんだから、無理言わないのよ、ヒカリ」
「でも~」
ヒカリちゃんは口を尖らせた。
「ライブの時は、俺とゴリラ達がみんなを守るから」
「うん、ゴリちゃん達が来てくれると安心ね」
ヤヤちゃんがにっこり笑ってそう言った。
『サザンフルーツ』の子たちは歌の先生と一緒に近所のスタジオに出かけていった。
「明日、マリエンの現場にみんなで行くから、ヒデオさんも来てくれ」
「解りました」
明日は現場に行って視察か。
今日の所の申し送りは終わりのようだね。
「それでは失礼します」
「うむ、じゃあ、明日ね」
山下さんに別れをつげて、アイドル溜まりを覗いて見た。
カスミさんが居るぐらいで、ケインさんもユカリちゃんもいないね。
「なによ、ヒデオさん、今日非番なの?」
「まあ、今日はあんまり用はなさそう」
「そうなんだ、晩ご飯一緒に行かない?」
「いや、今日は一人で飲む日だから」
「なーによ、アイドルが晩ご飯誘っているのに、ほんと無欲な感じよね、ヒデオ」
「あはは、ごめんね」
アイドル溜まりに仕事は無さそうね。
階段を下りて、護衛のジムを覗いて見た。
ミカリさんがバーベルをわっせわっせと持ち上げているな。
パワフルだなあ。
ムラサキさんは居ないが、三郎太くんは居るな。
「あ、ヒデオさん、ちわっす」
なんだかにこやかに頭を下げて、三郎太くんが挨拶してきたぞ。
「ヒデオは非番なんだろ、鍛えないの?」
「そうだなあ」
そこらへんにあった、バーベルを持ち上げてみようとした。
ぎぎぎぎっ。
ぐぎっ!
「ぐわああ」
「うわ、軽いバーベルも持てないの?」
「ぐきって言った、ぐきって」
「ちょっとは鍛えなよお」
ミカリさんが笑ってそう言った。
うむむ、あまり重い物は持たないからなあ。
冷凍倉庫の仕事の時も、あまり重い物はゴリラたちにこっそり手伝ってもらってたからなあ。
迷宮を歩き回るぐらいはできるけど、たしかに少しは体を鍛えないといけないな。
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