第39話 アイドル狩りの朝

 今日はアイドルさんたちと迷宮で狩りなので、早朝からリーディングプロモーションの川崎支社に来ている。

 今日もミキちゃんに変な呼び出し音でモーニングサービスしてもらったけどね。

 どうにかして、あの着信音は変えなくてはならないなあ。

 どうやればいいのだろうか。

 最近のスマホとか、タブレットには紙のマニュアルが付いてないんだよねえ。

 わかりにくすぎる。


 リーディングプロモーションのアイドル待合室に行くと、『サザンフルーツ』とユカリちゃんはいたけど、ケインさんが居なかった。

 ムラサキさんは来ているね。


「今日はよろしくおねがいしますね、ムラサキさん」

「ゴリラ達が一緒なら何でもないさ、今日もがんばろうぜ」

「そうですね」


 というか、ゴリラ達や、ムラサキさんは頑張るけど、アイドルたちも頑張って迷宮慣れしないとね。


「いやあ、おはよう、遅れてごめんね」


 ケインさんが15分遅れてでやってきた。


「ケインさん、遅い~~」

「ごめんごめん、ヒカリちゃん」

「じゃ、行きましょうか」


 皆で歩いて駅前の商業施設の広場まで歩く。

 市役所裏あたりからだと、バスを使うほどじゃあ無いんだけど、微妙に遠いね。

 陸橋を渡って西口の商業施設に入る。


 途中に、崎陽軒のスタンドがあったので立ち寄る。


「みんなの分も買うけど、特別なお弁当が欲しい人は?」

「僕は特製弁当だね」

「私は横浜チャーハンにしようかな」

「私はシウマイ弁当で」

「私も私も、シウマイ弁当おいしいよね」


 みんなの分のお弁当も買って、俺のリュックに入れた。


「ヒデオさん、ゴリちゃんたちにリュック持たせたら?」

「いやあ、隠密性が無くなっちゃうから、もったいないぜ」


 ヤヤちゃんの意見に、ムラサキさんから突っ込みが入った。


「リュック持たせれば、結構荷物運びに便利になるけどねえ」


 悩ましい所なんだよね。

 サブバックを買って、荷物が増えたら、ゴリラたちに持って貰うのでも良いかもなあ。


「収納袋が欲しいわね」

「あー、あれ良いよねえ、手ぶら冒険がすごく良い」

「なに、収納袋って?」

「一見ウエストポーチなんだけど、中が亜空間になっていて、四畳半ぐらいの荷物が入る鞄よ」

「それは凄い、金箱から出るの?」

「銀箱から出るらしい」


 それは夢が広がるなあ。

 収納袋かあ、欲しいなあ。


 冒険の自由度とは、荷物の量にも寄るので、四畳半ぐらいの収納力があれば、何日も迷宮に籠もっていられそうだ。

 テントとか寝袋とかもってきたら迷宮でも快適だろうしね。


「きゃー、『サザン』に勇者ケインだわっ!」

「朝から狩りなのね、素敵」

「ヒデオと一緒か、いいなあ」


 迷宮入り待ちの配信冒険者ファンから声援が飛んだ。

 でも、なんだかユカリちゃんだけ騒がれて無いね。

 知名度が低いのかな。


「こ、今度、神曲だすから、それからよっ」

「そうだね、がんばって、ユカリちゃん」

「うんっ!」


 俺達は地獄門をくぐり迷宮の中に入った。

 今日からはポータルを使って十階まで飛んで、そこから潜っていけるのだ。


 ケインさんから十階ポータル石碑にタッチして転移していく。


「ユカリちゃんも狼男さん倒し済ですか」

「うん、私は三十階のお墓階あたりに行く用事が多かったからね、一応ポータル権は取ってあるんだよー」


 ユカリちゃんは霊感アイドルとして、納涼心霊番組に良く出てたらしいね。


 ゴリラたちもポータル石碑にタッチさせて転移させて、俺も転移する。

 ブワンと視界が揺れると十階のフロアボスの部屋の向こうだね。


 ふよふよとカメラピクシーさんたちが現れた。


「レイド設定するよ、集まれ~」


 ムラサキさんの号令でカメラピクシーに触ってレイド設定をした。


 護衛とアイドルで組分けして、二チームレイドだね。

 基本的にレイド設定はカメラピクシーさん単位でやるので、彼女達が現れないと出来ないのよね。


『お、ヒデオ達は今日は狩りか』

「おはようございます」

『目的はなんだろ、二十階突破?』

「いえ、迷宮慣れの為に今日は習熟狩りですよ」

『習熟か、まあ、ヒデオの透明ゴリラは面白いから見るかな』

「ありがとうございます」


 まあ、嘘でも嬉しいね。


『ヒデオが居れば、十階台は楽勝だよね』

『ムラサキさんもいるしな。ミキちゃんの『さちここばやし』はみられるかな』


 そうか、ミキちゃんはレアスキルを得たから、それの習熟とか、運用とか考え無いといけないね。


「ケインさんもがんばりましょう」

「うん、やっと剣の振り方を覚えたからね、復習の感じでやってみるよ」

『お、ケインのくせに真面目だなあ、頑張れ頑張れ』

「あ、ありがとう、がんばるよ」


 ケインさんははにかんでリスナーのコメントに返事をしていた。

 さて、がんばって狩りをしましょうか。


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