第42話 十六階でお弁当を食べて帰還を始める

 オークさん達が粒子に変わって消えて行く。

 魔石とドロップ品が落ちてきた。


 お、ネームドの『片牙』さんが持っていた丸盾が落ちてきた。

 地面に落ちて、クワンクワンと音を立てて回った。


「おお!」

『おお!! 『片牙の盾』だ、ネームドレア装備だ、【盾術】と【重量軽減】が付いているぞ』


 レア装備品なのかあ。

 金箱から出るだけじゃ無いんだね。


「丸盾かあ、ヒデオ使うか?」


 ムラサキさんが言うので、丸盾を持ってみた。

 うーん、あまりピンと来ないなあ。


 『サザンフルーツ』の子達とユカリちゃんは後衛だから盾はいらないし、ケインさんは両手剣だから盾は持てないな。


「私が貰っていいか? ずいぶん良い盾なんだが」

「構いませんけど」


 『盗賊シーフ』さんもあまり盾は持たないというか、バックラーってお鍋の蓋みたいな小さい盾だよね。


「盾に【盾術】スキルが付いてるから便利なんだよ」


 そう言うとムラサキさんは丸盾に隠れるようにして短剣を振った。

 おお、なかなか良い感じだね。


「私たちは問題ないわ」

「私も、売るより使った方が良いよね」

「そうそう」

「僕も構わないよ、ドロップ品は使ってなんぼだしね」


 みんなもムラサキさんが丸盾を取る事に賛成のようだ。

 俺も、特に問題は無い。


「こういう時、狩りの分け前はどうなりますか?」

「一階の買い取りカウンターの価格をチームの儲けから払う感じだな。とりあえず、会社に報告書入れれば良い」

「なるほど」


 レア物とか、良いドロップ品が出た時の処理も決まりがあるみたいだね。

 会社からの狩り報酬とかで相殺する感じだね。


「チームで良い物出ると、いろいろと大変なんだよね、ケインさんのレア剣は会社持ち?」

「会社からの貸し出しの形を取っているよ。レア物の剣だと、億ぐらいするからね、自分の資産にすると税金とか、色々とね」


 配信冒険者と言っても色々と世知辛いんだね。


 十五階から十六階へと下りた。


「そろそろ正午だな、弁当を使ってから引き返すか」

「そうですね」


 階段を下りて安全地帯で大休止だ。

 俺はリュックからみんなのお弁当を出して配った。

 今日は、お茶を入れる装備は無いので、ペットボトルのお茶であるね。


 安全地帯にはおトイレも新設されていて、意外に居心地が良い。

 手近な岩の上に座って、お弁当を広げた。


 ムラサキさんが荷物の中から大きめのランタンを出して、なんかプッシュプッシュと空気を入れて灯を付けた。

 おお、思ったより光量があるね。


「わあ、明るい」

「飯食う時ぐらいはな、ヘッドライトじゃあ、雰囲気出ないしよ」


 大きいランタンかあ、良いねえ。

 電気式じゃなくて、油式らしい。


「ホワイトガソリンだよ、明るいべ」

「良いですねえ」


 これは買いに行かねばならならないね。

 お茶セットとかも。


 ランタンのお陰で、良い雰囲気でお弁当を食べれた。

 やっぱりシウマイ弁当は美味しいね。


「あー、美味しかった」

「ロケ弁よりシウマイ弁当の方が好きだな」

「私も~~」


 みんなからお弁当の殻を貰ってリュックにしまった。


「昼までに十六階まで下りてこれたって事は、二十階まで下りて、フロアボスにも挑戦できるな」

「あと、二三回習熟してから挑戦しましょう」

「そうだな、あまり急いでも仕方が無い、じっくりやっていこう」

「ああ、そうだな」

「ゴリちゃんがいれば安心だから、こっちの慣れの方が重要よね」

「ヒデオとゴリちゃんたちと、ムラサキさんがいれば安心できるね」


『アイドル狩りだけど、良い感じよな』

『ヒデオが居なかったら不安だけど、ゴリラが居ると安心だよな』

『リーディングプロモーションの護衛は結構質が高いんだけど、なんだかヒデオの安心感は異常だよな』


 やっぱり、ゴリラ達が安心の決め手っぽいね。

 迷宮向きのゴリラ達であったのか。


「さて、切り返して昇ろう、十階からポータルでロビーにもどんぞ」

「行きましょう」


 みんなは立ち上がった。

 お昼をしっかり休んだので、元気ハツラツだね。


 雑談をしながら、階を上がって行く。

 やっぱり一度二度通った場所は通過が早い感じがするね。

 敵の強さや、戦い方も解っているから気が楽だね。


 『サザンフルーツ』の子達や、ユカリちゃん、ケインさんも、やっぱり戦った相手だと、落ち着いて戦えるようだ。

 戦闘も慣れなんだよね。

 ゴリラ達も最後にちょっと手を添えるぐらいの助力で動いている。


 下から上に昇って行くと敵がだんだんと弱くなるので楽だね。

 みんなも連動して敵を処理していく。

 うんうん、なかなかチームワークが上がってきた感じ。

 良い事だね。

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