第29話 魔物狩りをしながら潜って行く
隊列を作り迷宮を歩くのはなかなか不思議な体験だと思うね。
時々魔物が出て来て我々を驚かせて、そして倒されていく。
魔物を倒すと魔力霧になって我々の胸にすいこまれていく。
これがレベルアップの正体らしい。
だんだんと迷宮に順応していき、魔物の一種になっていくような感じもする。
LEDライトに照らされた通路を歩く。
迷路の地図の方はDスマホのアプリに入っていて、これを見れば、罠の種類とか、出てくる敵の種類とか、いろいろ書いてある。
前人未踏の階で無い限りはフロアマップはあるんだよね。
いろいろと便利である。
ムラサキさんは背中を丸めて俺達の前をスタスタと歩く。
なんだか迷宮のプロって感じで凄く良いね。
「ジャイアントバット三」
前方からバタバタと音を立てて大蝙蝠が飛んできた。
ヒカリちゃんが弓を打ち、ユカリちゃんがファイヤーボールの魔法を打ち込んだ。
ちなみに迷宮は暗いのでファイヤーボールの魔法が発動すると凄く光って綺麗だ。
ゴリ次郎がパンチを打って大蝙蝠を一匹倒した。
ヒカリちゃんの弓とユカリちゃんのファイヤーボールで落とされた大蝙蝠は山下さんとケインさんが倒した。
そんなに強い敵ではないね。
ジャイアントバットは粒子になって消えて行き、魔石がコンコンと床に落ち音をたてた。
何も無かったように隊列は進む。
するすると十二階への階段に着いて、我々は下りていく。
やっぱり暗い迷宮を歩くのはうっとうしい感じがするね。
超大きいナメクジが出てきて前を塞いだ。
でっかいなあ。
「気持ち悪い~~」
「ナメクジ~~」
ゴリ次郎が前に出て、三匹の大ナメクジを粉砕した。
「うわ、ゴリちゃん強い」
「ありがとう、ゴリ次郎さん」
『ウホウホ』
ゴリ次郎がポーズを取って喜びを表現しているね。
まあ、俺とユカリちゃん以外見えないだろうけどね。
とりあえず、十階台の魔物はゴリラ達には勝てないようだ。
『やっぱ、ヒデオの見えないゴリラはいいな』
『安定感があるよなあ』
ゴリ達が褒められるとなんだか嬉しいね。
「コボルト四」
ムラサキさんの声と共に、前方にオレンジ色のランタンの光が見えた。
近づいてくると犬の頭をした小さな人間みたいな魔物がいた。
コボルトというらしい。
四匹のコボルトはワッとした勢いでこちらに接近してくる。
山下さんが一匹のコボルトを両断、ケインさんが両手剣で殴って電撃で痺れさせた。
ゴリ次郎が両手に一匹ずつコボルトを掴み上げ、壁に叩きつけた。
「これは楽だなあ」
「ヒデオさんが居ないと狩りが出来なくなりそうだよ」
「そんなそんな山下さん」
コボルトは魔力霧に変わり、魔石とドロップ品が落ちた。
ドロップ品は銀塊で一階で高く売れるらしい。
しばらく歩くと下行きの階段があった。
階段を降りると安全地帯になっていて、ベンチなどがあり、水も出ていた。
「小休止をします」
みなバラバラになって、岩の上に座ってお菓子とかを食べているね。
「ヒデオ、クッキー食べてクッキー」
「あ、ヒカリちゃんありがとう」
「私のも上げるよ」
「私も私もっ」
ヒカリちゃん、ミキちゃん、ヤヤちゃんにクッキーとかマドレーヌとかを貰った。
リュックから水筒を出して麦茶を飲みながら頂く。
ああ、美味しいクッキーだね、高級品っぽい。
「ヒデオー、今度護衛連中で深い所に潜るんだけど、来てくんないか」
「護衛たちだけでプライベートで潜るんですか、ムラサキさん」
「おうよ、あたいらは配信冒険者だからなあ」
そうか、個人的に潜るってのもあるんだね。
リーディングプロモーションの護衛の人達も配信冒険者でもあるから、迷宮探検するんだよなあ。
これはついて行くべきか、行かないべきか、迷うね。
「ちょっと考えますね」
「ああ、是非参加してくれよ、楽しいぜ」
ムラサキさん達と一緒に迷宮に行くと色々と教わって勉強になりそうだな。
さて、小休止を終えて、先に進む。
道は入り組んでいるけど、マップがあるので楽に進めるね。
大きな蜘蛛とか、でかい犬とか、いろいろな魔物がでるなあ。
ゴリ次郎が無双して半分ぐらいは瞬殺しちゃいますが。
魔力霧を吸ってレベルアップして膨らむ感じを楽しんでみたり、床に落ちた魔石を拾ったりしていた。
そして十四階。
わりと歩く距離が多いね。
あと二階でムカデ部屋のある階だね。
がんばろう。
ケインさんの両肩が下がっていた。
ちょっとバテたかな。
「荷物をもちますか、ケインさん」
「い、いや、だ、大丈夫だ、これくらい」
「無理しちゃだめですよ、ゴリ太郎」
『ウホウホ』
ゴリ太郎がケインさんのリュックを取って持ち上げた。
「ただでさえ両手剣で重いのだから、気にせず、ゴリラ達を頼ってくださいな」
「す、すまないな」
ケインさんも、両手剣だけなら運べるだろう。
「ゴリちゃんがリュック持つと、ふわふわ浮いて変な感じね」
「霊現象と間違えられてそうだなあ」
まあ、間違えられても、どうという事はないけどね。
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