第30話 ムカデ部屋の前で
暗い迷宮の中を歩き回り階を降りていく。
なんだか陰気で鬱々としてきちゃうね。
ムラサキさんが魔物を見つけ、警報を出し、前衛で迎撃、が続く。
ゴリ次郎が手早く始末してくれるので後衛の魔法とか、弓とか、呪歌とかは用が無いのだな。
「歩いているだけで楽だわ」
「ヒデオさんのゴリラさん達が有能ですね」
「ありがとう、ゴリ太郎さん」
ユカリちゃんが笑顔でお尻を叩くと、ゴリ太郎はうほうほと照れた。
「見えるユカリちゃんがうらやましいわね」
「幽霊見える能力なんで嫌だったんだけど、ゴリラさんたちも見えるからそこはお得ね」
「幽霊見えるのかあ」
それは怖いね。
「迷宮はよく人が死ぬから霊も沢山いるよ。なんかオバケ階に誘導されて再利用される感じだけど、通路にもたまにいるよ」
そ、それは怖いな。
おじさん怪談とか苦手なんだよ。
コワイコワイ。
「ヒデオが怖がっているっ」
「透明ゴリラを使役できるのに、オバケ苦手なの?」
「苦手だねえ」
「どんまいどんまい」
ヒカリちゃんが笑って俺の背中をパンパンと叩いてくれた。
君は明るくて良い子だね。
十五階の階段を下りて十六階である。
階下の安全地帯で小休止をする。
また『サザンフルーツ』の三人にお菓子を貰った。
嬉しいね。
おじさんからもブラックサンダーをお返しだ。
値段が十分の一以下な感じだけど、まあ良いんだ、美味しいし。
岩の上に座って麦茶を飲みながらお菓子を食べる。
「チャムス君は大学生?」
「いえ、去年卒業しましたよ、今はプロの配信冒険者ですね」
おお、格好いい。
「チャムス師匠はレア
ユカリちゃんが振り返って聞いた。
同じ
「いやあ、レア
「そうなんですかー」
「その代わり、細かい呪文は沢山覚えてるから色々と便利だよ」
「コモン
「そうそう、ようは使いようだね。まあレア
やっぱり迷宮はお宝のスキル、
運が無くてなかなかレア物が当たらない人は活躍もわりと地味になる感じかな。
生まれつきゴリラ達を持ってる俺は幸運なのかもしれないね。
「まあ、あれだね、こういうのも悪くはないね」
「そうですかケインさん」
「うん、気の合う仲間と冒険している気になるからね」
ケインさんはタンブラーに入れたホットコーヒーをゴクリとのんで笑った。
きっと彼のダンジョンアタックは、きっとずっと、仕事でしか無かったんだろうね。
俺との交流でなにか新しい迷宮感を得てくれたら、それは良い事だと思うな。
小休止が終わり、ムラサキさんの先導で歩き出す。
ハイオークやアタックドックが来るが、戦力は揃っているから、わりと余裕で排除できるね。
「さすが人数が多いから順調ね」
「基本のパーティは六人ですか、少ないですね」
「だから、ヒデオさんのゴリラさんたちが役に立つんですよ、余分に二人分増えますから」
「ゴリちゃん達無敵だから、二人どころじゃないわよね」
「なんだか凄く安心」
アイドルさんたちにもゴリラ達が好評で嬉しいね。
角を曲がった所に引き戸の入り口がある部屋があった。
ここがムカデ部屋らしい。
「ヒデオ、こっち来て見ろよ」
ムラサキさんが呼ぶので行ってみるとドアの上の方が格子になっていて中が見えた。
ムカデムカデムカデムカデ。
ムカデの大群が整然と並んで行進していた。
うはー、この中に入るの?
十二畳ほどの部屋の反対側のの壁に青い球体があって、光っていた。
あそこにタッチすれば通行権が手に入るらしい。
「これはー」
「
そうか、格子越しに魔法をバンバン打ち込めば楽に経験値が得られるのか。
でも魔法使いだけだね。
「うわあ、こんな所に入るのかい?」
「そうですよ、ケインさん」
「どうやって?」
「火炎系の魔法でムカデたちを焼いて数を減らした隙に走ります」
「……」
「……、え? だけ?」
「だけですよ」
これは、どれくらい減らしたら行けるんだろうか。
幸い天井は高いからゴリラ達は入れそうだけど。
「試しにゴリラ達を入れてみますか?」
「そうだね」
「え、ゴリちゃんたち、噛まれない? 可哀想じゃない?」
あまり虫に噛まれているのを見た事が無いが、噛まれるのかなあ。
「試してみますよ」
『サザンフルーツ』とチョリさんが廊下の端で座り込んでいた。
「何してるんですか?」
「ムカデとか無理だから~~」
「気持ち悪い~~」
「怖い~~~」
「あんな中入れない~~」
やれやれだなあ。
「ユカリちゃんは」
「まあ、噛まれなければ平気ですよ、田舎の子だったので」
「ゴリラ達を入れて、足を登ってくるか、だね」
「登ってこなければ、ゴリちゃん達に運んで貰うという手がありますね」
「他のパーティはどうやっているんだろう」
「火炎弾で減らして飛びこんで走りますね。二三カ所噛まれるそうです」
「痛そうですね」
「ムヒEXを持って来てますよ」
おお、害虫用の高いムヒだ。
さて、では実験してみましょうかね。
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